行軍血色素尿症
【行軍血色素尿症とは】
物理的要因による溶血性貧血の一つです。軍隊の行軍後の兵士に黒褐色尿が認められたことがあるためこのような名前がついています。その本質は、行軍等の激しい運動のため、特に足底部で物理的に赤血球が破壊される血管内溶血が惹起されることです。血管内溶血に伴う貧血も認められ、血色素尿は認められず、貧血が主な症状である場合もあります。この場合は行軍貧血と呼ばれます。軍隊の行軍以外でも、特に足底部に衝撃がかかる状況では惹起され、国内では剣道などで認められます。
特に学校の部活など連日足底への刺激が継続している場合には、臨床的には血色素尿が認められなくても貧血が進行している場合があります。剣道以外でも、バレーボールや陸上競技など足底部に衝撃を受ける様々な運動で発症することもあります。いわゆるスポーツ貧血と呼ばれる貧血の多くが行軍貧血と同じ病態生理によって引き起こされているものと考えられます。
【臨床症状】
貧血の程度は様々です。血管内溶血であるので、著しい溶血発作時にヘモグロビンによる腎障害が合併する場合があります。

【検査所見】
溶血性貧血の検査結果を呈します。

【治療】
誘因となる行軍を回避することが重要です。スポーツ貧血の場合は適切な運動量とするなどが重要です。またシューズなどの工夫も重要です。著しい溶血時には腎機能低下を避けるため、十分な輸液が必要になります。