プロトコール
1.背景近年の我が国における心疾患の発症率およびそれによる死亡率は、厚生省の死因統計では第2位に位置し、全死亡数の約2割を占めるに至っている。本疾患の年齢補正死亡率は減少傾向にあるものの、依然としてその背景にある危険因子へのアプローチは臨床医にとって最重要課題の一つである。欧米諸国においては以前より冠動脈疾患(Coronary Heart Disease:CHD)の発症頻度が高く、その危険因子を知るために多くの疫学調査が実施され、喫煙、高血圧、糖尿病、高コレステロール血症など様々な因子が複雑に組み合わさりCHDが発症することが報告されている。このような結果を受けて欧米では様々なガイドラインが発表され、そのコントロールに努めているが、現在においても日本ではこのような疫学調査はほとんど行われていないのが実状である。本調査は本邦におけるCHD患者の危険因子管理の現状を把握することにより、 今後の治療方針の検討を行うため計画された。
2.目的
本邦におけるCHD患者の危険因子管理状況・治療方法を経時的に調査し、その実態を把握するとともに、本邦独自のEvidence- Based Medicineに貢献しうる基礎データを提供する。
3.対象
A.追跡調査(同一患者を3年間追跡調査する。第1期トレンド調査を兼ねる。)@ 年齢・性別:不問
A 平成12年4月〜平成13年3月までの1年間に心臓カテーテル検査(CAG)を受け、下記の3項目全てに充当する患者を登録する。(1)CAG施行時、冠状動脈にAHA分類の75%以上の有意狭窄が認められた患者(2)CAG実施半年後も、同施設に通院している患者
(3)何らかの理由(死亡も含む)で同施設に通院していなくてもCAG実施後半年間の心血管イベント(死亡を含む)が確認された患者は含む。
B.トレンド調査(半年ごとに新規患者を登録し、半年間のみ追跡調査)
@ 年齢・性別:不問
A 下記期間に心臓カテーテル検査(CAG)を受けた患者で、その他の条件はA.追跡調査と同じとする。第2期:平成13年 4月 〜 平成13年 9月
第3期:平成13年 10月 〜 平成14年 3月
第4期:平成14年 4月 〜 平成14年 9月
第5期:平成14年10月 〜 平成15年 3月
第6期:平成15年 4月 〜 平成15年 9月
4.調査方法とデータ集計・管理
対象施設の病院記録とその他の関連記録を使用した調査で、下記2方法を並行して実施する。なお、調査票は調査担当医師またはClinical Research Coordinator(CRC)が、病院記録から記入する。データ管理は大学病院医療情報ネットワーク(UMIN)が行う。
A.追跡調査(同一患者を3年間追跡調査する,B調査の第1期を兼ねる)
@ 症例登録:連続調査方式A 登録患者全員(200例)がCAG施行後6ヶ月経過してから第1回調査を行う。その後は6ヶ月毎に3年間、調査項目(5参照)を記録する。
↑ CRCによる調査(カルテよりデータ収集)
* 6ヶ月後にまとめて調査
B.トレンド調査(半年ごとに患者を登録し、半年間のみ追跡する)@ 症例登録:連続調査方式(Aに登録された患者と重複可)
A 登録時とその6ヶ月後のデータの調査項目(5参照)を記録する
B Aに登録された患者(第1期)、各2-6期の登録患者は重複してもよい。
* 6ヶ月後にまとめて調査
5.調査スケジュール
A.追跡調査(同一患者を3年間追跡調査する)
調査項目の測定時期は、スケジュールの前後1ヶ月以内とする
調査項目
CAG* 実施時
6M 12 M 18 M 24 M 30 M 36 M 患者背景
○ CHD診断名
○ 冠動脈造影検査及び処置
○ 既往歴
○ CHDの危険因子
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 薬物治療状況
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 生活習慣改善療法の有無
○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ イベント発症
← ○ →
B.トレンド調査(半年ごとに新規患者を登録し、半年間のみ追跡調査)
調査項目の測定時期は、スケジュールの前後1ヶ月以内とする
調査項目
CAG*実施時 6M 患者背景
○ CHD診断名
○ 冠動脈造影検査及び処置
○ 既往歴
○ CHDの危険因子
○ ○ 薬物治療状況
○ ○ 生活習慣改善療法の有無
○ ○ イベント発症
← ○ → *CAG実施時:検査入院期間中で最も退院日に近い検査値を記入
6.調査項目
下記項目を5のスケジュールに従って、調査する。
@ 患者背景
カルテNo.、性、生年月日
A CHD診断名(診断日)
心筋梗塞(急性or陳旧性)、狭心症(安定or不安定)、無症候性心筋虚血、
うっ血性心不全の合併の有無(NYHA分類、LVEF)
B 冠動脈造影検査
検査日、狭窄部位、狭窄度
C イベント発症時処置
POBA、DCA、ロータブレーター、ステント、CABG、ICT、IVCT、その他
D CHD既往歴
CHD既往歴の有無、
有→診断日、診断名、処置
E CHDの危険因子(有無を記入)
喫煙、高脂血症、耐糖能異常、高血圧症、肥満、
運動負荷による虚血の有無(退院時)
家族歴(虚血性心疾患、高血圧症、高脂血症、耐糖能異常、その他)、飲酒
F 調査項目
TC、LDL-C(Friedewaldの式)、HDL-C、TG(空腹時)、FBS、HbA1c、
SBP、DBP、尿酸値、CRP、Lp(a)、Fibrinogen, 身長、体重、喫煙
G 退院時治療
・薬物治療状況
抗血小板薬、抗凝固薬、HMG-CoA還元酵素阻害薬、フィブラート系、
ニコチン酸、陰イオン交換樹脂、その他脂質改善薬、Vitamin E・C、
葉酸、利尿薬、α1・β遮断薬、α1遮断薬、β遮断薬、Ca拮抗薬、
その他の冠拡張薬、ACE阻害薬、A受容体拮抗薬
インスリン、SU薬、ビグアナイド薬、αグルコシダーゼ阻害薬
インスリン抵抗性改善薬、抗尿酸薬
硝酸薬、エストロゲン
・生活習慣改善療法の有無(判断基準を別途アンケート調査)
食事療法、運動療法、禁煙指導
H 心血管系イベント発症の有無
発症日、診断名(心血管系疾患)、転帰
青字:必須項目
太字:調査担当医師記入項目
7.解析方法
@ 人口統計学的変数の特性
人口統計学的変数(性別、年齢、喫煙、BMI、脂質、血糖、HbA1c、血圧、
投与薬剤等)について、参画施設全体で解析する。
A 経時的推移
危険因子の測定値(脂質・血糖・HbA1c・血圧)・投与薬剤の推移を参画施設全体で解析する。
B 追跡調査においては、3年間のイベント発生状況を調査し、危険因子・使用薬剤等との相関を検討する。
8.解析
解析責任者 東京大学医学部 薬剤疫学講座 助教授 山崎 力
9.目標症例数(最大)
追跡調査 :20,000例(1施設あたり 200例,100例,50例)
トレンド調査 :10,000例(1施設あたり 100例,50例,25例(各期))
10.調査期間
調査期間は原則3年とする。
11. 倫理
1)試験審査委員会各参画施設の試験審査委員会において、試験実施計画書等の審議・承認を受け、また継続審査を受けることを原則とする。
2)患者の同意
調査担当医師は、調査を実施する前に調査内容を患者に説明し、自由意志による同意を文書にて得ることを原則とする。
3)調査データの秘密の保全
収集したデータの報告を行う際、医師、CRC、事務局等の調査関係者は、カルテNo.もしくは患者No.(登録後UMINにて指定されたNo.)を用いる。
12. データの取り扱い
1) 症例記録は、調査担当医師が直接コンピューター入力するか、医師の立ち会いのもと、CRCが直接コンピューター入力することを原則とする。2) CRCが入力したデータについて、医師は入力内容に問題がないことを確認する。
13.結果報告
調査終了後、毎回、各施設および全施設合計の解析結果を参画医師にフィードバックする。ただし、各施設の単独データは他施設には公表しない。また、当研究会のホームページを開設し、データ結果閲覧・検索・解析および質疑応答等を実施できるようにする。当ホームページは、参画医師と調査関係者が各々ID No.とパスワードを保持し、アクセスするように設定し、データの秘密保持を徹底する。
14.組織
15.参画施設
16.J-CAD Study事務局
東京大学医学部 薬剤疫学講座
山崎 力・林 同文
住所:〒113-8655
東京都文京区本郷七丁目三番一号
TEL :03-3815-5411(内線35825)
FAX :03-5800-8751
e-mail:heart-kenkyukai@umin.ac.jp
homepage address: http://square.umin.ac.jp/heart
http://heart.umin.ac.jp/