バイエルとモンサント

健康が害されることはないとの判断を下したのは,米国環境保護庁(EPA)であってFDAではないことに注意.
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除草剤グリホサートは発癌性物質ではないと米国政府が判断 BioToday.com 2019-05-02
世界で最もよく使われている除草剤グリホサートを成分とするBayer製品Roundup の使用で癌を発症したとの訴えを米国の陪審が最近認めたのとは対照的に、米国政府はグリホサートの発癌性の裏付けはなく説明書通りの使用で健康が害されることはないとの判断を示しました。ただし環境に悪影響を及ぼす恐れはあり、乱用を防ぎ、授粉生物を守り、雑草がグリホサートへの耐性を生じないようにするための対策を米国環境保護庁(EPA)は提案しています。

ICYMI - Des Moines Register: EPA Reaffirms Finding that Glyphosate Does Not Cause Cancer. / EPA
EPA Takes Next Step in Review Process for Herbicide Glyphosate, Reaffirms No Risk to Public Health / EPA
EPA says popular weed killer glyphosate is not a carcinogen / Reuters
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Bayerが米国事業のかつての重要拠点を閉鎖〜600人超の雇用が打ち切られる BioTodayニュースレター 2019年1月18日
製薬ニュースFiercePharmaによると、12,000職削減を伴う大規模再編の一環としてBayerが米国ペンシルバニア州ピッツバーグ近郊Robinson拠点を閉鎖します。米国事業を支援するIT、会計、法務等の事務職を主とする従業員569人と契約社員96人の雇用が今後2年以内に打ち切りとなります。2012年にPhilip Blake氏が米国事業長に指名されてニュージャージー州Whippanyに据えられるまでは、今回閉鎖が決まったRobinson拠点がBayerの米国幹部の拠り所となっていました。Whippany拠点はその1年後にBayer HealthCareの新たな米国本拠になっています。
Amid worldwide cutbacks, Bayer to shutter Pennsylvania site, cut loose 600-plus workers
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これも,ラウンドアップ関連訴訟における和解金↓(下記記事)を捻出するためのリストラの一環だろう.
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モンサントと親会社バイエル、知っておくべき5つの事柄 【2018年8月14日 AFP】
農薬大手モンサント(Monsanto)の除草剤のせいでがんになったとして、同社を相手取り訴えた裁判で、原告の米国人男性が予想外の勝利を収めたことから、今後、同様の訴訟がせきを切ったように起きる可能性が出てきた。今年モンサントを買収したばかりのドイツ製薬大手バイエル(Bayer)は、この大きな買い物を後悔することになるかもしれない。
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上記記事に示されたバイエルの行状は以下の通り.
●20世紀初頭に短期間、モルヒネに代わるせきの薬としてヘロインを販売していたことがある.ちなみにヘロインの合成に成功したのはアスピリンでお馴染みのFelix Hoffmannである.ただし,アスピリン合成の真の功績が,(アーリア人である)ホフマンにあるのか,それともホフマンの上司で,テレージエンシュタット強制収容所を耐え抜いたアイヒェングリュンにあるのかは,いまだに議論がある.(余談ですが,Arbeit macht Freiはアウシュビッツの専売特許ではなかったのですね)
●第2次世界大戦中,バイエルは、ナチが強制収容所のガス室で使用したツィクロンB(Zyklon B)を製造していたイーゲー・ファルベン(IG Farben)の傘下に入っていた。

このバイエルとモンサントとの関係は,何もここ数年で始まったことではない.その蜜月は20世紀初頭まで遡る.----------------------------------------------------------------------
「環境最悪企業」と言われるモンサントを買収したバイエルの狙い 2016.09.21 ハーバービジネス オンラインより
●モンサントは1901年に米国ミズリー州セントルイスでジョン・クイーニーが創業
●モンサントの最初の製品はサッカリンであった。それをコカ・コーラに売っていた。
1917年になると、アセチルサリチル酸,つまりアスピリンを生産。(バイエルがアスピリンの製造・販売を開始したのは1897年)
●1935年にはポリ塩化ビフェニル(PCB)も生産開始
●1940年代には殺虫剤としてDDTなども生産
●1960年代にはベトナム戦争で使う枯葉剤を生産
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こうして,この二つの企業の行状を見てみると,その体質にお互いが親和性を感じての買収ではなかったのかと,思ってもみたくなるというものだ.

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