にわか障害者

自分の意志が自由に言葉で伝えられない,相手の言うことがわからない(特にグラスゴーでは!!)というのは大きなストレスだ.できるものならそのストレスを避けたいというのが正直な気持ちだ.しかし,そのストレスのある環境を通じてはじめて得る物がある.

電話一つにも清水の舞台から飛び降りる覚悟をしなければならず,不動産屋の店員や家主の言うことがさっぱりわからず,冷や汗をかきながら,雨の中を何件もフラットを探しに歩き回った,グラスゴーに着いた直後のそんな時期に,出会った人々の印象が悪かったら,私は決してこんなホームページなんぞ作っていなかっただろう.

言葉がわからない土地での生活.それは一時的にせよ,障害者としての生活だ.目隠しをしたり,サンドバッグを足にくくりつけたりというような滑稽な真似など足元にも及ばない,本当の障害者だ.障害者を知るためにはまたとない機会だ.

幸いなことに我々は多かれ少なかれ障害への適応力を持っている.その障害を残したまま(私は今でも純然たるグラスゴー訛には完全にお手上げだ)適応していくにせよ,克服していくにせよ,その過程で知った人々の気持ち,振る舞い,築き上げた人間関係は,健常な時に経験したそれよりもはるかに大切な財産になる.

中にはストレスに対して夏目漱石のような反応を起こしてしまう人もいるので,全ての人が言葉の通じない環境を経験するべきだとは思わない.しかし,ストレスに耐えられない場合にはいつでも逃げ道があることが保証されていれば,あなたやあなたの子供がスコットランドに滞在することは,格別に有意義なことだろう.

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