八重ゆかり　　

日時	2000年１月15日(土)12:00-12:45
場所	名古屋市立大学医学部研究棟 11階 講義室B
参加者	36名
司会・進行	津谷喜一郎 (JANCOC代表)
記録	八重ゆかり

JANCOCがスタートして約5年たったところで、一部5年間のまとめを含めて報告・討議された。

1. JANCOC-contact directoryとJANCOC mailing listについて

　JANCOC-contact directory (カタカナでメンバーリストと称している。以後J-CDと略)マスターファイル登録者とJANCOC mailing list (以後J-MLと略)の現状について報告された。

(1)公開の経緯


1995年12月JANCOC Web site開設(以後Webと略)
1997年2月NiftyServeのFDRUGにおいてJ-CD (87人)を公開
1998年3月Webに本人の同意をとった後、J-CD (77人)を公開
1998年8月J-ML (announceとdiscussion)を開設


(2)J-CDとJ-MLの参加者数の推移

　　

year	J-CD	J-ML	JANCOC会議 参加者
1994	20	0	13
1995	40	0	12
1996	80	0	26
1997	100	0	25
1998	222	205	20
1999	303	358	36

Fig. 1


　J-ML開設以来、急激に参加者数が増え、従来のJ-CDを上回っている。

(3)1999年12月26日現在におけるJ-CDでの登録状況
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　　J-CDマスターファイル登録者総数303人の内訳
　　　公開希望　　　　　　　　　　　　　　　258人
　　　非公開希望　　　　　　　　　　　　　　16人
　　　公開範囲未確認　　　　　　　　　　　　29人
　――――――――――――――――――――――――――――――


(4) J-CD参加者と J-ML参加者との関係


　J-CDマスターファイル登録者総数303人とJ-ML (announce）登録者総数358人とに共通して含まれるのは245人である。つまりJ-CDの81%とJ-MLの68%が共通である。

Fig. 2

　なお、1998年12月時点と比較すると、J-CDマスターファイル登録者総数は81人、J-ML登録者総数は153人増加している。


(5)現在のリストの一元化管理へ向けて


1) J-CDマスターファイル登録者303人のうちJ-ML (announce）に入っていない人58人には郵送ないしfaxで、JANCOC会議やワークショップなどの案内を送らざるを得ないため、事務作業がひどく煩雑となっており、実際には対応しきれない。
　一方ではインターネットを用いない人はこの際無視してもよいという考えもあるが、これまでの一種の既得権があるためそれなりの対応が必要。
　そこで、これらの人々にはJ-ML (announce）に入るように強く勧誘する。入らない人は、別管理のリストをつくり、JANCOCの人的リソースも考慮して情報を一定期間(1年)送り、その後中止する。


2) WebにあるJ-MLの入会案内に、関係者のお互いの連絡のためにJ-CD(Web公開用)への記載をお願いする文面を入れる。


3) J-ML (announce）にあって、J-CD (Web公開用) にない人113人には、J-CD(Web公開用)への記載を弱く勧める。

2. 1999年会計報告


　1999年1～12月 1年間の収支決算が報告された。

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1998年からの繰越し金	161,366円
1999年収入合計	380,163円
（内訳）第2回システマティックレビューワークショップ参加費	290,000円
第3回システマティックレビューワークショップ参加費	90,000円
普通預金利子	163円
1999年支出合計	145,659円
（内訳）第2回システマティックレビューワークショップ経費	56,584円
第3回システマティックレビューワークショップ経費	65,870円
コクランリーフレット3000部印刷代	23,205円

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1999年残高合計

395,870円

3. 組織体制


　1997年12月の第4回JANCOC会議で推薦承認されたものから変わってはいない。ただし、*に示すアドバイザーに異動があり後任に引継ぎを依頼中。


(1) 幹事


　・名簿管理及び会計担当
　　　八重ゆかり
　・JANCOCホームページ運営担当
　　　福井直仁
　・ワークショップ及びセミナー担当
　　 (津谷喜一郎)、(主)名郷直樹、(副)柳元和
　・ハンドサーチ及び翻訳関係担当
　　 (主)廣瀬美智代、(副)柳元和
　・日本のレビューアのコーディネイション担当
　　　柳元和

(2) アドバイザー10名（50音順）


　　岩尾聡一郎*（厚生省健康政策局 研究開発振興課長）
　　海老原格（日本RAD - AR協議会）
　　折笠秀樹（富山医科薬科大学）
　　楠 正（日本薬剤疫学研究会）
　　清水直容（帝京大学医学部名誉教授）
　　野島豊（Japanese Association of Medical Doctors
　　　　　　　　　in Drug Industries: JAMDI）
　　浜六郎（Japan Institute of Pharmacovigilance: JIP）
　　久繁哲徳（徳島大学医学部 公衆衛生学）
　　福井次矢（京都大学医学部 総合診療部）
　　別府宏圀（The Informed Prescriber: TIP）


4. JANCOCの過去の主な活動と今後の将来計画


(1) 啓発・教育活動

　コクラン共同計画はEBMを知っている人に少なくとも名前だけは知られているが、内容はまだ十分には浸透していない。以下のような啓発・教育活動を行った。

＜Input＞

1) 紹介論文・リーフレットなど
　・リーフレット「コクラン共同計画」(桜色) 3,000部
　・雑誌「薬の知識」50(8,9,10),1999を合せた別刷:「コクラン共同計画とは何か？」500部
2) 講演
3) 関連図書の出版
4) Contact directoryの管理
5) Mailing listの運営・管理
6) Homepageの運営・管理

　従来のサーバーにY2K問題が発生したのを機に、サーバーのhomepageの移行を予定している。経費、必要書類、その他の機能などを考慮し、UMINにする予定。無料。mailing listも可能、などのインフラがそろっている。

＜Outcome＞

1) 行政サイド: 厚生省健康政策局研究開発振興課管轄の「医療技術評価推進検討会」報告書(1999.3.23)などに「コクラン共同計画」がとりあげられるようになった。
2) 医療従事者サイド: 認識はある程度
3) Industryサイド: 認識なお低い
4) 消費者サイド: 認識なお低い

(2)コクラン共同計画のoutcomeであるThe Cochrane Library の使用の促進

1)　数え方の単位は多様だが日本では全体で約500 set使用されている。
　・南江堂からのCD-ROMが約300 set。Internet版も含む。
　・他にUpdate Software社へ直接注文による購入、Ovid/ユサコのEBMRとして使用
　　(IntranetとInternet版）をあわせて約200 setと推定される。


2) CDSR abstractの日本語訳作業


　レビュー・アブストラクトの翻訳件数は世界では日本が最も多い。日本での多様なユーザーを考えると訳は必要。

　Translation of CDSR abstract as of October 1999
――――――――――――――――――――――――――
French	9
German	60
Italian	30
Japanese	466
Portuguese	12
Russian	0
Spanish	25
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　レビュー・アブストラクトの新規と改訂のものについて、担当幹事の福井が差分の抽出とその印刷体とFDの作成、ボランティア翻訳者への振り分け、また郵送による翻訳依頼と回収などを行ってきた。対外的な交渉や訳語の統一のための調整作業などは廣瀬が担当してきた。新規レビュー数の増加とともに、レビューの様式変更による改訂版の急増で作業量が著しく増加してきた。
　今後、CRG (1999 issue 4では47グループ)ごとの翻訳担当コーディネータボランティアを募集したいと考えている。その呼びかけをJ-MLで行う予定であるので応募をお願いしたい。

(3)コクラン共同計画へのfeeding


＜Input＞


i) 発足以来過去5年間にJANCOCが主催/共催したワークショップ等
　　Systematic Review (SR) workshop　　　　1995, 1999×2
　　Hand Search (HS) workshop　　　　　　　1996
　　EBM seminar　　　　　　　　　　　　　　1997, 1998, 2000(予定)


ii) 1999年にJANCOCが主催したワークショップ
　　1999.2.6 (土) 東京医科歯科大学
　　　第2回システマティック・レビュー ワークショップ
　　　　―○○でもわかるメタアナリシス―
　　　参加者40人


　　1999.9.18 (土) 名古屋大学
　　　第3回システマティック・レビュー ワークショップ
　　　　―コクランレビューのプロトコルの書き方―
　　　参加者16人


iii) 1999年にJANCOCが共催/協力したワークショップ等
　　1999.3.23 (火)-25 (木) 東京・国際医療福祉総合研究所
　　　EBM リサーチライブラリアンワークショップ
　　　主催:「EBMを支えるリサーチ･ライブラリアン養成についての調査研究」班
　　　協力: JANCOC


　　1999.8.27 (金)-29 (日) 大津・大塚比叡山荘
　　　第2回P-drug ワークショップ
　　　主催: P-drug ネットワーク(P-NET-J)
　　　後援: JANCOC


　　1999.10.2 (土)-3 (日) 大阪大学
　　　第2回医薬ビジランスセミナー
　　　主催: TIP、JIP
　　　共催: JANCOC


＜Outcome＞
i) The Cochrane LibraryのCDSRで、日本人が関与するシステマティックレビューは、
　 1999年issue 4でレビュー5、プロトコル4の計9つである。
ii) Field、MWG、Consumer Networkへの関与などはそれぞれ数名
iii) ハンドサーチ(HS)は14誌進行中である。


　　　　日本発行handsearch対象誌 (as of 31 December 1999)


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Medline/Embase収録誌	Medline/Embase非収録誌
In Japanese (6)	In Japanese (5)
感染症学雑誌	呼吸と循環
癌と化学療法	全日本鍼灸学会雑誌
日本外科学会雑誌	日本化学療法学会雑誌
日本胸部疾患学会雑誌	日本東洋医学雑誌
脳神経外科	臨床評価
脳と神経
In English (2)	In English (1)
Bulletin of Tokyo Med. And Dent. Univ.	Japanese Journal of Primary Care
Japanese Journal of Cancer Research

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iv) DAREやMETA (Medical Editors Trial Amnesty) への関与
　　現在なし。


＜評価＞

　SRへの日本人の関与は、これまでむしろ海外との直接のコンタクトで始まった例が多い。ただし、SRの基本を日本で教育する意味は将来への投資としてなお高い。
　HSへの日本人の関与は、「リサーチライブラリアン養成についての調査研究」がインパクトを持ち始めている。

(4)他の機関・プロジェクトなどとの関係

1) 医薬品・治療研究会 (The Informed Prescriber: TIP)
2) 医薬ビジランスセンター (Japan Institute of Pharmacovigilance: JIP)
3) 学会・研究会

・ 第14回高度先進医療研究会 (1999.2.26)、第19回医療情報学連合大会 (1999.11.25)、第20回日本学術会議薬理研連シンポジウム (1999.12.2)、などにて紹介と討論

4) 行政

・医療技術評価推進検討会 (1998.12.16) にてコクラン共同計画の紹介

5) 企業

・ いくつかの企業で、コクラン共同計画、とくにパブリケイションバイアスの問題とその解決法について紹介。

6) 関連プロジェクト

・医薬品の適応外使用に関するエビデンス
　(平成9年度 難治疾患・稀少疾患に対する医薬品の適応外使用のエビデンスに関する調査研究。平成10年度以後はヒューマンサイエンス (HS) 財団にひきつづき続行中)


・リサーチライブラリアン養成のための教育プログラム開発
　(平成10年度、11年度厚生科学研究)
・日本のRCTのCENTRALへの登録
・科学技術振興事業団(Japan Science and Technology Corporation: JST)との協力関係の樹立


他に関連するプロジェクトなどご存知の方おられたら連絡してください。


5. コクランセンター設立の件


　コクラン共同計画のWebやThe Cochrane Libraryなどから収集した情報をもとに、以下が紹介された。


(1) The Cochrane Collaborationの機構


Steering Committee、Cochrane Center、Collaborative Review Group (CRG)、Field、Methods Working Group (MWG)、Consumer Networkの関係と各役割


(2)海外の各センターの、組織と業務、予算規模、管轄しているレビュー数など


(3)Cochrane CenterはThe Cochrane CollaborationのSteering Committeeの承認が必要。このため日本コクランオフィス(JCO、仮称)などの前駆体をまず作る。


6. 参加者からの意見、質問等


1) 参加者からの意見

・今後活動の発展をはかるためには組織としての基盤を固める必要がある。また会員への情報提供を確実にするという点においては、これまでのホームページやMLのような電子媒体だけでの情報交換では限界がある。もしJANCOCとは別に組織としてかっちりしたものをつくるならば、JANCOCがそれを生むための助産婦役を担うべきではないか。

・国内でコクランに関係した活動をした人々が集まって、年間活動報告を行う必要性がある。ハンドサーチ、レビューアブストラクトの翻訳は、今後作業量が増加していくことが予想されるので、人材の確保や作業の進め方についてよく検討していかなければならないだろう。また、日本でシステマティックレビューに関わったレビューアが集まって、国内でのレビューがどのように進行しているかを話し合う機会を作ることも必要である。

・日本コクランセンター (JCC) または日本コクランオフィス(JCO)のようなかっちりした組織、またその前身としてのNPOを設立する手続きにおいてはコクラン共同計画の基本である民主性と透明性を大切にしてほしい。そのためにはJANCOC全体会議のようなものを、十分な時間をとり、かつなるべく早い時期に実現してほしい。


2) 確認事項

・会計報告に関連して、会費制の導入と会報誌発行予定の有無について質問があり、いずれも予定していないことを津谷代表が答えた。

・雑誌「薬の知識」別冊: 「コクラン共同計画とは何か？」の中にコクランライブラリの使い方が掲載されているが、これをホームページに載せたらよいのではないかとの意見が出され、版権についてライフサイエンス出版との交渉を検討することとなった。

・JCCまたはJCOのような組織を作るための原案づくりを考えているかという質問に対しては、1つのオプションとしてNPOの設立を考えており、その定款と設立趣意書の案を準備中である旨、津谷代表が答えた。

・将来JCCに移行することを目指したNPOの定款と設立趣意書作成という任務は、現在のJANCOC幹事の任務としては規定されていないのではないかとの問いに関して、規定なるものはもともとないのであるから、そうであると津谷代表が答えた。

・JANCOCの組織形態のあり方が不明という質問に対して、お互いに顔の見知った人同士のゆるやかな人的つながりから、mailing listを中心とした情報のネットワークに移行しつつあると考えており、将来できるJCC/JCOとは別の存在であろうと津谷代表が答えた。

・そのようなNPO設立準備にあたっては、JANCOCメンバーおよびアドバイザー、コクラン共同計画に関わってきた日本人レビューア、EBMセミナーに関わって来た人々などに設立準備への参加を呼びかけるべきではないかとの意見が出されたため、2000年中に開催される次回JANCOC会議において議論することとなった。

以上