インスリンの単位について

 医薬品の中には、投与量に「単位」という言葉で表現されているものがあります。この「単位」は、医薬品の生物学的活性の強さを示しています。単位表示されているものには、ホルモン剤、酵素製剤、ビタミン剤、抗生物質、抗毒素剤等がありますが、単位の定義を知らないまま、経験的に使用されていることが多く、またその意味を知る機会も少ないと思われます。「インスリン」に用いられている単位について説明します。

 1921 年にインスリンが発見され、医薬品として製造が開始されましたが、インスリンの力価がロット毎や製造会社毎にバラツキがありました。そのため、同じ容量を注射しても血糖降下作用が見られなかったり、逆に作用が強すぎてしまい、低血糖を起こすことがありました。このような背景から、力価を表す単位を決め、一定の活性をもつ標準品を調製しようとする動きが見られました。
 1922 年 Banting らは、45 mg / dl 以下になると、ほぼウサギが低血糖けいれんを起こすといわれることより、“正常ウサギの血糖を 0.045 %(45 mg / dl)にまで下げる量”としてインスリンの単位を定めました。翌年、Edinburgh で開かれた国際連盟保険機構の標準化委員会で、インスリンの単位は、“約 2 kg の 24 時間絶食ウサギの血糖を 3 時間以内に痙攣レベルにまで下げうる量”と定義されました。
 1924 年にインスリン標準品を調製する動きがあり、1925 年に 8 単位 / mg と定義されました。これが最初のインスリン国際標準品です。その後、インスリン製造技術が急速に進歩し、1958 年には 24 単位 / mg となり、また精製技術がより進歩したことにより、1987 年にはヒトインスリン 26 単位 / mg 、ウシインスリン 25.7 単位 / mg と定義されました。なお、第 13 改正日本薬局方には、インスリン乾燥物に対し、1 mg 当たり 26 単位以上を含むと規定されています。
 現在のインスリン製剤を重量単位に換算して見ましょう。国際標準品に準じて 1 mg = 26 単位とすると、乾燥減量を 8 % (局方では 10 % 以下と規定されている)と仮定すると、1 mg × 0.92 (乾燥重量)= 26 単位 → 1 mg = 28.3 単位 → 1 単位 = 0.0353 mg と換算できます。
 インスリンの40 単位、100 単位、150 単位、300 単位製剤を重量あるいは mol に換算すると以下のようになります。

インスリン 力価
(IU / ml)
インスリン濃度
mg / ml mmol / l
40 1.41 0.243
100 3.53 0.609
150 5.30 0.911
300 10.59 1.822