遺伝性楕円赤血球症
【遺伝性楕円赤血球症とは】
膜蛋白の異常や膜構造を維持するタンパク質の異常で赤血球異常が引き起こされる疾患で、赤血球が円盤状ではなく楕円形の形態をります。原因となる蛋白質としてはαスペクトリン、βスペクトリン、Ankyrin、Band3,Protein4.2 など様々なものが知られています。この赤血球は脾臓の微小循環を通過するのに必要な柔軟性が損なわれ、その結果、脾臓で血管内での溶血が起こります。

【遺伝形式】
一般に常染色体優性遺伝形式をとります。

【臨床症状】
赤血球溶血による貧血、並びに黄疸と脾腫が主な症状ですが、先天性溶血性貧血である球状赤血球症に対して臨床症状は軽度である場合が多く、ほとんど臨床症状を呈しません。溶血によるビリルビン産生が長期間持続するために、他の先天性溶血性疾患同様、ビリルビン結石による胆石症を合併する場合があります。感染などを契機に溶血発作(hemolytic crisis)が認められたり、ヒトパルボウイルスB19感染などによる無形成発作(aplastic crisis)を起こす場合もあります。

【検査所見】
MCVは基準値内の正球性の貧血を呈します。一方MCHCは上昇する場合も認められます。他の溶血性貧血同様、網状赤血球比率は上昇し、10%以上の値を呈する場合もあります。白血球数が上昇している場合もあります。形態学的には楕円赤血球が10%以上を占めます。鉄欠乏性貧血でも楕円赤血球が認められますが、小球性であり数も少ないことから鑑別されます。

【治療】
経過観察となります。