裁判官に対する科学・医学教育の必要性
−最高裁判所の不作為
について−

ついてないなあと思いました。原発訴訟を担当して喜ぶ裁判官はいないと思います。

これは,名古屋高裁金沢支部裁判長として,2003年1月,もんじゅ裁判で国側敗訴判決を言い渡した川崎和夫氏が,同支部への異動発令直後に『もんじゅ訴訟担当』と知らされた時の率直な気持ちを吐露した言葉である.(裁判官が科学技術をめぐる訴訟を判断するには) このように,「裁判官は弁解(弁明)せず」という慣行を破ってまで科学教育の欠如を訴える声が上がっても,そして「科学的証拠とこれを用いた裁判の在り方」が出版されて6年が過ぎても,裁判官に対する科学教育が始まったとは寡聞にして知らない.まして況んや医学に於いてをや.
21世紀の法曹には、経済学や理数系、医学系など他の分野を学んだ者を幅広く受け入れていくことが必要である。
2001年6月12日に公開された司法制度改革審議会意見書がこう提言してから,今日(2019年7月27日)で18年経っても,裁判官に対する科学教育が始まったとは寡聞にして知らない.まして況んや医学に於いてをや.

最高裁判所司法研修所が,「科学的証拠とこれを用いた裁判の在り方」を提言し研究を開始したのが,2010年だった.それから9年以上経っても,裁判官に対する科学教育が始まったとは寡聞にして知らない.まして況んや医学に於いてをや. 最高裁判所はオーストラリアに格好のon the job trainingモデルがあると知っているにもかかわらずである.
オーストラリアでは,法廷で原告・被告それぞれの医学専門家同士が意見を交換する,通称”hot tub“と呼ばれる専門家証言の仕組みが(司法の窓 2015;80:24)法曹三者に対する医学教育システムとして機能しており,米国でもこれを採用する動きがある.
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オーストラリアには,専門家証拠(expert evidence)の領域に興味深い制度があります。概要は次の通りです。 まず,専門的知見を要する争点について,各当事者によって選任された専門家が,証人尋問期日に先立つジョイントカンファレンス(joint conference)という協議の場において,それぞれの意見書の内容について議論し,ジョイントレポート(joint report)という共同名義の報告書を作成します。このジョイントレポートには,専門家らが合意に達した部分と不合意の部分を記載するとともに,不合意の部分について各専門家がその理由を記載します。これにより,合意部分の証人尋問を省くことができ,時間とコストを削減することが可能となり,また,不合意の内容を事前に理解することで,証人尋問において何を明らかにすべきかが明確になるのです。

 次に,証人尋問期日では,各専門家証人を同時に証言台に並べ,同時並行的に証人尋問を行います。これはコンカレント証人尋問(concurrent evidence)と呼ばれています。専門家証人たちが皆で証言台に並んでいる姿から,「ホット・タブ」(浴槽)という俗称で呼ばれており,裁判官たちは好んでこの俗称を使っています。通常の証人尋問では弁護士や裁判官からのみ質問がなされますが,この「ホット・タブ」では,一方の証人から他方の証人に対しても質問がなされることに最大の特徴があり,弁護士や裁判官からの質問にある専門家証人が答えた後,それに対して意見のある別の専門家証人が自発的に発言をし,専門家証人同士が質疑応答し合うといったことが行われます。これにより専門家の意見の対立がより鮮明となり,効率的な審理を行うことができるのです。冒頭で述べた法廷の様子は,実はこのコンカレント証人尋問の様子でした。裁判の時間やコストを縮小するとともに,裁判所が専門的知見を的確に入手する方途として,このような制度が導入されたのです。
櫻慎平 海外司法スケッチ : オーストラリアにおける専門家証拠制度司法事情 司法の窓 2015;80:24-25 より抜粋)

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実際にオーストラリアでやっているんだから,日本で,できないわけがない.日本ではできない理由を見つけようとするような真似は木っ端役人がやることだ.だから,裁判官に対する科学・医学教育が日本でできない理由を探し続けてきた最高裁判所の連中は,みんな木っ端役人だというのだよ.司法制度改革審議会意見書が今世紀初頭に出てから20年が経とうというのに,その間,最高裁判所は平然と不作為を続けてきた.私は公僕の一人として,最高裁判所の真似をして不作為を続けるつもりはこれっぽっちもない.そこで早速検察官・裁判官の医学教育を始めた.

参考
検察官・裁判官に対する医学教育の実際
仙台高裁決定に見る裁判所の驕りと科学軽視―平気で嘘をつく裁判官に対する科学教育の必要性
Concurrent Expert Evidence: Hot Tubbing in America? Experts Jump In. The National Law Review (August 31, 2016)
“The conclave (hot tub) procedure has been required by [Australian] judges as a means of saving time and costs,” Australian Senior Counsel Ross McKeand says from his office in New South Wales, outside of Sydney. “Experience shows that experts who are opposed in their views may, surprisingly, agree under pressure when they (two or more) are giving evidence together in court and the judge is questioning them directly.”

Butt AE. Concurrent Expert Evidence in the United States – Is There a Role for Hot Tubbing?(2017年12月に出た本)
オーストラリアだけでなく、米国でも導入されつつあり、これからも普及していくであろうことがわかる→上記の本を紹介した記事(こちらは気軽に読める)

2019/4/30

法的リテラシー