ウィスコット-アルドリッチ(Wiskott-Aldrich)症候群
【Wiskott-Aldrich症候群とは】
Wiskott-Aldrich症候群は、サイズの減少を伴う血小板減少、湿疹、易感染性を3主徴とする先天性免疫不全症です。X染色体上(Xp11.22)に存在するWASP遺伝子変異が原因ですので、X染色体劣性遺伝形式をとり、そのほとんどが男児です。
WASP結合蛋白質であるWIP (WASP-interacting protein) 遺伝子異常による常染色体性劣性遺伝形式をとるWiskott-Aldrich症候群も報告されてはいますが極めて稀です(Wiskott-Aldrich症候群そのものが稀な疾患ですが)。


【遺伝形式】
多くがX連鎖劣性遺伝形式をとります。


【臨床症状】
血小板減少、湿疹、易感染性を3主徴としますが、全ての症状を呈する症例は少ないと言われています。この中で血小板減少はほぼ全例で見られますが、平均血小板容積が3.8〜5.0fLと通常の血小板の大きさの半分程度の小型の血小板が認められます。血便や皮下出血を伴う出血傾向を呈します。血小板減少症のみの場合はX連鎖性血小板減少症と診断されます。
湿疹はアトピー性湿疹様で難治です。
T細胞やB細胞、並びにNK細胞の機能低下のために乳幼児期から易感染性を呈し、細菌や真菌、ウイルスに対する感染を繰り返し起こします。
また合併症として自己免疫性溶血性貧血、血管炎、IgA腎症、関節炎、炎症性腸疾患などの自己免疫性疾患を合併したり、B細胞性リンパ腫を主とした悪性腫瘍を合併したりします。


【検査所見】
血小板サイズの低下を伴う血小板減少
MPVが低下しますが、塗抹標本の確認が重要です。

T細胞数の減少、細胞性免疫能の低下

IgGは正常から低下、IgMの低下、IgEの上昇、多糖類抗原に対する抗体産生能低下

NK細胞機能低下


【治療】
出血傾向および感染症に対する対症療法を行いながら、必要時にて免疫グロブリン補充療法を行います。根治療法としては同種造血幹細胞移植があり、5歳以下の若年ほど成功率が高いとされています。