癌遺伝子パネルを巡る混乱

全く新しい検査だったら,その新しさに対応する体制が必要だと思って準備を整えるわけだが,癌遺伝子パネル検査の場合には,却って今までもCDxでも部分的にやっていたことなので,その応用をすればいいわけで,大げさに騒ぐ必要はない,関係者一同そう思っていたのだろう.そこへ,既存の体制のつぎはぎで整合性の取れないところが,実際にやってみて初めてぼろぼろ出てきたので,慌てたというのが正直なところなのだろう.まあ,医療現場以外でもよくあることだ.犯人捜しは時間の無駄になるだけという共通認識の下に関係者が協力して取り組めば,ほどなく落ち着くことだろう.
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癌遺伝子パネル検査、多くの機関で混乱、臨床検査振興協議会が訴え 化学工業日報 2019年8月23日
臨床検査振興協議会(東京都千代田区)は、6月に運用が始まったがん遺伝子パネル検査の保険適用に関して、提言や疑義を厚生労働省や内閣官房に提出した。協議会は、パネル検査の保険適用の決定プロセスは総論的な議論のみで進み、各論の具体策が検討されていないことから、実臨床と乖離した運用上問題の多い制度となったと指摘。「多くの機関で混乱が生じている」と訴えている。
がん遺伝子パネル検査の保険適用はシスメックスのNCCオンコパネルと中外製薬のファウンデーションワンについて、パネル検査実施料8000点(1点は10円)、パネル検査判断・説明料4万8000点と決まった。また、ファウンデーションワンはコンパニオン診断としても承認されており、その場合はコンパニオン検査の点数を算定することとした。
パネル検査の流れを大きく分けると、検体採取・核酸抽出の「分析前プロセス」、遺伝子解析の「分析プロセス」、解析した遺伝子に意味づけをする「分析後プロセス」、遺伝子解析結果を基に医師が治療方針を議論する「エキスパートパネル」の4段階を経る。
協議会は、検査にかかわる機関や部署が複数にまたがるため、各工程の作業量や費用を考慮した点数に配分し、工程ごとに保険算定可能にすべきと提言。工程ごとの算定を導入しなければ、がんゲノム医療中核拠点病院や連携病院などの医療機関、衛生検査所などパネル実施機関は実運用できなくなると指摘した。
パネル検査判断・説明料にはエキスパートパネルの費用が含まれており、その費用が明示されていないことから「現場は混乱を来す」と疑義を示した。検査技術料の8000点がパネル代として衛生検査所の、判断・説明料4万8000点が医療機関の取り分として解釈されてしまう可能性があり、「8000点では赤字となり、現実、パネル検査はできない」と問題を提起した。
また、分析プロセスで検査を中止せざるを得ない場合、「患者も含めて誰がどれだけの金額を支払うのか極めて不透明」とも指摘した。
臨床検査振興協議会は日本臨床検査医学会や日本臨床検査薬協会などが所属する団体。
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