刑事告発が救った命

STAP細胞問題では、刑事告発は行われなかった。検察官の代わりにマスメディアが論文の著者達をつるし上げ、笹井芳樹氏の命を奪った。STAP細胞同様に論文データねつ造が問題となったディオバン「事件」では、刑事告発を受けた東京地検の検察官が逮捕、起訴したのは、論文の著者ではなかった。何千万もの奨学寄附金をせしめたうえに、ノバルティス持ちでファーストクラスに乗り欧州心臓病学会に大名旅行までした先生は、マスメディアから攻撃されるどころか、検察側の証人となって、極悪人白橋伸雄を断罪する正義の味方を演じる栄誉を授かった。刑事告発のおかげである。

ディオバン「事件」ではSTAP細胞問題同様に報道の暴力が大々的に展開されたにもかかわらず、自殺者は出なかった。これも刑事告発のおかげである。官邸政治家をそそのかして厚労省に刑事告発させた新聞記者、受理されなかったものの刑事告発の先鞭をつけた薬害オンブズパーソン「真相究明のために刑事事件になるように働きかけたのは良かった」とのたもうた臨床試験業界のご意見番のおかげである。イカサマ論文の著者の先生方は、これら刑事告発を推進した人々にお歳暮を贈るのをゆめゆめお忘れにならぬよう。

臨床試験の責任者は、医者である。だからこそ、検察官が誇大広告と断ずる論文の表紙に並んでいる著者は、みんなお医者様なのだ。それが誰も「責任追及」されないどころか、「私たちは白橋伸雄に脅かされて(いったいどうやって?)論文をでっち上げただけの、哀れな被害者です。どうか検察官様、あの極悪人を刑務所送りにしてください」って?吉本顔負けじゃねえか、馬鹿馬鹿しい。

この裁判で検察官は何もしていない。被告人に対して、「どうだ、参ったか」とばかりに、動かぬ証拠をつきつける。それが検察官の役割ではなかったのか?それがディオバン事件の裁判では、検察側の証人となったお医者様達の話だけに注目が集まった。白橋氏が、いつ、どこで、どうやって論文をでっち上げたのか。それを示す証拠をでっち上げすらできなかったのだ。

「ずさんな試験の責任は研究者らが負うべき」 弁護人の言うことは至極まともである。それに対して、挙句、ちゃっかり検察側の証人になって、「あいつが犯人だ」なんていけしゃあしゃあと元社員だけにイカサマ試験の責任をなすりつけるって、東京都民を含む国民の皆様はもちろんのこと、前東京都知事だって、「おれは辞任に追い込まれたのに、なんであいつがお白州で正義の味方気取りかよ!」って、きっと怒ってるぜ。

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「ずさんな試験の責任は研究者らが負うべき」、白橋被告側弁護士 検察側、懲役2年6月、罰金400万円を求刑 M3.com レポート 2016年11月28日 (月)配信高橋直純、軸丸靖子(m3.com編集部)

 ノバルティスファーマ社の降圧剤を巡る京都府立医科大学での医師主導臨床試験の論文データ改ざん事件で、薬事法(現医薬品医療機器法)違反(虚偽広告)に問われた元社員とノバ社に対する第37回公判が、11月25日に東京地裁(辻川靖夫裁判長)で開かれ、検察側は白橋伸雄被告に懲役2年6月、同社に罰金400万円をそれぞれ求刑した。白橋被告弁護人、ノバ社弁護人はともに無罪を主張した。白橋被告の弁護人は「ずさんな試験の責任は研究者らが負うべき」と訴えた。
2015年12月16日の初公判から、ほぼ1年となる次回12月15日に結審する見通し。判決は2017年3月16日の予定。

検察側「厳重処罰が必要」
 検察側は論告で、今回の事件を「『降圧を超えた効果』があるというプロモーションを行うため、試験データを自社に有利に改ざんして、虚偽の図表等を研究者らに提供して虚偽の論文を作成させ、投稿・掲載させたという前代未聞の悪質事案である」と指摘。本件は薬事行政への信頼、日本の臨床研究の国際的信頼を失墜させたとし、「一般予防の見地から厳重処罰が必要である」とした。
 白橋被告個人については、社内での評価や地位を得るために研究者らを利用して論文を作成させたとし、「犯行動機は極めて自己中心的で、その経緯にも酌量の余地はない」と指弾。
さらに、論文に疑義が呈された後は、口裏合わせなどの隠ぺい工作を行い、現在でも事実を全面的に否認し、「反省の情が全く見られず、厳しい非難に値する」と述べた。
 ノバ社には、「本件は被告人が統計解析を一人で担当したことが原因で発生したと認められるところ、そのような状況を作り出したのは被告会社であった。適切な管理・監督を行わず放置していたもので、その責任は大きいと言わざるを得ない」と指摘した。
 さらに検察は、個別の争点について、これまでの議論を基に、(1)白橋被告がKyoto Heart
Study(KHS)で、非ARB群のイベントを水増ししたか、(2)それは意図的か、(3)意図的な改ざんの場合、本件公訴事実の対象となるCCB論文、CAD論文においてどのように影響するかを認識していたか、(4)CCB論文において、恣意的な群分けをしながら、論文記載の「12カ月以上使用している」という基準として図表やデータを研究者に提供したか、(5)CCB論文において意図的な改ざんを加えたデータを提供したか、(6)研究者らが作成した記事(論文)の記述につき、被告人が記述したと言えるか、(7)論文が薬事法66条1項の「記事」の「記述」に当たるか、(8)論文を作成、投稿、掲載する行為が薬事法66条1項の「記事」の「記述」に当たるか、(9)被告の改善行為が、ノバ社の業務に関連するか――に整理。いずれも立証されていると主張した。

「立証がなされたとは到底言えない」白橋被告弁護人
 検察の論告に対し、白橋被告の弁護人は、直接証拠は存在せず、全ての状況を通じて、状況証拠による立証活動しかなされておらず、「合理的な疑いを差し挟む余地のない程度の立証がなされたとは到底言うことはできない」として無罪を主張した。個別の争点についても「イベント数の水増しをした事実はない。仮に水増しされていたとしても第三者による行為である」、CCB論文の群分けについては「恣意的ではなく、一定の基準に基づいている。一定の基準と『12カ月以上』という論文の定義は、一致していないとは言えない。仮に一致していないと評価されるとしても、研究者らは、被告が行った群分けの実際の基準を認識していた」などと訴えた。
 検察側の立証に対しては、「個々の証拠力の低さを物量でカバーしようとするもので、質より量を重視したものと断じざるを得ない。証明力の低い証拠をどれだけ多数積み上げようとも、有罪にすることはできない」と問題視した。
 KHSについては「極めてずさんな臨床試験で、それに加担した自身の社会的責任を否定するものではない」としつつ、「ずさんな試験の責任は研究者らが負うべきものであって、補助したにすぎない被告人一人にその責めを負わせるべきではない」と主張した。

「業務に関したものではない」ノバ社側
 ノバ社側の弁護人は「KHSに不正があり、本件論文の記述に虚偽があるとすれば、さまざまな不正が不可分一体化した結果に他ならない」と主張している。特に白橋被告が研究者らを利用したとする「間接正犯」という検察側の論理構成について、「事務局医師らが、被告の道具として利用され、支配されていたとは到底言えない」と訴えた。
 また、仮に白橋被告によるイベントの水増しなどが存在したとしても、「被告人個人の判断に基づく個人的な行為であって、被告会社の業務の一環ではなく、被告会社の『業務に関した』ものではない」と強調した。
 最後にノバ社主任弁護人は 「本件は被告人の改ざんの有無が問題になっているが、研究不正が刑事罰に問われる問題かということもまた問われている。KHSが不適正な試験であったことは事実であり、ノバ社の問題意識が希薄であったことも反省すべきである。しかし、拡大解釈による訴追は学術研究の自由を妨げるものとなる」と述べた。
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