遅発性ジスキネジア:メジャートランキライザーの減量もしくは中止と,遅発性ジスキネジアの特定の治療としてのメジャートランキライザー

Tardive dyskinesia: neuroleptic reduction and/or cessation and neuroleptics as specific treatments for tardive dyskinesia

McGrath JJ, Soares KVS

最終更新日:25/02/1998


目的:精神分裂病(あるいは他の慢性精神病)でかつ遅発性ジスキネジア(TD)の患者で,メジャートランキライザーの減量や中止が遅発性ジスキネジアの症状の軽減に関係しているかどうかを,判定すること.二次的な目的は,類似したグループの人に対して,特定のメジャートランキライザーの使用が,すでに発症した遅発性ジスキネジアの治療となるかどうかを判定することである.

検索方法:研究は,電子的な検索(Biological Abstracts,コクラン精神分裂病グループの臨床試験データベース,EMBASE,LILACS,MEDLINE,PsycLIT,SCISEARCH),全ての同定された研究の参考文献のハンドサーチ,包含された臨床試験の第1著者と連絡をとることによって同定された.

選択基準:精神分裂病やその他慢性精神病でかつ,すでに発症した遅発性ジスキネジアの患者において,メジャートランキライザーによる遅発性ジスキネジアの治療を評価し,以下のいずれかにランダムに割付けした報告を包含した.

a.)メジャートランキライザーの中止(プラセボか介入なし)とメジャートランキライザーの持続の対比

b.)メジャートランキライザーの減量(断続的投与ストラテジーを含む)とメジャートランキライザーの持続の対比

c.)遅発性ジスキネジアの治療のための特定のメジャートランキライザーと,プラセボ又は介入なしの対比

データ収集と解析:レビュアーは,それぞれ独立にデータを抽出し,オッズ比(95%信頼区間)や平均差(95%信頼区間)を評価した.レビュアーは,脱落者は改善していないものと想定した.

主な結果:二つの臨床試験がこのレビューに含まれた.62の試験が除外され,16は評価待ちである.7の試験は,まだ分類が決まっていない.ランダム化比較試験によるデータの中に,遅発性ジスキネジアの治療のためのメジャートランキライザーの役割を明らかにするものはなかった.これは,クロザピンを含む非定型メジャートランキライザーを含んでいる.メジャートランキライザーの中止がしばしば第一に勧められているにも関らず,ランダム化比較試験によるデータで,これを支持するものはなかった.二つの研究(Cookson 1987, Kane 1983)では,メジャートランキライザーの減量と関係して遅発性ジスキネジアの症状軽減がみられた.

結論:メジャートランキライザーを減量した際,再発の危険性が増大するという多くの証拠とともに,遅発性ジスキネジアの治療としてメジャートランキライザーを中止することの有効性を支持する証拠がないことから,このような遅発性ジスキネジアの治療は危険であると思われる.減量は,メジャートランキライザーの通常量の使用と比較して,遅発性ジスキネジアの治療に何かの利点があるかもしれない.クロザピンや非定型メジャートランキライザーによる遅発性ジスキネジアの治療の有効性を評価する必要がある.


Citation: McGrath JJ, Soares KVS. Tardive dyskinesia: neuroleptic reduction and/or cessation and neuroleptics as specific treatments for tardive dyskinesia. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.


(日本語翻訳:野崎香織/古川壽亮)