本文:
Sorry! Only in Japanese.


見だし:MGHは全国で3位.
毎年,U.S. News & World Report 誌が,アメリカの病院のランクを発表しています.
今年(1999年)は7月半ばに発表がありました.内容は,「専門分野の領域で2σ以上離れて優れているという領域の数が多い」というようなことで決めるようです.
今年の順位は,1位ジョンスホプキンス,2位メイヨクリニックで,3位のMGHまで昨年と同じでした.
参考のためにランクの発表されている13位までを掲載します.
1. ジョンスホプキンス, ボルティモア
2. メイヨクリニック, ミネソタ州ロチェスター
3. MGH, ボストン
4. クリーブランドクリニック
5. デューク大学病院
6. UCLA病院
7. バーンズ-ジューイッシュ病院,セントルイス
8. ブリガム病院(Brigham & Women's), ボストン
9. ミシガン大学病院, アナーバー
10. ペンシルバニア大学,フィラデルフィア
11. プレスビテリアン病院, ニューヨーク
12. ピッツバーグ大学プレスビテリアン病院
13. シカゴ大学病院
この他に,専門毎のランクも載っており,
MGHは精神科で1位,循環器(循環器外科を含む)で3位となっており,
その他系12の専門でランクに入っています.

◎紹介:帝王切開 "c:\data\mgh\csec909j.txt"
[見だし] 帝王切開を減らす方針に反対:MGHの産科医が提唱
[ポイント] 帝王切開を減らそうという国の方針は,経済的理由が先行していて,健康の問題を副次的に考えている.
論理とデータに基づくべきである.たとえば一律に減らすのではなくて,患者の条件によって方針を組み合わせるべきで,
前回帝王切開を受けた患者に経腟分娩を強力に推し進めるのは危険だ.
[内容]
1) ハーバード系産科医4名が共同声明の形で発表したもの.
2) アメリカ連邦政府は「2000年の健康プロジェクト」と称して,帝王切開率を現行の22%から15%まで下げることを提唱している.
しかし,この提唱は根拠薄弱である.
3) 「そもそもこういう言い方自体が"a paternalistic approach "で,もう医療の領域では時代遅れとされている」
4) 「そんな昔風なやり方ではなくて,患者--この場合は母体と新生児--の健康と,それにC/B(費用と便益)をしっかり解析すべきだ」
5) 「最近子宮破裂の発生率が増加している.
一つの要因は,すでに一度帝王切開を受けている患者が次の分娩で経腟法で無理をするからだとうと推測する根拠がある.」
6) 「それにvacuum-assisted delivery (「吸引分娩術」産道に出てきた胎児の頭に吸盤を貼りつけて引き出す分娩法.
鉗子分娩の代わりに頻用される)も,鉗子よりは安全だが所詮無理な分娩法だからそれなりの危険は伴う.」
7) 「帝王切開を減らそうというのは,保険会社の謀略だ.現行の方針が続けば,帝王切開率の高い産科医の診察は受けないように,
という圧力が増して医療が歪められる危険が高い」
8) 「むしろ,帝王切開の必要な条件ーー児頭骨盤不適合,骨盤位胎位( breech presentation),切迫仮死の三つーーの診断力を挙げ,
『何でも帝王切開』を避けるよう努力すべきだ」というのが主張のポイントである.
[参考の論文] Sachs BP, Koblin C, Castro MA, Frigoletto F. The risks of lowering the cesarean-delivery rate. N Engl J Med. 1999;340:54-7.
[蛇足] 幸か不幸か,日本の帝王切開率は多分この15%には達せずもっと低いレベルである.
[紹介者] 諏訪邦夫


紹介:人工呼吸
[見だし] 人工呼吸法の確認研究を中断.新法が有効と証明できたので研究継続は不要
[ポイント] ARDS( Acute respiratory distress syndrome : 呼吸窮迫症候群)の治療に,一回換気量を極端に下げた新しい人工呼吸のやり方を使うと死亡率が25%以上下がる.
[内容]
1) これはMGHの研究ではなくて,アメリカ全土の多施設共同研究で,MGHはコーディネーターの役割を果たしている.基本は,NIHの新聞発表である.
2) ARDSは現時点で年間発生が15万例で,死亡率は40%.根本治療はない.人工呼吸は支持治療だが有効性は高い.
3) その人工呼吸で,従来は一回換気量を比較的大きく維持するのが標準であったが,もっと下げるほうがいいということになった.
4) 今回の研究では,一回換気量を12 ml/kgの従来レベルと「低換気法」(一回換気量6 ml/kg)とを比較した.
5) 「低換気法」では二酸化炭素のレベルが高くなってしまう危険があるのが欠点だが,その代わりに従来法の欠点であった「肺の過膨張による損傷」が防げる.
6) 今回の臨床研究は24の病院が参加し,1999年終わりまで続けて1000例のARDSのコントロール臨床試験を予定したが,
800例の時点で結論が出たので1999年2月一杯で中止.
7) 広い範囲のARDSを対象とし,有効であったパラメーターとしては
死亡率の他に,ICU滞在期間短縮・人工呼吸からの離脱成功率・多臓器障害のない日数・気胸と気縦隔の発生率・PaO2/Fi02<200などであった.
[インターネットアドレス] http://hedwig.mgh.harvard.edu/ardsnet.と
http://www.nhlbi.nih.gov
[参考の論文] この研究自体は,上記のインターネットアドレスで読める以外に,1999年4月のアメリカ胸部疾患学会(サンディエゴ)で発表になったが
論文にはなっていない.既発表の論文として入手しやすいのは,
Hickling KG. Low mortality rate in adult respiratory distress syndrome using lowvolume, pressure-limited ventilation with permissive hypercapnia. Crit Care Med. 22:1568-1578,1994.
[蛇足] 「ARDSのPermissive Hypercapnia 式人工呼吸 (換気量を下げる代わりに二酸化炭素レベルが高くなるのを許容する方針)」として,考え方の基礎は10年以上前からHickling 氏らが主張してきた.
[紹介者] 諏訪邦夫

紹介:乳がん検診

[見だし]乳がん検診は毎年必要:コンピュータモデルで提唱
[ポイント]乳がんによる死亡を防ぐには検診の頻度が重大な要素であることをコンピュータモデルで証明した.
[内容]
1) 提唱者はMGHガンセンターのJames Michaelson理博と,放射線部のHalpern理博と Kopans 理博.
2) 現在のように数年に一度でなくてもっと高頻度に検診を受ければ,乳がんは早期に検出されて,局所治療と放射線治療で完治するはずだ.
3) 「現在の検診法は非常に強力で,極端に早期のものまで検出できる.乳がん治療で成績を上げる制限要因はもはや診断や治療ではなくて,患者側が検診を受けることにある」との主張である.
4) 「現在,医師側は1年に1回を薦めているが,患者のほうは平均で1年半で,もっと間を空けているものも多いのが現実」である.
5) 「特に病気でないのにわざわざガンの検診を受けるのがうっとうしいのは理解できるが.」
6) 「しかし,乳がんに関する限り,一日延ばしにしていけない.モデルをどう解析しても検診間隔は1年が望ましい.」
7) 「確実に1年間隔にすれば,死亡率は50%以上低下する.もし年2回にできたら80%以上低下するとモデルは予測する.」
8)
[インターネットアドレス]
[参考の論文] Michaelson JS, Halpern E, Kopans DB.
Breast cancer: computer simulation method for estimating optimal intervals for screening. Radiology 1999;212:551-60.
[蛇足]そりゃまあそうだろうが.現在の「平均1年半」はずいぶん上出来の印象でもある.
[紹介者]諏訪邦夫
◎紹介:移植:double transplant
[見だし] 腎と骨髄の同時移植で免疫抑制薬が不要になった
[ポイント] 臓器移植は現代医学の成果だが,免疫抑制薬の副作用が強いのが欠点の一つだった.
今回,MGHではたった一人の患者ではあるが,薬物を使うのとはまったく別の方法で免疫抑制を実現することに成功した.
[内容]
1) 多発骨髄腫 multiple myleoma で腎不全になった女性患者に,1998年9月に妹をドナーとして腎と骨髄とを同時移植した.
2) 患者とドナーの妹との免疫上のキメラを作って,GVHD(graft-versus-host disease)を防ぐことを予め狙った移植である.
3) 「結果は予想以上に有効だったので,血縁者以外の移植にも有効かも知れない.」(Benedict Cosimi, MD, MGH Transplantation Unit 主任の談)
4) 多発骨髄腫は骨髄のガンで,異常形質細胞が増殖し,赤血球と血小板が減少し,身体各所に腫瘍を生じる.
骨髄移植は治療として試みられてきたが,GVHDが強すぎたり,化学療法や放射線治療の合併症が強いことがネックになっている.
5) 今回の治療法は,化学療法は控え目にして,T細胞抗体を組み合わせた.T細胞は移植組織に攻撃を加えることがわかっているからである.
この「化学療法+T細胞抗体」でキメラができて患者とドナーが融合するので,移植骨髄が患者を攻撃するGVHD 反応が弱まり,しかもガン組織への攻撃は減少しない.
6) 患者のキメラ性を確保すべく,術後さらに何回かドナーの白血球を集めて輸血する.
7) この方法は,MGHのTBRC( Transplantation Biology Research Center )が数年にわたって研究してきたものだが,
この患者の場合は丁度これしかない状態だったので応用した.(多発骨髄腫のために通常の腎移植はダメで,腎不全のために骨髄移植はダメという状態)
[インターネットアドレス]
[参考の論文] Spitzer TR, Delmonico F, Tolkoff-Rubin N, McAfee S, Sackstein R, Saidman S, Colby C, Sykes M, Sachs DH, Cosimi AB.
Combined histocompatibility leukocyte antigen-matched donor bone marrow and renal transplantation for multiple myeloma with end stage renal disease: the induction of allograft tolerance through mixed lymphohematopoietic chimerism. Transplantation 1999;68:480-4.
他に同じグループから関連テーマで, Sykes M et al. Mixed lymphohaemopoietic chimerism and ----.Lancet 1999;353(9166):1755-9.
[蛇足]大筋ははずしていないと思うが,本当に正しく理解できているか自信がない.
[紹介者] 諏訪邦夫


◎紹介:エンドスタチン
[見だし]エンドスタチンの臨床試験に参加
[ポイント]エンドスタチンは血管増殖を抑える物質で,「ガン組織への栄養供給を絶つことによってガンの増殖を抑える」という,
これまでとは一味異なるガン治療のアプローチの決め手として注目されている.
動物実験のレベルではもう何年も研究されており,ごく少数の臨床トライアルも報告されている.
今回,正規の臨床試験の第1相が始まるので,MGHもこれに参加することになった.
[内容]1) 1999年9月28日に正式に開始した.
2) 研究の責任者は Donald Kufe, M.D.
3) 担当施設はMGH以外に,Dana-Farber ガン研究所, Brigham & Women 病院, Beth Israel Deaconess MCなど(以上はボストン周辺).
他にテキサスのMD Anderson 病院とウィスコンシン大学など.
4) ボストン周辺で15例〜30例程度の治験を予定.個々の患者で数ヶ月の予定なので全体での予定は1年程度.
5) 患者が治験に参加する条件は,年齢18歳以上で,固形ガン(白血病,リンパ腫,多発骨髄腫,脳腫瘍は除く)のこと,他の治療が無効なこと.
6) 前項のように,記事自体は患者への呼びかけのニュアンスも強い.
[インターネットアドレス]この件に関する情報のウェブは,www.cancer.mgh.harvard.eduかwww.dana-farber.net/endostatin
[参考の論文] Chen C, Parangi S, Tolentino MJ, Folkman J. A strategy to discover circulating angiogenesis inhibitors generated by human tumors. Cancer Res. 1995; 55: 4230-4233.
Kenyon BM, Voest EE, Chen CC, Flynn E, Folkman J, D'Amato RJ. A model of angiogenesis in the mouse cornea. Invest Ophthalmol Vis Sci. 1996: 37: 1625-32.
[蛇足]基礎研究側の推進者のJudah Folkman 氏は,MGHの外科レジデント→チーフレジデントの経歴を持ち,
ボストンの小児病院の小児外科のチーフをしばらく勤めた後に基礎科学に転じたという経歴の持ち主.
エンドスタチンは彼のグループの発見になるポリペプタイドで,コラーゲンXVIIIから自然に発生するフラグメントと書いてある.
EntreMed, Inc.という会社が製造を担当している.所在はRockville, Maryland.
[紹介者]諏訪邦夫,[参考の論文]以降はMGHのホームページの外である.