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症状

思春期・青年期にみられる精神的問題は、大きく分けて精神病症状(精神病状態の症状)と、精神病状態ではない症状があります。精神病状態の症状が生じる前に、前駆症状として、精神病状態ではない症状がみられることがあります。

ここでは精神病症状について説明します。これは大きく分けて、
1)幻覚
2)妄想
3)自我障害(自分と周囲との境界の障害)
4)会話や行動のまとまりのなさ

があります。またこれらの症状に前後して、

5)感情・意欲面での減弱

がみられることがあります。

幻覚

幻覚には「ないものが聞こえる」という幻聴、「ないものが見える」という幻視など、さまざまな種類があります。

<幻聴>

最も多いのは「声が聞こえる」という幻聴です。「声」のほかに、物音、雑音といった音が聞こえる幻聴や(「耳鳴り」と感じられることがあります)、「メロディーが聞こえる」といった音楽の幻聴もあります。
「声」の幻聴には以下の種類があります。

a.話しかけられる形の幻聴
「お前はバカだ」など本人に話しかける声が聞こえます。本人がそれに対して返事をすると、本人と声が対話することになり、周囲の人が見ると独り言を言っているようにみえます。「首をつれ」「死ね」といった命令の幻聴が多く、本人がそれに支配されると、自傷行為や自殺企図、徘徊(当てもなくさまよい歩くこと)、その他さまざまな危険行動を行うことがあります。

b.言い合う形の幻聴
「あいつはバカだ」「そうだ、そうだ」など、複数の声が本人のことを噂しあったり、言い合ったりするのが聞こえます。

c.本人の行為に実況解説を加える幻聴
「あいつは変な服を着ている」「いまトイレに入っている」など、本人がしていることを逐一言葉にして説明する声が聞こえます。食べようとすると「食べるな」と聞こえるなど、行為の禁止や命令が加わることもあります。

d.考想化声
本人が考えていることが声となって聞こえます。思考反響ともいいます。頭の中で聞こえることも、外から聞こえることもあります。読んでいることが声となって聞こえることもあります。
通常本人はこうした「声」が実在のものと確信しているため、周囲にいる実在の人(学校内であれば他の生徒、町中であれば通行人、家の中であれば近隣の人など)の声であると考えたり、あるいは「頭の中に装置が仕掛けられている」「電波によって声が頭の中に送られてくる」などと確信することがあります。

<幻視>

「人の姿」「人の顔」「情景」といった映像が頭の中や外界に見えることです。薬物中毒時にはさまざまな種類の幻視が生じます。

<幻臭>

思春期によくみられるものに自己臭症があります。これは「自分の性器・肛門などから不快な臭いが出ており、他人が自分を避ける」という確信であり、本人にとって大きな苦痛を伴います。

<幻味>

飲食物が「毒の味がする」などと感じられ、被毒妄想と結び付いていることが多いです。

<身体幻覚(体感異常)>

「脳が溶ける」など質的に異常な身体感覚であり、奇妙でグロテスクな表現となることが多いです。

妄想

妄想とは本人の社会的・文化的背景からみて誤った確信であり、訂正できないもののことです。

<妄想の生じかた>

妄想の生じかたには次のようなパターンがあります。
  1. 「何かとんでもないことが起こりそう」「戦争が起こりそう」といった不気味な気分が生じたのちに、はっきりとした妄想が生じる。
  2. 突然にひらめいた着想を確信する。
  3. 何かを見たり聞いたりことをきっかけに、それとは無関係な意味を確信する。
  4. 周囲のことが自分に関係していると確信する。
  5. 幻聴などの幻覚に基づいて妄想が生じる。
  6. 不安、抑うつといったな気分状態に基づいて妄想が生じる。
  7. アルコールや薬物の影響で生じる。

<妄想の内容>

妄想を内容から大きく分けると、被害妄想、誇大妄想、微小妄想、その他の妄想があります。

1.被害妄想
「自分が周囲から被害を受ける」という内容を持つ妄想の総称として用いられます。

a.関係妄想
周囲の人々の素振りや言動が自分に関係があるという妄想です。多くは批判、当てつけ、悪口として感じられます(被害関係妄想)(「周囲の人が咳払いをするのは、自分に対する当てつけだ」など)。こうした妄想は、「通りすがりの人にバカと言われる」など、幻聴を伴うことがあります。こうした幻覚妄想が学校や職場の中で生じると、具体的な事実がないのに、「いじめらる」「悪口を言われる」などと感じられます。
また、「テレビで自分のことを言っている」「新聞に自分のことがでている」といった関係妄想もあります。
なお、「人が話をしているのを見て自分の噂をされている気がしたが、気のせいだった」など、確信に至らずその場限りのものは、妄想ではありません。

b.注察妄想
通りや電車の中などで、「人に見られている」と確信する妄想です。これが自宅内で生じると「監視されている」「盗撮されている」などと感じられます。

c.追跡妄想
誰かに跡をつけられるという妄想です。「ストーカーされる」などと感じられます。

d.被毒妄想
食物、飲物、薬などに毒を入れられている、という妄想です。

被害妄想は「いじめられる」「ばかにされる」「セクハラをされる」「虐待される」などと日常語で語られることも多く、その場合は周囲の人もそれを事実と考えていることがあります。この場合、妄想と判断するには、具体的事実がないことを確認する必要があります。
また、自分しか知らないはずのことが周囲に「つつぬけ」になっていると感じ、「自宅に盗聴器がついている。自分のことが全世界に流れている」「インターネットで自分のことが周りに知られている」「周囲の人みんなが自分のことを知っている」などと感じることもよくみられます(「つつぬけ体験」)。

被害妄想に行動が左右されるようになると、不登校・引きこもりとなり、時に雨戸も閉め切って自室に閉じこもることがあります。逆に、自分に被害を与えていると思う人に暴力を振るうなど危害を加えたり、興奮して物を投げたり壊したりすることもあります。この場合、家族など身近な人だけでなく、単なる顔見知りにすぎない人や通行人に暴行や傷害を加え、極端な場合は殺人に至ることがあります。

2.誇大妄想
自己に対する過大評価を内容とする妄想です。
血統妄想(「自分は天皇の血縁だ」など)、宗教妄想(「自分はキリストの生まれ変わりだ。自分には救済の使命がある」など)、発明妄想(「人類救済のシステムを開発した」など)があります。

3.微小妄想
自己に対する過小評価を内容とする妄想です。以下の種類があります。

a.心気妄想
「自分は不治の病気にかかっている」という妄想です。

b.貧困妄想
事実はそうでないのに、「自分は極端に貧乏で、自分と家族は困窮している」という妄想です。

c.罪業妄想
「自分は周囲や家族に悪いことをした」などの自分を責める内容の妄想であり、自殺念慮・自殺企図が生じやすものです。他の被害的な幻聴や妄想に基づいて、「自分は生きていると人に迷惑をかける」といった妄想が出現することもあります。

4.その他の妄想

憑依妄想
「霊」などにとりつかれている、という妄想です。本人や家族は「お払い」「除霊」などでこれに対処しようとすることがありますが、ほとんどの場合無効です。

嫉妬妄想
配偶者や交際相手が不貞(浮気)をしている、という妄想です。相手に対して激しい非難と暴力が加えられることが少なくありません。

被愛(恋愛)妄想
芸能人などの有名人、あるいはさして親しくもない特定の人に愛されている、という妄想です。本人は一方的に手紙を出したり待ち伏せたりするなどの「ストーカー行為」を行ったり、無言電話など嫌がらせ行為をしたりします。

醜形妄想
「鼻の形がおかしい」「目が一重でおかしい」など、体のある部分の形が醜悪である、と確信する妄想です。醜形恐怖と呼ばれることもあります。本人は整形手術を何度も受けようとしますが、それによってもこうした確信は訂正されません。

自我障害(自分と周囲との間の境界の障害)

自分自身の考え、感覚、行動などが、他の人や物から影響されている、操られている、されられる、という確信です。
思考に関するもの、身体感覚に関するもの、その他のものがあります。

1.思考の被影響体験
「自分のものでない考えが、誰かによって頭の中に入れられる」(考想吹入)、「自分の考えが、誰かによって頭の中から抜き取られる」(考想奪取)、「自分の頭の中の考えが、周りの全てのひとに知られている」)という体験です。本人はこうした体験を「テレパシー」と考えることがあります。

2.身体的被影響体験
「他の人などから何らかの方法で自分の体に変な感じをさせられている」という体験です。「電磁波で頭の中をいじられている」「レーザー光線で手足をやられている」などと感じられます。

3.その他のさせられ体験
自分の感情、意志、行動などが、「他の人から操られている」などと感じられる体験です。

会話や行動のまとまりのなさ

以下のような特徴が現れます。

会話が話題から脱線しやすくなる。
話題と無関係なことを言う。
会話の内容があいまいで、過度に具体的であったり、抽象的であったりする。
食事や入浴など、身の回りのことに無頓着になる。
ゴミや不必要に見えるものを捨てずに溜め込むなど、奇妙な行動が増える。

感情・意欲の面の減弱

上記のような精神病症状に前後して、以下のような感情・意欲面の減弱が進行することがあります。

意欲低下
積極的に学業などの活動をしなくなり、成績が低下する。欠席が増え、不登校になる。朝なかなか起きず、昼夜逆転となる。ベッドに横になって何もせずに1日を過ごし、ほとんど外出しない。

アンヘドニア(失快楽症)
楽しいはずのことを楽しめない、と感じる。それまで興味を持っていたことに、興味がわかなくなる。そのため、余暇活動にも学業にも熱心に取り組まなくなる。

感情鈍麻
出来事に対する感情反応が低下し、周囲のことや自分の置かれた状況に対して無関心となる。他人に対する共感性が乏しくなり、感情の表現も乏しくなる。

不適切な感情
些細な出来事に対して激しい感情の爆発を起こしたり(周囲には「切れやすい」ように見える)、逆に、感情を生じるべき出来事に対してまったく感情表出がなかったり、また、悲しいはずの状況で笑っていたりと、感情表現が状況に対して適切でない。

こうした症状は本人に自覚されることもありますが、むしろ周囲の人によってその変化に気付かれることのほうが多いです。

針間 博彦

 
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