The Cochrane Library / Cochrane Database Systematic Review (CDSR) abstractの個々のCollaborative Review Group (CRG) の日本語訳の作成について

( ver.1.0 2002.1.15) ver.1.1 2007.5.9

廣瀬美智代、福井直仁、津谷喜一郎


 複数の領域の方々から、個々のCollaborative Review Group(CRG)のabstractの翻訳希望の申し出があり、現状と対応を協議した。

1.Update Software社の意向

 2001年9月13日(木)、津谷がOxfordの、The Cochrane Libraryを製作し販売しているUpdate Software 社を訪問し、Dr. Mark Starr、Ms. Rachel Stancliffeとmeetingを持った。その内容は以下のとおりである。


1) “copy right free”という言葉が誤解をよんでいる。正しくは、The Cochrane Libraryの著作権(copy right)はUpdate Software社にある。ただし、英文のabstractについては一般ユーザーが使用する権利をフリーにしている(自由に使用してよい)ということである。
2) Cochrane database of Systematic review(CDSR)のcomplete分は全体ですでに1000件を超え、また、随時、改訂がされている。これらのabstractを経時的にすべて翻訳するのは大きな作業である。各国で当初、ボランティアスピリットで翻訳作業を進めたが、そのマネージメントは大変な作業であり、長続きしないのは世界的傾向である。
3) CDSR のabstractのうち、新規のもののみを“Gold Nuggets”としてThe Cochrane Library 2001 issue 2に対応するものから冊子として出版している。これの各国語の翻訳を薦めている。
4) Update Software社では、イタリア語版(Pfizer社がサポートしている。まだ公開されていない)、スペイン語版(Merck社がサポートしている。作業中)、中国語版の翻訳を承認している。スペイン語訳は当初、機械語翻訳を試したがものにならず、手作業にもどった。
5) The Cochrane Libraryのweb版では、CDSRのabstractについて、クリックすると各国語訳へリンクするシステムを計画中である。
6) CRGごとの翻訳希望にも応じている。
7) 各国の翻訳を行う協力者には、以下の内容を検討して、連絡していただきたい。
・ 翻訳作業の品質を保つため、品質管理の方法を使用すること。
・ 翻訳は継続することが重要であり、継続性を保証すること。
・ copy rightの管理を厳格に行うため、copy rightの管理方法を確定すること。
・ CRGなどのように、一部に限って翻訳する場合には、原語作成者(CRGなど)と交渉し、Update Software社に連絡すること。その後、その国・地域を担当するコクランセンターと連絡をとっていることを付記すること。日本では一部、coordinate機能をもつJANCOCということになる。


2.中国語訳の現状


 2001年12月28日(金)に中国・成都の中国コクランセンター(Chinese Cochrane Center: CCC)を訪問し、coordinationとdisseminationを担当しているMs. ZHANG Mingming(張鳴明)とmeetingをもち、以下のことが明らかになった。


1) The Cochrane Library 2000 issue 3までは、成都と広州を中心とした、主に臨床医約50人からなるメンバーによる翻訳を行っていた。CCCのwebで公開している。日本と同様に、翻訳者とチェッカーによって行っていたが、臨床医はメンバーの変更が多く、その都度教育が必要、またたやりとりなどのマネージメントの作業量が膨大となり、それ以降の作業をgive upした。
2) Update Software社のアドバイスも受け、Gold Nuggetsの訳を開始した。2001 issue 2(88件)とissue 3(60件)の翻訳は終わっている。これをあわせて本にする計画があり、北京の中国科学技術出版社と交渉中である。2002年の4月9-10日の成都でのSecond Asian-Pacific EBM Conferenceまでには出版させたいと思っている。
3)上記出版に経済的援助をしてもらえると助かる。
4) 翻訳とその利用にあたっては、同じ漢字文化圏ということ日中間で協力できることがあるかもしれない。
5) The Cochrane Libraryから周産期領域を pick upした WHO Reproduction Health Libraryの CD-ROMの訳については、現在、WHO協力センター(WHO Collaborating Center)ともなっている、上海市計画生育科学研究所が中心となって作業を進めている。


3.個々のCRGの日本語訳に対応するJANCOCの対応
 Update Software社の世界的対応などを受けて、日本においての現況と将来の可能性をかんがみ、以下のように対応する。
 日本で特定のCRGの翻訳を行おうとするもの(CRG翻訳者とする)は、以下のようにアクションをとることが望ましい。


1) CRG翻訳者はCRGとの交渉を行う。CRGを通じてUpdate Software社とのcopy rightを取り決める。
2) CRG翻訳者は、翻訳の品質管理、継続性、copy rightに留意する。CRG翻訳者は、独自にwebページを開設し、作成された日本語訳を公開する。
3) JANCOCホームページから上記にリンクを張るようにする。
4) 将来、なんらかの組織が日本語訳を一元的に作成・管理することがある場合に、これらCRG翻訳者の翻訳を採用するとは限らないことを了承いただきたい。
5) The Cochrane Library/CDSRのabstractの日本語訳に関しての基本方針は、 2000.12.31に、JANCOCのwebの「日本語版コクラン・レビュー抄録集」に、「福井直仁、廣瀬美智代、津谷喜一郎. The Cochrane Library / Cochrane Database of Systematic Review (CDSR)のabstractの日本語訳について」の、7.将来(future)として、述べられた通りである。 以下に再掲する。

「CDSRのabstract関連の日本語訳に関しては以下の5つが、安定したしかるべき主体によって一括して行われる、ないしコーディネートされるのが望ましい。すなわち、1) 翻訳作業とweb上の無料公開、2) 紙媒体での出版事業(全部/一部、図書/雑誌)、3) CDSR全体の日本語訳、4) これまでの素訳者/チェッカーの「権利」への対応、5)内容に対する質問への対応、である。」
 (http://cochrane.umin.ac.jp/JP/about_translation.html

 ご不明の点は、JANCOCホームページあてご質問ください。

以上