お便りありがとうのコーナー

励ましのメールはありがたいが,問い合わせしてくれるなというお願いを全く無視して,怪しげな健康食品のことから,ウェスタンプロットの偽陰性のことまで,よくもまあ,たくさんのお問い合わせをいただくこと.激励メール以外は,ほとんどはその場でごみ箱に直行するのだが,その中で,ごく一部,思わず返事を書きたくなるような名作をだけをご紹介しよう.

ゼロリスク探求症候群とアルツハイマー病ヒグマを守る立場から自分の頭で考える男の子・女の子理屈よりも感情のゼロリスク探求したたかオフィシャルサポーター


ゼロリスク探求症候群とアルツハイマー病

ゼロリスク探求症候群について,お手紙をいただく方は,一様に,”今まで狂牛病パニックを見て抱いていた漠然とした不愉快な気持ちの理由がわかってすっきりした”,”目からうろこが落ちたようだ”ととおっしゃってくださる.では,その,漠然とした不愉快な気持ちはどうして起こったのだろうか?そしてすっきりしたのは何故なのだろうか?

不愉快なのは,ゼロリスク探求症候群に,知能の退行現象,幼児性を見るからだろう.いい大人が,幼稚園児みたいな真似をして,みっともない.端的に言えば,見苦しいバカと感じるのだ.成人になってからの知能の退行現象を痴呆と呼ぶのはみなさんよくご存知だろう.

勉強しない,無知をよしとする.自分の頭で考えない,猿真似に終始する.これがゼロリスク探求症候群の本体だ.痴呆以外の何者でもなかろう.

民間調査機関「日本リサーチセンター」がBSEについて2001年10月に行なった世論調査は,ゼロリスク探求症候群がアルツハイマー病の前駆症状であることを示唆している.

その結果は次の通りである.10代では3割を下回っていたが、60代では6割を超えるなど、年齢が上がるほど牛肉を控えていた。50代女性の4人に3人が牛肉を控えていたのに対し、15〜19歳では「控える」が男女とも27%で3人に2人は「気にしていない」と答えていた。女性は30代、男性は40代で「控える」派が半数を超えるなど、女性では50代、男性では60代をピークに年齢とともに不安を訴える傾向が強かった。

こうして世論調査の結果を分析してみると,BSEパニックの主力は中年以降のおじさんおばさんと年寄り,であり,10代,20代には健全な行動を保っている人が多いことがわかる.ゼロリスク探求はオヤジ度,オバタリアン度を現わすというわけだ.

考えて見れば当然なのかもしれない.阪神大震災の時,ボランティアで被災地入りしたのも,ゼロリスク探求行動とは無縁の人々であった.その中に,多くの若者がいた.ゼロリスク探求を拒否するためには,自分の頭で考えて,自己責任で行動せねばならない.それは被災地でのボランティア活動の必要条件でもあった.

一方,あじさん,おばさんは,自分で学ぼうとせずに,行動しようともせず,居間のテレビの前でお上を盲目的に非難するだけだ.お上のどこが悪かったのかを具体的に知り,それに対して今後はどういう危機管理をすべきなのかを提案しようとさえしない.すでに痴呆が始まっているのだ.

自分自身に正義があるとの幻覚妄想症状と,自分が差別や風評被害の加害者であることを忘れる健忘症状といったゼロリスク探求症候群の中核症状もアルツハイマー病によく似ている.

ゼロリスク探求症候群が重症なほどアルツハイマー病のリスクが高いかどうか,医学的にも非常に興味深い.


ヒグマを守る立場から
池田正行さま
初めまして.北海道庁の研究機関でヒグマの生態と保護管理の問題を担当している間野 と申します.池田さまの開設しているホームページ「狂牛病の正しい知識 Version 4.1ー あなたも,"ゼロリスク探求症候群"?ー」,とても興味深く読ませていただきました.ま た,池田さまの,コミュニケーションにきちんと責任を持とうとする姿勢に,深い感銘を 受けました.

 私もマスコミ報道を見て不安がる家族には,「今の牛肉は安くてこれまでで最も安全だ よ」(ただ,我が家で牛肉が食卓に上がることは,これまでもほとんどありませんでした が)と説いていたところですが,問題の経緯について本当に分かりやすく改めて理解でき, 感謝しております.

 一連の記述を読ませていただき,目に見える被害や問題はなくともリスクは実際に存在 しているのに,その現実を見つめようとせず,問題が顕在化した後で大騒ぎするという構 造は,私がかかわっている野生動物の保護管理の問題にもそのまま当てはまる,と強く思 いました.

 ご存じのように,日本の野生動物による被害でも,クマによる被害は人命に及ぶという 特徴があります.しかし,その未然防止のための方策が全くといってよいほど日本では取 られていないことについて,社会がほとんど関心を示さないことと,根は同じなのではな いかと思います.

 クマによる人身被害が起きる度に私のところに寄せられる多くのマスコミの質問は, 「クマに襲われたらどうすれば助かるか?」というものです.しかし,交通安全を説くと きに,「車に轢かれたらどうするか」ではなく「事故を起こさないためにどうするか」と 考えるように,クマに襲われないようにどうしなければならないかが最も大切だ,という ところから説明しなければならない日常なのです.

 近年の産業形態の変遷の過程で,農山村における生活からすら,かつてのような自然環 境との密接な関係が失われてきていると思います.その結果,クマの住む山々に隣接した 農山村の暮らしは都市化し,自然を観念的に捉えがちな多くの人々が,アウトドアブーム もあり,クマの住む山々に分け入るようになりました.その結果,あちこちにコンビニ弁 当やジュースの空き缶,ペットボトルが投棄され,あるいは野外活動施設における食物や 残飯の管理状況は目を覆うばかりの状況です.

 クマは大変学習能力が高い上に執着心が強く,人間のところで生ゴミや残飯などをあさ ることを覚えた個体が深刻な人身被害を引き起こすことが,国際的な共通認識となってい ます.そして,北海道でも,突然の遭遇による突発的な攻撃や威嚇を招いた事例や,餌付 けや放置した生ゴミの採餌によって人間を恐れなくなった個体による攻撃が,過去の被害 の多くの割合を占めていることが示唆されています.しかし,このことに真剣に耳を傾け, 自衛のためにどのようなことに責任を持たねばならないのかを考える人々は,残念ながら まだまだ少数派です.

 一方で繰り返される人身被害−道内では今年になって3名が死亡し1名が重傷を負うと いう被害が起きています−は,人々にクマに対する恐怖と憎悪の感情を植え付け,クマを 見たらともかく駆除といった対応が,百年一日のごとく繰り返されているのが現状なので す.しかし,このような対応を続けるばかりでは,クマの絶滅リスクを上げるばかりでな く,被害の発生リスクも抑えることができません.

 クマの保護管理対策では,この二つのリスク管理が欠かせないことを被害におびえる地 域社会と,クマを殺すことに声高に異議を叫ぶ保護団体,そして,私が奉職している道庁 のお偉方にも是非理解してもらわなければなりません.

 以上,私の仕事に関連することを書き連ねましたが,社会が(敢えて日本とは書きませ んでした.程度に差はあっても人間社会共通と思います)リスク評価とリスク管理につい てきちんと理解することの必要性を改めて認識しております.そして,そのためには, 「自分のおつむで論理的に考える」という当たり前のことを,個々人がすることがまず必 要なのでは,と思いました.

 失礼いたしました.
間野 勉@北海道環境科学研究センター 


自分の頭で考える
狂牛病のことで私にお手紙をくださる方は,異口同音に,自分の頭で考えることの大切さを感じたとおっしゃいますが,実は自分の頭で考えることは,そんなにむずかしいことではなく,”みんなが言っていること”や”新聞に書いてあること”,”テレビで言っていたこと”には,必ずどこかおかしいことがあって,どこがおかしいのか,どうしておかしいのかを調べていけば,おのずから,自分の頭で考えざるをえなくなるのです.特に,どんな分野であれ,教育に携わる方々は,そのことを是非とも生徒さんに伝えてください.
”テレビで言っていたこと”や”新聞に書いてあること”が,どんなに的外れかは,すぐわかります.あなたが最も得意としている分野の番組や記事をに対する自分の感想を思い出してください.”よく調べている”なんて思ったことが十に一つありますか?いつも,”なんだ,こんなでたらめ言って”,じゃないですか?
男の子・女の子

夫が’87から駐在していたロンドンに、’88に後から渡英し’91に帰国致しました。向こうの駐在員仲間も狂牛病だから、牛肉は食さないという方がいたのですが、我が家は関係なくというよりはおいしくなかったので、韓国料理店かイタリア料理店、中華料理店で主に大体毎週食べておりました。

夫などは、全く気にせず、主な仕事場のフランスで子牛の脳みそ等、現地人が引いてしまうような料理でさえも食べていて、出張から帰る度に太っていたくらいです。

日本でニュ−スになっても、そのうちこっちにも来ると思っていたよと、平気な顔です。

拝復
狂牛病の正しい知識を運営している池田正行です.お手紙ありがとうございました.

あなたの配偶者の選択が間違いなかったことがこれで証明されたわけです.きちんと自分の頭で考えて,自分の責任で行動するまともな人を伴侶に選んだということです.病気の牛1頭でがたがた騒いでいたら,男として失格です.そういう騒ぎは女子供に任せておいて,仕事場で七人の敵を相手に立ち回るのが男の役割です.牛肉を食べないなんて男がいたら,”お前,キン○○あんのかよ”って,言ってやりましょう.


理屈よりも感情のゼロリスク探求

BSEに関する先生のHPを拝見しました。報道に振り回されて、全く牛肉、牛製品を生活から シャットアウトしていた自分を反省しています。2000年問題の時も、後から「やられた!」と思ったはずだったのに・・・。

ただ、今回のBSEに関して、まだ納得しきれない部分があり、素直に「今日はすき焼きだぁ」という気分にはなれないので、なぜかを自分なりに分析してみました。

私は山登りをします。山登りは、一般的に危険の多い行為で、毎年何十人かが遭難して亡くなっています。 多分、タバコのリスク同様、牛肉を食べてnvCJDに感染して死ぬ確率より高いでしょう。でも、山登りには行きます。それはなぜか?多分、なぜ遭難して死ぬのか、理由がわかっているからだと思います。

BSEに関して、CJDに関して、先生のHPでも、他の文献でも(そんなにたくさん読んでいるわけではありませんが)、結局「まだわかっていないことが多い」ということになるような気がします。なぜBSEになるのか?人には本当にうつるのか?

天候が急変した、道に迷った、準備不足だった、技量がたりなかった、滑落した、雪崩にあった、山で 死ぬ時は、ほとんど全て自分のせいです。だから、危険を回避するため自分で考えることができるし、 闘うこともできます。最後まで闘って、それで死んだとしても、成仏できる(それほど信心深くはないですが)というか、納得して死ねる気がするんです。きっと、タバコを吸っている人も(納得するという意味では)同じだと思います。BSEに関しては、まだ解明されていないことがほとんどで、そのあたりがとても気持ち悪いのです。

ただまあ、そんな空が落ちてくるのを心配するようなこともアホらしいので、今度の給料日にはすき焼きしようかな、と先生のHPを拝見して思いました。長々とつたない文章、申し訳ありませんでした。新しい情報など、楽しみにしております。失礼致しました。

拝復
2000年問題ですか.確かに,あれは誰もが文句をつけられない格好の商売ネタでしたね.結果的には随分と無駄な金と労力が費やされましたが,費用対効果の評価や反省が全然なされていませんね.

BSEパニックは,つまるところ,私がゼロリスク探求症候群と名づけた感情の問題だと思っています.理屈では説明できません.私はわかっていることは全部書きましたが,それでも納得できないというのは,やはり感情の問題なのです.

医学の進歩なんていうのは,IT革命と同じで,お素人さんたちが勝手に作り上げた幻想で,病気や人間の体のことなど,わからないこと,不確実なことだらけです.わからないことだらけとの開き直りに納得できないのは感情の問題で,我々医者・研究者にはどうにもなりません,

”専門家がしっかりしてくれなけりゃ困る”と非難しているうちは,牛肉には手が出ないでしょう.医者も役人も偉そうな顔をしていても,自分たちと同じヘマであり,自分を含めた人間が生み出す様々なリスクに比べたら,牛肉のリスクを考えるのは時間の無駄だという理屈に納得できれば,あなたのように,明日からすき焼きでもステーキでも食べられるのです.


したたか

狂牛病の正しい知識、興味深く拝見させていただきました。そこで、一主婦として気になった箇所がありましたので、メールさせていただきます。

スコットランドでは,牛肉が最も手軽で安いタンパク供給源でした.魚はもちろん,鶏肉も豚肉も牛肉に比べて割高で,貧乏留学生の私も含めて,経済的に余裕のない人々は牛肉を食べないというわけにはいかなかったのです.1996年の第二次狂牛病パニックの時も,スコットランドでは,安くなった牛肉を大量に仕入れて冷凍しておく,したたかな連中がいました.

日本の主婦は、十分したたかです。 なぜなら、今の日本では、狂牛病パニックで投げ売りしている牛肉よりも、 豚肉・鶏肉・魚の加工品・豆腐・卵などが特売された時の方が、ずっと安いからです (地域にもよりますが)。 節約主婦達は、もっと前から高い牛肉を使わずに料理を作りたかったのですが、 家族の手前、仕方なく牛肉を食卓に出してきました。そこで起きた狂牛病騒ぎは、節約主婦達に大義名分を与えてくれたのです。今、安全だから牛肉を買えと言われても、彼女らがそんな贅沢品を買うわけがありません。

日本の主婦は、したたかだからこそ、牛肉を買わなくなったのではないでしょうか? 少なくとも、私はそうです。お目汚しだったかも知れません。言いたい放題で、失礼しました。 個人的にプリオン蛋白自体には興味があります(私の愛読書はブルーバックスです) ので、 新しい情報が入るのを楽しみにしています。

拝復 一主婦様
新潟県は大潟町の池田正行です.これだけの見識を持った方が匿名とは,まだ,日本に謙譲の美徳が残っていたのだと,感動しております.

節約主婦達は、もっと前から高い牛肉を使わずに料理を作りたかったのですが、家族の手前、仕方なく牛肉を食卓に出してきました。そこで起きた狂牛病騒ぎは、節約主婦達に大義名分を与えてくれたのです。今、安全だから牛肉を買えと言われても、彼女らがそんな贅沢品を買うわけがありません。

おっしゃる通りです.郷に入っては郷に従えと申します.私も1992年2月26日に日本へ帰ってきてから,2001年9月10日までは,自分では絶対に牛肉を買いませんでした.マクドナルドのハンバーガーも,動脈硬化を促進するので,決して食べませんでしたが,9/11以降は,外食は,平日半額のハンバーガーか,280円の牛丼と決めて,一日も早い住宅ローンの返済を心がけ,今年の忘年会の幹事を仰せつかった際には,会場をすき焼きかステーキ屋にして会費を値切ろうかと,あこぎなことも考えております.

(したたかではなく,ただ,けちなだけの)池田正行
新潟県大潟町


オフィシャルサポーター
今朝の我が家の会話です。と言っても、殆ど私の独り言ですが、
私 「牛エキスを使用した化粧品が、自主回収されるんだってね」
夫 「・・・らしい」
私 「エキスの入ったスナック菓子は危ないから食べさせないって言うお母さんの記 事があったよ」
夫 「・・・」
私 「実際に狂牛病に罹った牛そのものを食べたとしても人間に感染する確率はすご く低い(寡聞なため確実な数字を把握していないのでごまかした)らしいね。」
夫 「う・・・ん」
私 「私が思うに、それよりも排気ガスやたばこの方がもっと危険で迷惑なんじゃな いの?そっちをやめてくれって言いたいよね」
夫 「・・・・」
 新聞の自衛策などという見出しで載ったそれらの記事を見て、ますますパニック感 を募らせる人は、確実にいるのでしょうね。
 Dr.池田、ありがとうございます。これだけ明言していただければ、まわりから あほと呼ばれている私でも、自信を持って焼き肉を食べに行けます。
 もっとも、この騒ぎの中、牛肉を買い控えたり、焼き肉を食べる回数を減らしたり などはしなかった私ですが・・・。
 「狂牛病の正しい知識」Version3.4は社内回覧させていただきます。

拝復
あなたの発言と行動は,”狂牛病の正しい知識”のオフィシャルサポートを受けていることを,ここにご連絡させていただきます.
(できれば,お住まいの都道府県市町村名とお名前をお知らせください.匿名のお手紙ですと,怪しげなメールと間違えて,すぐに捨ててしまう可能性がありますので)


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