Stage評価と認知発達治療

 認知発達治療は、認知の発達を促してその障害の改善と克服を
する働きかけを主軸に置き、そのことにより、行動や情意の発達
を促してその障害を改善したり、克服したりすることをねらいと
する、治療教育の1つである。認知発達治療は、シンボル表象機
能の発達段階評価である"太田のStage評価"に基づいている。

(1)太田のStageによる発達段階

 発達段階は、低い方から順に、StageT、U、V-1、V-2 、W
の5段階に分けられる。

Stage T:シンボル機能が認められない段階

 感覚運動期あるいは無シンボル期に相当する。前言語期にあた
り、物に名前のあることさえ十分にわかっていない段階である。
人に対する要求手段によってさらにStageT-1、T-2、T-3の3段
階に分けられる。

StageT-1:手段と目的の分化ができていない段階

 人に向けての要求手段がほとんどない。

StageT-2:手段と目的に分化の芽生えの段階

 基本的には単一の要求手段しか持たない。ほとんどの場合は
クレーン現象で要求を示す。

StageT-3:手段と目的の分化がはっきりと認められる段階

 複数の要求手段が使用できる。言葉、指さし、身振り、発声
などで示し、クレーン現象で示すことは徐々に少なくなる。

Stage U:シンボル機能の芽生えの段階

 感覚運動期からシンボル表象段階への移行期にあたる。物に名
前があることがわかり始めているが、物の理解はまだ一義的な理
解にとどまり、明確にシンボルを持った言語を獲得したとは言え
ない段階である。

Stage V-1:シンボル機能がはっきりと認められる段階

 シンボル表象期の最も初期にあたる。物には名前のあることが
はっきりと理解できるようになり、本来の言語の機能を獲得する。
しかし、基本的な比較の概念はまだ成立していない段階である。

Stage V-2:概念形成の芽生えの段階

 ごく基本的な比較の概念が出来始めた段階である。しかし、物
と物との関係づけは経験に左右され、言語のみによって理解する
ことは不十分な段階である。

Stage W:基本的な関係の概念が形成された段階

 空間関係などの物と物との関係が言語で理解できるようになり、
表象的思考の柔軟性が増す段階である。

(2)太田のStage分けの方法

 先に述べた5つの発達段階分けの操作基準、各発達段階の臨床
像や治療教育のねらいなどについては第3章で述べる。

(3)太田のStageおよび認知発達治療の意義

 太田のStage評価の意義と有用性は以下のようにまとめられる。

 このStage評価に基づく認知発達治療の意義は以下のように考
えられる。

(4)認知発達治療の限界

 自閉症児において、認知発達を促し、発達の節目を乗り越えて
その障害を克服することは、しばしば非常に困難である。そのた
め、同じ認知発達の段階内に止まっていようとも、自閉症児の生
活全体を見わたし、認知発達の水準を踏まえつつ適応行動を豊富
にする働きかけを同時に行う必要がある。

参考文献

1) 太田昌孝、永井洋子(編著):自閉症治療の到達点.日本文化科
学社,1992.

2) 太田昌孝、永井洋子(編著):認知発達治療の実践マニュアルー
自閉症のStage別発達課題ー.日本文化科学社,1992.


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