OTC欠損による高アンモニア血症患者に対する安息香酸ナトリウムの投与

 オルニチントランスカルバモイラーゼ(OTC)欠損による高アンモニア血症に対して処方される安息香酸ナトリウムについて解説します。。
 下図に肝臓での尿素回路の概要を示します。有毒なアンモニアを無毒な尿素に変換する役割を果たすのが尿素回路です。尿素を合成する過程には5つの酵素が関与し、そのうちの一つであるオルニチントランスカルバモイラーゼを欠損した患者は、尿素回路が作動しなくなり、アンモニアが体内に蓄積し、高アンモニア血症となります。これにより、嘔気、嘔吐、意識障害、嗜眠、痙攣、呼吸障害などが出現し、血中アンモニアが400-500μg/dl (正常参考値:40-85μg/dl)を超えた患者では生命の危険があります。また、高アンモニア血症により、精神発達遅滞が生じます。遺伝形式はX-linkedで、日本では9万人に1人の割合で発症すると言われています。
 安息香酸は下図のように、肝臓でグリシンと反応(グリシン抱合)し馬尿酸として排泄されます。尿素回路を介さずに窒素を体外へ排除でき、また馬尿酸は容易に尿中へ排除されやすいため、OTC欠損による高アンモニア血症の治療に有効です。安息香酸がグリシンと100%と反応するとすると、蛋白摂取制限を受けている尿素回路異常症の患者に1.0gの安息香酸ナトリウムを投与すれば、約1gの蛋白質を多く摂取できることになり、必要蛋白量を摂取できない患者にとってはこの効果は大きいことになります。
 副作用として、過剰投与による肝障害があります。
 その他の治療法として、血漿交換、低蛋白食事療法やアンモニアの生成や吸収を抑制する目的でラクツロースが用いられます。