銅欠乏による貧血
【銅欠乏症とは】
銅の欠乏によって貧血が惹起される場合あり、後天性銅欠乏症と先天性銅欠乏症とに大別されます。後天的には摂取する銅が低下した場合などに起こり得ますが、通常の食事を摂取していれば、銅欠乏状態になることは稀です。

【原因】
胃切除ビタミンB12欠乏症も同時みられる場合もあります
重度の吸収不良、持続性の下痢症セリアック病、クローン病、嚢胞性線維症、熱帯性スプルーなどの、吸収不良を引き起こす疾患
亜鉛の過剰摂取銅の吸収が低下する

【臨床症状】
血液学的には貧血とともに白血球減少を認めます。貧血は低色素性貧血ですが、MCVは併発する病態によって異なります(正球性が基本ですが、ビタミンB12欠乏症を合併すれば大球性、鉄欠乏状態を合併すると小球性となります)。
血液以外の症状として骨石灰化障害、脊髄症、神経障害などが認められます。

【検査所見】
血清中の銅およびセルロプラスミンが低値を示しますが、銅欠乏状態以外でも低下する場合も多く、また必ずしも低下しない場合もあり、臨床検査で診断するのは一般に困難です。

【治療】
原因除去を図るとともに銅を含む栄養管理をおこないます。ココアなどに多く銅が含まれています。

【先天性銅欠乏症】
先天性に銅欠乏症を呈する疾患としてメンケス(Menkes)症候群(メンケス病(指定難病169)およびオクシピタル・ホーン症候群(指定難病170))があります。X連鎖劣性遺伝の銅欠乏症で、銅輸送性P型ATPase遺伝子の変異による銅依存性酵素の機能障害と考えられています。重篤な成長・神経障害を合併し軟部組織の異常や血管のねじれ、独特な毛髪など様々な症状が起こります。貧血などの症状よりもこれらの症状が臨床的には重要で、特に神経症状を合併した場合は、治療介入しても予後は不良です。