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Brain Tumor/脳腫瘍


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髄膜腫・meningioma
髄膜腫は脳をとりまく膜(髄膜)からできます。通常脳をとりまく固い膜(硬膜) にくっついてぶらさがるようにできています。ゆっくり成長するものが多く、脳を 徐々に圧迫するので、気がついた時にはかなり大きくなっていることがあります。 脳自身からできるものではありませんので、腫瘍と脳との境界は鮮明で、きれいに 切除すれば治癒します。腫瘍が脳の深部にできていたり、大切な神経や血管をまき こんでいると治療がやっかいなことがあり、場合によっては神経の機能を残したり、 大切な血管をきりとらないために腫瘍をすこし残して手術をせざるをえないことが あります。

髄膜腫の名称
髄膜腫は臨床的には(脳外科の実際としてはと
いう意味)腫瘍ができる部位で病名をあらわし
ます。たとえば大脳円蓋部髄膜腫(C)、大脳鎌
髄膜腫(F)、傍矢状洞髄膜腫(PS)、蝶形骨縁髄
膜腫(SR)、海綿静脈洞部髄膜腫(Cav)、小脳橋
角部髄膜腫(CP)、斜台部髄膜腫(CL)、鞍結節部
髄膜腫(TS)、嗅窩部髄膜腫(OG)などのようにい
います。また脳の下のほうにできるものを総称
して頭蓋底部の髄膜腫ということもあります。
(図の略号参照)

左上の図は脳の骨との位置関係、
左の図は脳の表面の膜(硬膜) 
との位置関係の図です。

海綿静脈洞髄膜腫では腫瘍が大切な血管(頚動脈)や神経(動眼神経など)を巻き
込んでいることが多く、われわれの医局の先生による分析によると若干腫瘍を残し
て、必要ならば手術後にγナイフを併用するのがもっとも患者さんにとって良いと
いう結果がでています。傍矢状洞髄膜腫では上矢状静脈洞という大きな静脈の壁に
腫瘍がくい込んでいるために腫瘍をわずかに残す必要があることがあります。嗅窩
髄膜腫(前頭部の下、嗅神経の近くにできる)や鞍結節部髄膜腫(視神経の近くに
できる)などでは、術前に嗅覚や視力障害があると手術でそれらの機能を取り戻す
ことができることもありますが、逆にかえって障害の程度が進むこともありなかな
かやっかいです。

髄膜腫の再発
髄膜腫は良性の腫瘍ですが、前に述べたように神経の機能を残すためにわずかに残
さざるをえないことがあり、腫瘍の再発を生じることがあります。また、髄膜腫の
数%以下ですが、再発しやすいものがあり、一見全摘出できたようにみえても数年
後に再発することがあります。しかし、現在は画像診断が発達しており、多くの場
合、早めに早めにチェックすれば再発時にも再び手術で摘出をすることが可能です。

手術以外の治療
前に述べたように、特別なものにたいしてはγナイフが有効です。しかし、γナイフ
(またはリニアックナイフという特別な放射線治療)をのぞいてふつうの放射線治療
は一般的に無効です。また抗腫瘍剤や抗ガン剤も殆ど無効です。

再発しやすさのチェック
手術のとき摘出した組織を特殊な方法で染色して検査するとある程度再発しやすさが
わかります。我々の研究でこれくらいの検査所見であれば、どれくらいの成長速度の
可能性があるか、どれくらいの期間で再発しやすいかがある程度予測可能であること
がわかりました。東大脳外科では現在ではこれらの情報を、手術標本で検討して、臨
床に役立てています。

手術中のモニタリング
小脳橋角部髄膜腫の一例です。
60代の女性の小脳橋角部の髄膜腫です。
そう大きなものではありませんが、腫瘍は
聴神経のすぐ近くにできています。(左図のA)

反対側の聴力がもともとほとんどない方なので、腫瘍が大きくなってこちら側の聴力 が低下すると「聾」の状態になります。手術自体も聴力低下の危険性がありまし たが、手術中に音を聞かせながら特殊な脳波をとりながら聴神経の働きをモニター しつつ手術をし、腫瘍のある側の聴神経の機能を保存したまま腫瘍を摘出できま した。右側の手術後のMRIでは腫瘍が摘出されているのがわかります。 (患者さんの許可をえて画像を掲載)

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30 April 1997