Glycoprotein Ib/IX/V複合体 (GPIb/IX/V複合体)
【Glycoprotein Ib/IX/V複合体 (GPIb/IX/V複合体) とは】
GPIb/IX/V複合体は、血小板膜蛋白の一つで、フォンビルブランド因子との結合に重要な役割を果たしています。
血管が外傷や血管内皮細胞傷害などを受けると、コラーゲンなどの結合織が露出します。この内皮下結合組織にフォンビルブランド因子が結合すると、血流によって流血中では球状であったフォンビルブランド因子は伸展し直鎖状になります。その結果、流血中で球状であり内部に隠れていたフォンビルブランド因子のGPIbとの結合部位が表に露出されます。この露出した結合部位にGPIb/IX/V複合体を介して血小板は結合します。フォンビルブランド因子に対する血小板の受容体としてはGPIIb/IIIaも存在しますが、GPIIb/IIIaは活性化されていない血小板表面状ではbent formと言われるフォンビルブランド因子と結合しにくい形で存在しています。このため、血小板とフォンビルブランド因子との結合の初期(いわゆる粘着反応)においてGPIb/IX/V複合体は重要な役割を果たしています。
血小板はGPIb/IX/V複合体を介してフォンビルブランド因子と結合すると、血小板内にシグナルが伝達され、血小板は活性化されます。活性化した血小板はいわゆるinside outのシグナルでもう一つのフォンビルブランド因子の受容体であるGPIIb/IIIaがextended formとなり、フォンビルブランド因子との結合が促進されます。
GPIb/IX/Vとフォンビルブランド因子の結合は心筋梗塞、脳梗塞などの病的血栓症にも関与していると考えられます。
GPIb/IX/V複合体は、GPIbα、GPIbβ、GPIXおよびGPVの4つのサブユニットで構成され、血小板膜上ではそれぞれ2:4:2:1の分子比で存在します。
GPIb/IX/V複合体の先天性的な機能低下・欠損症がBernard-Soulier症候群で、出血傾向を呈します。一方、GPIb/IX/V複合体の先天性的な機能亢進症(GPIbの機能亢進)が血小板型フォンビルブランド病です。またGPIbαの一塩基多型Thr/Met145は血小板抗原HPA2-a/bの原因となり、血小板輸血不応症に関与します。冷蔵保存血小板製剤の血小板寿命低下は、GPIb/IX/V複合体のクラスター形成が一因であると考えられています。