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東大の風景

部長からのご挨拶



輸血医学教授・輸血部長   正本 庸介



輸血医療は、日々の診療の中で多くの患者さんの命を支える、現代においてもなくてはならない医療行為です。その根底には、多くの献血者の善意があり、社会全体の支えの上に成り立っています。

一般には補充療法として認識されがちな輸血ですが、実際に安全かつ適正な輸血医療を継続的に実践するには高度な専門性を備えたチームとしての医療が求められます。 輸血には感染症や免疫学的な副反応を含めてさまざまなリスクがあり、そのリスクとベネフィットを的確に評価し、個々の患者さんにとって本当に必要な輸血かどうかを判断することが重要です。 輸血部では輸血の安全性を支える基本業務として、血液型検査、不規則抗体検査、交差適合試験、輸血感染症検査を正確・迅速に行い、輸血用血液製剤の保管・供給を一元的に管理しています。 各診療科と緊密に連携し、必要時には適切な輸血のための助言を行い、患者さんにとって常に最適な輸血医療を提供できる体制を整えています。

さらに、患者さん自身の血液をあらかじめ採取・保存し、必要時に使用する「自己血輸血」の推進にも積極的に取り組んでいます。 自己血採取を専門的に担当する「自己血外来」を設けており、貧血を防ぎつつ安全かつ十分な量の自己血を確保するために、個別にきめ細かい計画と管理を実施しています。 これは患者さんのQOLの向上と同種血輸血のリスク低減の両立を目指す取り組みです。

また東大病院が特に力を入れている移植医療においても、輸血部は重要な役割を担っています。 造血幹細胞移植や固形臓器移植には不可欠なHLAタイピング検査や抗HLA抗体検査を実施し、さらに、造血幹細胞移植・CAR-T細胞療法に必要な末梢血幹細胞やリンパ球の採取業務を担当しています。

輸血医療は黒子のような存在ですが、その質と安全性は病院全体の医療水準に直結しています。 私たちは同種血輸血や血漿分画製剤の使用適正化と共に自己血輸血の適応拡大をはかりながら、患者さんの安心と安全を守るため、今後も最新の知見と技術を取り入れながら、よりよい輸血医療の実現に努めてまいります。

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