目的:急性虚血性脳卒中の治療における血液希釈の有効性と有害になりうる影響を推定する.検索方法:コクラン脳卒中レビューグループ検索方法に加えて付加的MEDLINE検索と個人的に研究者と連絡をとった.
選択基準:”虚血性”脳卒中発作から72時間以内に始める血液希釈治療の,公表されたものと未公表のもの,すべてのランダム化試験である.
データ収集と解析:アウトカムは経過観察の早い時期(発作後7-28日)と,経過観察の遅い時期(発作後3-6ヶ月)に記録される.致死率と施設での治療を受けていたり日常生活の活動を他人に頼っている患者の割合を抽出した.静脈性血栓塞栓症の臨床的徴候も,心血管性有害効果になりうるものまたアナフィラキシー反応として抽出した.
主な結果:血液希釈の15の完了した臨床試験(8つは静脈切断面の結合と血漿増量剤の投与を使って,7つは血漿増量剤のみを使っている)が含まれる.これらの臨床試験は,あらゆるタイプの血液希釈療法をランダム化した患者1131例と1137例のランダム化比較対照群とが含まれる.2つの試験は交絡があり,すなわち他の治療方針と血液希釈の組み合わせが試された.11の試験では,血漿増量剤としてデキストラン40が使われ,3つの試験はヒドロキシエチルでんぷん,1つの試験はアルブミンが使われた.10の試験が盲検法により行われたが,5つのしけんでは盲検性を保てなかった.5つの試験は,CTスキャンが行われていないので,おそらく脳内出血の患者もいくらか含まれている.治療した患者と比較対照群との間で,血液希釈の明らかになった影響,有利か有害かの公式の統計学的分析は失敗した.だから,早期の致死率(オッズ比 1.14; 95%信頼区間 0.89-1.46),後期の致死率(オッズ比 1.04; 95% 信頼区間 0.86-1.26),また機能的アウトカム(’死亡または依存/施設に入っている’アウトカムについてオッズ比 1.03; 95% 信頼区間 0.87-1.22)のどちらも,血液希釈グループで減少していない.感受性のいい分析は血液希釈療法が混乱しているかまたはしていないかどうかに基づいており,循環血液過多症もまた同様の結果が得られる.ヒドロキシエチルでんぷんとアルブミンの支持の違いを検出するには統計的力は弱いが,血液希釈を達成するためにいくつかのタイプの血漿増量剤(デキストラン,ヒドロキシエチルでんぷん,またはアルブミン)を使うことに効果がないことが実証された.系統的方法での静脈性血栓塞栓症を報告した試験はほとんどない.しかし,報告された5つの試験全体の分析で,脳卒中後の深部静脈性血栓症と/または肺塞栓症の減少が示唆された.(3-6ヶ月経過観察したとき オッズ比 0.54; 95% 信頼区間 0.30-0.99).治療患者の中でより多くの他の循環器症状の弱い傾向が見られた.(オッズ比 1.41; 95% 信頼区間 0.72-2.75)
結論:このレビューで示したような,意図的血液希釈の,急性”虚血性”脳卒中の患者に対する効果は実証されなかった.静脈性血栓塞栓症の危険性は血液希釈によっておそらく減少する.この事は急性虚血性脳卒中に一般的に血液希釈を使用することを勧めるには不十分である.血液希釈の新しいモデルの効果が,実験的脳卒中モデルにおいてよく実証されたときに限って,さらに進んだ臨床試験が許される.
Citation: Asplund K, Israelsson K, Schampi I. Haemodilution in acute ischaemic stroke. In: The Cochrane Library, Issue 1, 1999, Oxford: Update Software.
(日本語翻訳:大西優里/三瀬順一,中村英治)