Severe injury in Snowboarders



スノーボード外傷の全国調査

 スノーボード外傷について東京医科歯科大学脳神経外科教授
 平川公義先生が行われた全国アンケートの結果

 スノーボード外傷について東京医科歯科大学脳神経外科教授  平川公義先生が行われた全国アンケートの結果がまとまり、  結果掲載の許可をいただきましたので、公開いたします。

先に「スノーボードによる脳脊髄損傷の一次アンケート」を脳神経外科専門医訓練施設長 あてに送付、はがきによる回答を頂いたのでここに公開いたします。 調査の対象は、1996年12月から1997年3月までに発生した外傷に限定しました。5月12 日現在、日本脳神経外科学会認定訓練施設1032施設のうち、699施設から回答を頂き ました。602施設から該当症例なし(昨シーズンはあった:4施設)、97施設から症例 あり(2施設は記載内容不明)との回答を得ました。97施設のうち、24施設では外来 の軽症例のみ、重症例ありとの回答は52施設から得られました。手術は24施設で行わ れ、死亡例は少なくとも5例、5施設で急性硬膜下血腫はあったが少量で手術せず、11 施設で慢性硬膜下血腫(手術、非手術)を認めています。脊椎脊髄の損傷は16施設か ら報告され、他に外来軽症例があります。以上は、はがきに記載された回答の概略で す。これに基づき、第二次アンケートをお願いしました。問題点として、この調査で は、現場での死亡、DOA(病院到着時死亡例) が反映されません。


UP-date Dec, 25, 1997
 全国調査の最終報告がまとまりまり、日本臨床スポーツ医学会、
 国際スポーツ医学シンポジウム等で発表されました。
 そのまとめを下にご紹介します。

雪の便りとともに、スキー・スノーボード・シーズンの到来だ。しかし、楽しい話題の一方で、ここ数年来、スノーボードによる脳・脊椎損傷が大きな問題になっている。去る11月2日に東京で開催された第8回日本臨床スポーツ医学会学術集会では、同学会の学術委員会脳神経外科部会、平川公義(東京医歯大)、服部光男(成蹊学園)、石山直巳(平塚市民病院)、片山容二(日本大)、小野陽二(小野クリニク)、関野宏明(聖マリ医大)によって、アンケート調査の結果が発表された。このアンケートは、我が国にある約1000の脳神経外科施設すべてに質問票が送られ、スノーボードによる脳や脊椎の損傷がなかったかどうかを訊ねたものである。調査の対象となる期間は、平成8年12月から平成9年3月までの1シーズンである。アンケートの回収率は70%、寄せられた器質性脳・脊椎損傷(CTやMRIで発見される損傷)は109例で、その内訳は、頭蓋骨骨折26例、急性硬膜外血 腫9例、急性硬膜下出血45例、脳実質損傷24例(挫傷、くも膜下出血など)、脳血管損傷2 例、慢性硬膜下血腫12例、それに脊椎脊髄損傷12例であった。最も危険なのは、急性硬膜下血腫で、脳の表面に多量の出血があって脳を圧迫するもの20例、少量の出血25例、その結果、死亡10例、植物状態1例、後遺障害(重)2例、後遺障害(軽)2例、回復30例という成績であった。出血の原因は脳の表面にある静脈が裂けるためだとされる。出血後1-2ヶ月の経過の後、頭痛などの症状で発見される慢性硬膜下血腫も病気の発生の仕方は急性硬膜下血腫の発生の仕組みと同じだと考えられている。脊椎脊髄損傷は、脳神経外科施設で取り扱った数であり、幾つかの施設で整形外科により取り扱われた傷害数から推定すると、脳損傷に匹敵するほどの数の椎体骨折と椎間板損傷があると推定される。硬膜下出血は初心者の単純な仰向けの転倒によるものがに多いが、上級者にもジャンプの失敗で発生している。ボードの初日に死亡した例もある。1シーズンに発生する単一のスポーツの事故として、この数値は異常というべきであろう。学会では、傷害の実状が報告され、世に警告を発することが大切だとの意見が出されたが、今後、初心者に対する指導法のみでなく、装具、施設のあり方、万一の場合の対応など、一層、啓蒙活動を充実させることが必要だと思われる。皆様もご注意のほど。アンケートの詳細は、平成10年の日本臨床スポーツ医学会誌に発表されるとのことである。1997年11月。


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25 December 1997