一億総始皇帝化への対処

日本人全員が不老不死を求める一億総始皇帝化現象の責任は,医者と国民の皆様の両方にある.

医者の方は,常に最新医学と称して,脳ドックやら,PET癌検診やら,メタボリック症候群検診やらで,不老不死妄想を炊きつけるばかりでは飽き足らず,アルツハイマー病ワクチン開発の大博打にありったけの金を注ぎ込む.それに加えて,サプリメントやら,特定保健食品という名の国家公認みのもんた捏造商品が,尻馬に乗って騒ぎまくる.一方,国民の皆様は,箸にも棒にもかからない貧しい内容のテレビ番組やら新聞・雑誌記事を鵜呑みにして,ありとあらゆるダイエット,呆け予防,癌予防を試し,副作用の無い夢の抗がん剤を追い求める.

現在,日本に蔓延している不老不死妄想は,このような,”売り言葉に買い言葉”の応酬の結果である.その結果が医療崩壊であり,医療紛争の増加であり,小児科コンビニ受診であり,ドクハラであり,患者暴力である.じゃあ,どうすればいいかって?簡単だ.止めればいい.売り言葉に買い言葉を止めればいい.それができないから困っているんじゃないかって?そうだろうか?そんなことはない.

他人はいざ知らず,あなた自身はどうなのだろうか?
○脳ドックで呆け予防とは言っていないだろうか?
○PETで癌を早期発見とは言っていないだろうか?
○ARBよりもACE阻害薬を処方するように心掛けているだろうか?
○自分の専門領域の患者が来たら,この病気は得意だから,任せておけと思ってしまわないだろうか?

上記は医師のパターナリズムのほんの一部の例である.職業人であるからには,自分の判断に自信を持っている.それは結構な話だか,その自信の裏づけはどこにあるだろうか?根拠があやふやな自信まで持ち出して,患者の依存心を煽っていないだろうか.

あなたが自信満々で接すれば,患者は当然頼ってくる.人間の欲望には限りが無いから,頼り切った患者は不老不死を求めてくる.

逆にあなたが自分の限界を知り,患者の前で,自信を持って,「迷っている」,「わからない」,「教えてください」と言えれば,患者も,頼りない医者だなあ,じゃあ,自分がこの医者を助けてやろうか,教育してやろうかという気になる.

そもそも,医者の学習の大半は患者による教育によって成り立っている.だって,問診にせよ,診察にせよ,検査にせよ,すべて患者が発するメッセージを受け取る作業だ.それは患者による医者の教育以外の何物でもない.

教育すなわち学習することだから,患者が医者を教育しようとすれば,自ずから患者も医者の考えを学ぶことになる.すると患者のリテラシーが向上する.リテラシーが向上すれば,不老不死妄想なんて消し飛んでしまう.そうすれば,真っ先にあなた自身が楽になる.

だから言ったでしょ.簡単だって.難しいって考えるのは,他の医者のことまで考えるから.超能力者じゃないんだから,他人を操作しようなんて,とんでもないこと考えなさんな.自分のことさえ満足にできないのに.まず,自分のことからでしょ.わかったら,さっさと始めなさい.

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