嘘をつかなくても人は騙せる

ただし、1.嘘をつく方の頭の中身と、2.嘘の内容と、3.騙そうとする相手の頭の中身の3つの変数に依存する。下記の事例で言えば、

1.市場調査会社と称するところの「総合企画センター大阪」自身が、「総MR数は前年度より1.3%減少した一方で、総売上高が2.5%増となった」事実によって、「MR生産性」という概念自体が崩壊することに気づいているかどうか。気づいていなければそれでよし、気づいていれば、相手を騙すという意志を持てるかどうか。
2.「MR生産性」という無意味な概念を相手に受け入れさせる意義を見いだせるかどうか
3.騙そうとする相手が、電卓を使って加減乗除の計算ができるかどうか。

ちなみに下記の記事から以下の事実が直ちに判明する。それもこれも、この記事には何一つ嘘が書いてないおかげである。

2015年度の製薬企業25社の総売上高 6兆3688億8000万円(前年度より2.5%増加)
2014年度の製薬企業25社の総売上高 6兆2115億200万円
2015年度の製薬企業25社の総MR数 37910人(前年度より1.3%減少)
2014年度の製薬企業25社の総MR数 38390人 

MRの人数が減ったからMR生産性とやらが3.7%も上昇したのだから、MRの人数をもっと減らせば、MR生産性とやらも、もっと向上することになる。人件費を削減すれば生産性が向上する。経営者にとってはこれはまたとないエビデンスである。かくして製薬企業からはMRが姿を消すことになる。
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MR1人当たり売上高、1億6800万円  総合企画センター大阪  前年度比620万円増(日刊薬業 2016年8月19日 )

 市場調査会社の総合企画センター大阪は18日、国内製薬企業の営業体制に関する調査結果を発表した。2015年度のMR生産性(MR1人当たりの年間国内医療用医薬品売上高)は、前年度より620万円増加し1億6800万円となった。

 製薬企業25社を調べたところ、15年度の1社当たりMR数は平均1516.4人で、前年度より19.2人減少した。MRを増員したのは8社で、9社が横ばい。残りの8社は減員を行っており、特に外資系企業でのMR減が目立ったという。16年度見込みは16人少ない1500.4人で、調査結果では12年度の1567.2人から一貫して減少傾向にあると指摘した。

 また、総MR数は前年度より1.3%減少した一方で、総売上高が2.5%増となったことから、15年度のMR生産性は1億6800万円に伸びた。16年度については、薬価改定の影響を新製品群や主力品の伸長が相殺し、240万円増の1億7040万円に上昇すると見通した。

 調査は国内企業15社、外資系企業10社を対象に、16年4月から7月にかけて実施した。
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