調和平均
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【調和平均とは】
調和平均(harmonic mean)とは、逆数の算術平均の逆数で、「速度」や「率」の計算に威力を発揮します。
式は
\[\displaystyle H = \frac{n}{\frac{1}{a_1} + \frac{1}{a_2} + \frac{1}{a_3} + \dots + \frac{1}{a_n}} \]
ですが、いきなりでは難しいので、解説すると数値
\[ a_1, a_2, a_3,\dots, a_n \]
の逆数
\[\displaystyle \frac{1}{a_1}, \frac{1}{a_2}, \frac{1}{a_3},\dots, \frac{1}{a_n} \]
算術平均
\[\displaystyle \cfrac{\frac{1}{a_1} + \frac{1}{a_2} + \frac{1}{a_3} + \dots + \frac{1}{a_n}}{n} \]
の逆数
\[\displaystyle H = \frac{n}{\frac{1}{a_1} + \frac{1}{a_2} + \frac{1}{a_3} + \dots + \frac{1}{a_n}} \]
で、初めの式となります。
調和平均が力を発揮する例として、
「ある部屋の壁を塗るときに、Aグループの4人では72分かかり、Bグループの4人では24分かかる。このときAグループの半分(2人)とBグループの半分(2人)が作業すると壁を塗り終わるまで何分かかるか」
という問題が挙げられます(72分と24分の算術平均の48分ではありません)。
この場合、Aグループの一人当たりの1分間に壁を塗る割合は
\[\displaystyle \frac{1}{72 \times 4} = 0.00347222\dots \]
Bグループの一人当たりの1分間に壁を塗る割合は
\[\displaystyle \frac{1}{24 \times 4} = 0.01041666\dots \]

となります。このうちそれぞれ2人づつが作業をするので、作業にかかる時間をx分とすると方程式
\[\displaystyle 1 = 0.00347222\dots \times 2 \times x + 0.01041666\dots \times 2 \times x \\ x = \frac{1}{0.00347222\dots \times 2 + 0.01041666\dots \times 2}\\ x = \frac{1}{0.02777\dots}\\ x = 36 (分) \]
となります。方程式を立てて計算できますが、答えを得るまでに、結構時間がかかります。しかし調和平均を用いるとa1 = 72 (分)、a2 = 24 (分)、n = 2 ですので
\[\displaystyle \frac{2}{\frac{1}{72} + \frac{1}{24}}=\frac{2}{\frac{1}{72} + \frac{3}{72}}=\frac{2}{\frac{1 + 3}{72}}=\frac{2 \times 72}{1 + 3}=\frac{144}{4}= 36 (分) \]
と一つの式で比較的簡単に算出することができます。
Excelでも「HARMEAN」関数を使用すると簡単に算出できます。

【重み付き調和平均】
重み付き調和平均(weighted harmonic mean)とは、各要素の重みを考慮した調和平均で、各数値anの重みをwnとすると。式は
\[\displaystyle H = \cfrac{w_1 + w_2 + w_3 + \dots + w_n}{(\cfrac{w_1}{a_1} + \cfrac{w_2}{a_2} + \cfrac{w_3}{a_3} + \dots + \cfrac{w_n}{a_n})} \]
です。
「要素の重み付け」とはわかりにく表現ですが、先ほどの例題を少し変えた問題で考えていただくとわかりやすいと思います。
「ある部屋の壁を塗るときに、Aグループの4人では72分かかり、Bグループの4人では24分かかる(ここまでは同じです)。このときAグループの3/4(3人)とBグループの1/4(1人)が作業すると壁を塗り終わるまで何分かかるか」
と言う問題の場合「Aグループの3/4(=0.75)」や「Bグループの1/4(=0.25)」が重みになります。したがって、重み付け調和平均を用いて計算すると \[\displaystyle \cfrac{0.75 + 0.25}{(\cfrac{0.75}{72} + \cfrac{0.25}{24})}\\ =\frac{1}{\cfrac{0.75 \times 2}{72 \times 2} + \cfrac{0.25 \times 6}{24 \times 6}}\\ =\frac{1}{\cfrac{1.5 + 1.5}{144}}\\ =\frac{1 \times 144}{3} \\ = 48 (分) \]
となります。

【交差試験と重み付け調和平均】
交差試験に於いて、因子欠損の場合の混合後の凝固時間を重み付き調和平均を用いることで予測することができます。例えば患者血漿APTTが72秒、正常血漿APTTが24秒の場合、患者血漿:正常血漿を3:1の比で混合した場合の予測APTTは \[\displaystyle 予測APTT=\cfrac{患者血漿比率 + 正常血漿比率}{\frac{患者血漿比率}{患者血漿APTT} + \frac{正常血漿比率}{正常血漿APTT}}\\\]
例えば患者血漿APTTが72秒、正常血漿APTTが24秒の場合、患者血漿:正常血漿を3:1の比で混合した場合の予測APTTは \[\displaystyle  \cfrac{3 + 1}{(\cfrac{3}{72} + \cfrac{1}{24})}\\ =\frac{4}{\cfrac{3 \times 2}{72 \times 2} + \cfrac{1 \times 6}{24 \times 6}}\\ =\frac{4}{\cfrac{6 + 6}{144}}\\ =\frac{4 \times 144}{12} \\ = 48 (秒) \]
となります。実測値が48秒より短い場合は補正されていると判断します(実際には2 %の誤差まで許容しており、48.96秒より短い場合に補正されている、48.96秒より長い場合には補正されていないと判断しています)