令和5年11月より田中栄先生の後任として日本臨床リウマチ学会理事長を拝命しました。日本臨床リウマチ学会は昭和62年に発足した第1回関西リウマチ学会から、リウマチ性疾患に関する臨床研究の進歩を図るために貢献してきました。伝統ある本学会理事長を拝命し、身に余る光栄に存じます。学術集会、学会誌において、臨床研究を深く掘り下げ、新しい知見を開拓し、また基礎研究の成果を臨床面に生かすという本学会の崇高な設立趣旨を引き継ぎ、更なる発展に繋げることができればと存じます。
令和5年は本邦で生物学的製剤が導入されて20年、JAK阻害薬が市販されて10年、まさに節目の年です。21世紀にはリウマチ性疾患の医療に大変革が齎されましたが、短期・長期的な安全性、経済性、コロナ禍での医療、難治症例、臓器障害への対応、寛解後休薬、分子標的薬の使い分けなど、新たな臨床的な課題も析出してきました。また、治癒への道のりは近くなく、治療薬が不十分なリウマチ性疾患も多く残存します。
斯様な課題を克服するためには学問の進歩や先進医療の普及も必要ですが、医療の基本に戻ること、一人一人の患者を「心をこめて」診ることが必要ではないでしょうか。また、内科、整形外科、リハビリテーション科の医師のみならず、看護師、薬剤師、理学・作業療法士、医療事務などの多職種連携が必要不可欠です。治療薬の開発や情報提供に取り組んでいる製薬企業との協力も重要です。実臨床に即し、患者に即した真の医療を追求する日本臨床リウマチ学会を目指すことができればと存じます。
日本臨床リウマチ学会では、日本リウマチ学会、日本リウマチ財団等とも緊密に連携し、アカデミアに加えて、実地臨床医、専門的メディカルスタッフ、製薬企業などと共に、リウマチ医療を追求することにより、多くの課題の克服、治療薬をはじめとしたリウマチ学の新たな発展、疾患治癒への道筋に通じるものと期待しています。日本臨床リウマチ学会、臨床リウマチ学の発展のために粉骨砕身努める所存ですので、会員の皆様におかれましては、一層のご支援とともに御指導御鞭撻を賜りますよう宜しくお願い申し上げます。
令和5年11月19日
日本臨床リウマチ学会理事長 田中 良哉
(産業医科大学医学部 第1内科学講座 教授)
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