高血糖を起こす可能性のある薬剤

 臨床で用いられる薬剤の中には、副作用として血糖上昇作用を有するものがあり、糖尿病患者やインスリンの分泌が減少している高齢者に対して慎重に投与する必要があります。以下に血糖上昇作用を有する代表的な薬剤について解説します。

(1)副腎皮質ホルモン剤
 副腎皮質ホルモン剤によって起こる耐糖能の異常は「ステロイド糖尿」と呼ばれ、臨床上最も糖尿病を誘発しやすいと言われています。その血糖上昇メカニズムは、1. 肝における糖新生の亢進、2. 筋、脂肪組織におけるアミノ酸、脂肪酸の遊離促進、3. インスリン標的細胞におけるインスリン感受性の低下などによると考えられています。

(2)降圧利尿剤(サイアザイド系及びループ利尿剤)
 サイアザイド系及びループ利尿剤のいずれも耐糖能異常をきたす場合があります。これら降圧利尿剤を長期服用することにより低カリウム血症が生じ、膵β細胞のATP 依存性カリウムチャンネルが有効に作動しなくなり、インスリンの分泌が抑制されるためと考えられています。また、末梢でのインスリン感受性も低下します。

(3)βブロッカー
 本剤がβ受容体を遮断することで交感神経のα作用が優位となり、膵β細胞からのインスリン分泌が抑制されるため高血糖が生ずると考えられています。β2 受容体を選択的に刺激するとインスリンの分泌が促進されることから、この血糖上昇作用はβ1 受容体遮断剤では弱く、非選択性β遮断剤では強いと言われています。しかし、β遮断剤の単独投与でインスリンの分泌が低下し糖尿病を誘発することはまれです。

(4)Ca 拮抗剤
 Ca 拮抗剤は膵β細胞内へのカルシウム流入を抑制することによってインスリンの分泌を減少させる可能性があります。もっともこれは実験的なもので、本剤による高血糖は臨床的にはほとんど問題ないと考えられています。

 この他、成長ホルモン、甲状腺ホルモン、卵胞ホルモンなども血糖上昇作用を有することが報告されており、糖尿病患者に対して成長ホルモンは禁忌、甲状腺ホルモンや卵胞ホルモンは慎重投与となっています。