人体に及ぼす放射線被曝の影響

 茨城県東海村で日本初の臨界事故が起きました。そこで、人体に及ぼす放射線被曝の影響についてまとめてみます。

 放射線は、物質を透過するときに物質を構成している原子にエネルギーを与え、この原子には電離、励起などの物理的な作用が起こります。電離作用によって作られたイオンは、人体を構成している水などと反応してフリーラジカルと呼ばれる活動的なイオンを作り、これが細胞の核の中の DNA などに傷をつけます。傷つけられた DNA の大部分は、短時間の内に元通りの DNA に修復されますが、あるものは修復されないでそのまま傷として残ってしまうものもあります。傷ついた DNA をもった細胞は、その傷が致命的である場合は細胞死に至りますが、致命的でない場合は細胞分裂を繰り返します。組織・臓器を構成している細胞にこのような変化があらわれると、臨床的に放射線障害・影響としてあらわれてきます。
 身体的影響には、(1)早期効果と(2)晩発効果の二つに分けられます。(1)早期効果は、一度に大量の放射線を被曝した後数週間以内に現れてくる障害で、細胞分裂の盛んな組織ほど放射線の影響を受けやすく、造血器官、生殖腺、腸管、皮膚などが該当します。臨床症状としては白血球減少、下痢脱水、脱毛、永久不妊などがあります。逆に肝臓、筋肉、脳など細胞分裂をほとんど起こさない組織では放射線の影響を受けにくいと言えます。
 一方、(2)晩発効果は、被曝後しばらく症状の現れない潜伏期間があるものをいいます。代表的な臨床症状として、ガンや白内障、寿命短縮、不妊があります。弱い放射線を被曝した場合は、この晩発効果が危惧されますが、科学的には曖昧さがあるようです。
 遺伝的影響とは、被爆した人の子孫に現れる影響のことで、放射線によって生殖細胞に突然変異が起きて生じるものです。ショウジョウバエなどの動物実験では認められているものですが、ヒトではまだはっきりとして証拠は得られていません。しかし、可能性は否定できませんので放射線防護の対策は大切です。