生物学的偽陽性反応
【生物学的偽陽性反応(biological faulse positive; BFP)とは】
梅毒関連検査
検査の方法 結果の解釈
STS法 TP抗原法
陰性 陰性 梅毒に感染していない(非梅毒)
梅毒感染の極初期(極めて稀)
陰性 陽性 TP 抗原法での偽陽性
 反応系に起因する偽陽性
 その他のトレポネーマ感染
 ハンセン氏病
 異好抗体
 伝染性単核症など
陽性 陰性 梅毒感染の初期
生物学的偽陽性(BFP)
陽性 陽性 梅毒非治癒(早期から晩期)
梅毒治癒後の抗体保有
血清梅毒検査は、感度は高いものの特異度が低いSTS(Serologic Test for Syphilis)法と、特異度は高いものの感度がやや低いトレポネーマ試験(reponema pallidum 法;TP法)をペアで行う場合がほとんどです。多くの場合は共に陰性である場合もしくは、共に陽性である場合で、結果の解釈は比較的容易です(右表)。しかし両者の結果の乖離がある場合には検査の解釈が難しくなります(右表)。この中でSTS法;陽性、TP法;陰性の場合を生物学的偽陽性反応(biological false positive; BFP)と呼びます。血清学的梅毒偽陽性反応とも呼ばれます。
梅毒検査では過去には梅毒トレポネーマ(Treponema pallidum、梅毒スピロヘーター)の培養が困難であったため、梅毒トレポネーマそのものを抗原プローブとして使用するのが困難でした。このため梅毒感染後に起こる周辺組織の破壊に伴い生成されるカルジオリピンに対する抗体を検出することで、梅毒感染を特定するという方法が開発されました。カルジオリピンは哺乳類ではミトコンドリアにのみ存在するリン脂質で、細胞膜には含まれていません。このため、カルジオリピンは細胞が破壊された状態でのみ、免疫原性を呈することになります。STS法はこのカルジオリピンに対する抗体を検出するため、一種の自己抗体と考えることもできます。STS法ではウシ心臓のカルジオリピンを抗原プローブとして使用しています。このためカルジオリピンそのものを認識する抗体を検出するともに、カルジオリピンに結合した蛋白質などに対する抗体も検出することになります。STS法は感度は優れていますが、特異度に問題がある検査です。