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スノーボードのけが
信州大学外科、青木孝學 先生の経験


さて、わたしは外科の医局に所属しており、専門は呼吸器外科です。最近はあまり機
会がおおくありませんが、それでも一般病院へ当直にいくことがあります。昨年末に
長野県の木曽病院で当直していた際に(一泊二日の土->日当直だったにもかかわら
ず)スノーボードによる大腿骨折1名、前腕骨折1名、下肢裂創1名、頭蓋内出血1
名、単なる打撲や捻挫は4-5名の患者さんがきました。(ちなみにスキーヤーの受診は
たまたま捻挫1名だったと記憶しています...)ほとんどが名古屋ー関西からの人達で
初心者が多かったです。

頭蓋内出血の方は30代の男性でした。一日ボードをしていて午前中と午後にそれぞ
れ一回ずつほとんど平坦なところで転倒して頭を打ちましたが、特に頭痛や吐き気な
どがなかったためにそのまま滑っていたということです。ただ、夕方になってホテル
に戻ったさい、午後に転倒した時の記憶がないことに奥さんが気付いて「心配だから」
と、受診されました。受診時はまったく意識清明で瞳孔も異常無し。血圧、脈も正常。
自覚的にはまったく症状もなく、一般的な診察でも(一般外科医が診るレベルで)特
に問題はありませんでした。ただ、やはりコケた記憶がない、というのが気になり、
頭部CTをとったところ、小脳周囲から脳幹にかけての部位に出血を認め入院となり
ました。幸い保存的に納まる程度だったのですが、普段から健康な人が、それこそ何
の変哲もないような場所でこけて大怪我をする事実を知って、かなりおどろきました。
ここの常勤Dr(小児科ですが..)に伺ったところ、95-96のシーズンで木曽病院だけ
で5名ボードの事故で死者が出ているとのことでした。とんでもない数字だと思います。
 
もともとスポーツには何をやるにせよ、それなりに怪我や事故はつきものだとおも
います。しかし、生き死にに関わるような外傷がこんなに簡単に起きるというのであ
れば、やはり重大な問題です。何も「ボードはいかん」とは言いません。が、やはり
「どんな事故があるのか(多いのか)知った上」で、「十分注意しながら」するべき
ではないでしょうか。医療サイドとして一般のかたに広く情報を提供する義務はある
とおもいます。メーカーやスキー場、さらにボードの業界関係者を(あ、オリンピ
ック関係者もですね)敵に回して糾弾する、というのではなく、いかに安全に楽しく
ボードができるか、現状を認識することから考えましょう、と言う場を作ってほしい
ですね。

青木 孝學 先生(信州大学 第二外科)

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