彼岸の友

内科専門医の仲間が亡くなりました.肺癌でした.42歳でした.彼がどんなに素晴らしい医者だったかは,肺癌医師のホームページをご覧いただければすぐにわかります.

淀川長治はいつどこで自分が死ぬかもしれないからと,常に上着のポケットに葬式代の足しにと10万円を入れていたそうです.彼は黒澤 明への弔辞の中で,自分ももうすぐそっちへ行くからと述べて,間もなく約束を果たしました.友達甲斐であります.

大学の同級生がやはり42歳で去年彼岸に行きました.食道癌でした.外科で,自分でどんどん食道癌を切っていた男でした.我々は卒後ほぼ20年たちました.あと20年のうちには,同級生の中でもぼちぼち彼岸の仲間入りするから,それまでちょっと待っていてくれと,同級生のメーリングリストに弔辞を書き込みました.”いずれ”が,”もうすぐ”にいつ変更になるやもしれません.

悪貨は良貨を駆逐すると申します.謙虚で優秀な人から向こう岸に行ってしまうようです.図々しいのがたまたま残ったというだけであります.

郷土の英雄上杉謙信の享年は48歳,ひどく図々しかったはずの織田信長でも49歳.それほど図々しくないつもりの私は45ですからそろそろです.遅くとも48までには今考えている仕事をまとめなくてはなりません.そのためには一日一日を大切にしなくてはなりません.

一方で,命長ければ辱(ハヂ)多し。長くとも、四十(ヨソヂ) に足らぬほどにて死なんこそ、めやすかるべけれ,と申します.ですから,今日死ねば,恥晒しがより少なくて済むわけです.彼岸の友に早く再会できる利点もありますから,まんざらでもありません.諸橋芳夫さんなんかに呼び出しを喰らうのは御免被りたいのですが.

ともあれ,今日この日,あるいはあすかあさってか,生死どっちに転んでもいいようにと,リスクマネジメント部会長を仰せつかっている身としては,そんな実務的なことばかり考えてしまいます.

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