男性が服用した薬剤の胎児への影響

 妊娠している可能性のある女性に薬物療法を行う際には、薬剤の催奇形性について十分注意する必要があります。それでは、男性が服用した薬剤の胎児への影響についてはどうでしょうか。
 男性側に投与された薬剤に関するデータはほとんどありませんが、一般的には、薬剤の影響を受けた精子は受精能力を失うか受精してもその卵は着床しなかったり、妊娠早期に流産して消失すると考えられています。また、出生にいたる可能性があるとすれば染色体異常か遺伝子レベルの異常で、いわゆる催奇形性のような形態的異常は発生しないと考えられています。
 男性の精巣で作られた精子が受精に関わるまでには約74日(±4〜5)を要しますので、薬剤の影響があるとすれば受精前約3ヶ月以内に投与された薬です。射精の直前にはすでに精子となって蓄えられていますので、受精の1〜2日前に服用した薬剤の影響はむしろ考えられません。
 添付文書に男性の避妊に関する記載のある薬剤を下表にまとめました。この他に、コルヒチン(痛風治療剤)で、男性側の服用によるダウン症候群や他の先天異常児の出生の可能性が報告されています。

添付文書に男性の避妊に関する記載のある薬剤
薬剤名 男性の避妊に関する記載 理由

イムラン

(免疫抑制剤)

投与中の患者には男女共に避妊を行わせる。 投与中の患者において、リンパ球に染色体異常を持つ児が出生したとの症例報告がある。また、動物実験(ウサギ、ラット、マウス)で催奇形性作用が報告されている。

チガソン

(角化症治療剤)

男性に投与する場合は、投与中及び中止後少なくとも6カ月間は避妊させる。 モルモットを用いた動物実験で、精子形成能に異常を起こすことが報告されている。

デノシン

(抗ウイルス剤)

男性は投与期間中及び投与後90日間は有効な避妊を行わせる。 動物実験で催奇形性及び変異原性があることが報告されている。

ポトックス注

(眼瞼痙攣治療剤)

男性は,投与中及び最終投与後少なくとも3カ月は避妊する。[精子形成期間に投与されることを避けるため] ラット慢性毒性試験の最高用量24単位/Kgで精巣変性が観察された。

グリセオフルビン

(抗真菌剤)

投与中の患者には避妊をさせる。また、少なくとも投与中止後、男性では6カ月間は避妊をさせる。 高用量での動物実験(マウス)において、初代精母細胞において染色体の異常分離を誘発したとの報告がされている。

レベトール

(抗ウイルス剤)
パートナーが妊娠する可能性のある男性患者に投与する場合には、避妊をさせること。 生殖発生毒性試験において、精巣・精子の形態変化等が報告されている。