■がん転移Q&A - 回答
Q6 転移をしやすい臓器があるのですか?それはがんによって違うのですか?

A 中森 正二
(国立病院機構 大阪医療センター 統括診療部・部長)
 がんの種類によって特徴的な転移臓器のパターンがあります(転移の臓器特異性)。なぜ特定のがん細胞が特定の組織に転移しやすいかというと主に二つの原因があるようです。一つは、がん細胞を運ぶ血流やリンパ流などの血管やリンパ管の解剖学的特徴に沿った機械的な動きによるものです。もう一つは、がん細胞が流れ着いた先の臓器において増殖しやすいかそうでないかによるものです。実際には、この2つの原因が複雑に絡み合っているようです。
 前者の解剖学的特徴に沿った機械的な動きによる転移の代表例は、大腸がんにおける肝転移です。大腸から流れ出る血液はまずに肝臓へと流れ、そのために、大腸がんでは肝転移が多くみられます。
 しかし、同じ消化器がんである胃がんでは、肝転移は高率ではなく、腹膜への転移がしばしば見られます。一方、大腸がんでは、腹膜に直接がん細胞が接触しても腹膜へはあまり転移しません。このように、がん細胞には、行った先で増殖しやすい場合とそうでない場合があるようです。これは、植物の種をいろいろな場所に蒔くと、それに適した土壌でのみ発育、成長するということと似ています。このような考え方を「seed and soil theory(種と土壌説)」といいます。そのような例として、前立腺がんや乳がんにおける骨転移があげられます。