びまん性汎細気管支炎(DPB)に対するマクロライド少量長期投与

 びまん性汎細気管支炎(Diffuse Panbronchiolitis: DPB)は、炎症が気管支末端の呼吸細気管支全層に広がり、呼吸細気管支のむくみ、分泌物の増加により気道が狭められ、呼吸困難、喘鳴、せき、たんなど気管支喘息と同様な症状がでる病気で、患者の80%が慢性副鼻腔炎を合併しているのが特徴です。この病気は欧米ではほとんどみられず日本人に多く、遺伝的な体質によるものと考えられています。 非常に難治性の呼吸器疾患に数えられ、5年生存率はわずか38%という報告もあるほどでしたが、近年マクロライドの少量長期投与の有効性が明らかになってきました。通常、エリスロマイシン 400〜800 mg/日が用いられますが、無効例にはクラリスロマイシン 200 mg/日、ロキシスロマイシン 150 mg/日なども投与されます。大体服用開始3ヶ月以内に効果がでてきます。6ヶ月服用し著明に症状が改善した場合は服用を中止します。それ以降もある程度症状改善のあるうちは投与を続け、2年程度投与し3ヶ月以上症状が不変の場合は一旦服用を中止します。いずれも服用中止後再増悪する場合は再投与を行います。
 マクロライドの投与により気道液中の細菌が消失しなくても治癒すること、エリスロマイシンに全く感受性を持たない緑膿菌症例でも有効であることなどから、マクロライドの DPB に対する作用として抗菌作用以外のメカニズムが考えられています。マクロライドの作用としてこれまでに、気道の過剰分泌抑制、好中球性炎症の抑制(遊走能抑制、IL-8 産生抑制、活性酸素放出抑制など)、リンパ球への作用(気管支肺胞洗浄液中の活性化 CD8 リンパ球数の減少など)が明らかになっており、マクロライドはこれらの多くの作用点を持ち、全体として気道の炎症病態を抑制する方向に作用しているものと考えられています。また、このような作用をもつのはマクロライドの中でも14員環構造をもつ薬剤に限られています。
 最近では、DPB だけでなく慢性気管支炎、気管支拡張症、副鼻腔炎や滲出性中耳炎などにもマクロライドの少量長期投与が行われています。

 実はもう一つ、エリスロマイシンには以外な作用が知られています。それは「モチリン様作用」と呼ばれる消化管運動亢進作用です。ヒトの消化管においては、空腹時に1〜2時間ごとに胃から始まって回腸末端(盲腸の前)まで移動していく、周期的な強い収縮運動が生じていることが知られており、これを空腹期肛側伝播性強収縮帯(IMC)と呼んでいます。このIMCを制御しているのが「モチリン」と呼ばれる消化管ホルモンです。エリスロマイシンはモチリン受容体に作用し、消化管運動を亢進させるという報告があります。この場合も、抗菌作用が期待できない少量投与で効果を発現するとされています。