8 World Congress of Biological Psychiatry参加記

200575

 

 本学会は2005628日〜73日、ウィーンで行われた。

 生物学的精神医学の国際学会としては、本学会とCINP(国際神経精神薬理学会)とがあり、以前は両者4年ごとに行われ、隔年でどちらかに出ると良かったのだが、最近は両者2年おきになったため、忙しくなるばかりである。最近本学会からアメリカが脱退してしまったため、アメリカ人の参加は少なく、アメリカ以外の世界学会、という感じである。京都議定書や国連費用の未払い問題を思い起こさせるアメリカの自国中心主義であるが、やはりアメリカ抜きだとレベルの低下は否めず、全世界が結集してもアメリカ1国に負けかねないという危機感を感じた。

 初日はサマープログラムの関係で出席できなかったが、それ以外はフルで参加した。これだけきちんと国際学会に出席したのも何だか久しぶりで、結構ぐったりした。

 本学会は以前からそうなのだが、座長がいないとか、シンポジウムのスピーカーがいない、ということが結構あり、いったいどうなっているのかという感じである。スピーカーに旅費が出ないことも一因かも知れないが…。

 

学会全体の印象としては

     各プレゼンテーションはそれなりにまとまっているが、それぞれが独自の世界を形成していて、結局疾患の原因はというとよくわからない。もっと、全体像の中で自分の研究がどのような位置づけなのかを明らかにすべきではなかろうか。(自戒も込めて)

     境界性人格障害やADHD、摂食障害など、統合失調症、気分障害以外の研究も盛んになってきた。

     びっくりするようなデーターは特になし

という感じである。

とはいえ、勉強になったことも色々あった。

 

うつ病

 うつ病、および抗うつ薬の作用に関する理論として、セロトニン、BDNFHPA系の3つの方向性がある。現在、1)これらをいかに統合するか、2)これらの理論が本当にうつ病患者に本当に当てはまるのか、の2つが最大の課題だと思う。

 本学会に参加して、少なくとも1)については、解決の方向性が見えてきたような気がした。すなわち、セロトニンが神経幹細胞の分裂を促進することがin vivoでも(S-087)、in vitroでも(S-072.04P0-031.04)示されており、抗うつ薬はin vivoでは神経新生を促進するが、in vitroでは促進しないことから、抗うつ薬の神経新生への作用はセロトニンを介していると考えられる。セロトニンの神経可塑性への作用は、受容体およびCREBリン酸化を介して、BDNFを増やすことを介しているらしいことが、変異型CREBのトランスジェニックマウスの実験から示唆された(S-087.04)

 一方、グルココルチコイドは神経幹細胞の増殖を阻害することが培養系、個体レベルの双方から示唆される(P0-031.04)。気分安定薬の幹細胞への作用は、in vitroでも見られることから、抗うつ薬と異なった作用点を介して同様の作用を持つことになり、リチウムと抗うつ薬の増強療法の意義が説明できる。

 抗うつ薬は、グルココルチコイド受容体の核内移行を促進することで、HPAのネガティウフィードバックを促進し(S-042)、過剰なステロイドによる神経障害を予防する。抗うつ薬のこの作用は、1)セロトニン受容体を介したGRの発現増加、2)ステロイドトランスポーター(MDR p-glycoprotein)の阻害による細胞内ステロイド増加、3)FKBP5のいずれかを介したものと考えられる。

 ということで、セロトニンとステロイドが神経可塑性にそれぞれ逆の作用を持ち、抗うつ薬は両者に作用することで、神経機能を回復する、というモデルで一応多くの点が理解可能となる。

 問題は、これが実際にうつ病患者の脳内で起きているかどうかであるが、これに関してはやはりどの研究者もデーターの不足を認識しているようであった。今後の課題だろう。

 うつ病のグルタミン仮説というセッションにも関心を持ってでてみた(S038)が、はっきり言っていまいちだった。うつ病を語るのに、セロトニンもBDNFHPAもなしで、「GABA(抑制)ニューロンとグルタミン酸(興奮)ニューロンのアンバランスがうつ病を起こす」などと蕩々と語られ、それらしい図を見せられても、説得力がない。いずれも脳画像研究では有名な人たちであるだけに、残念であった。

 とはいえ、mGluRには、興奮性でシナプスにある1/5と、シナプス外にあり、自己受容体を介して抑制的に働く2/3とがあり、mGluR2/3のアゴニストLY354740はグルタミン酸伝達を抑制することで抗うつ作用を発揮するという話もあり、期待できるかも知れない。

 

ミトコンドリア

 最終日の最後に、アルツハイマー病のミトコンドリア機能障害についてのセッションがあった、参加者は20名もいないほどだったが、色々参考になった。

 Dr.Oliveira(ポルトガル)(S045.01)は、神経芽細胞腫細胞NT2のローゼロ細胞とそのサイブリッドを用いた実験について報告し、アルツハイマー病患者で見られ、進化において保存された塩基の変異として、3338C3197C3199Cに着目した。これらがフリーラジカルを増やし、カルシウムシグナリングに変化を与え、アポトーシス感受性を高めるという。論文が数カ月以内に出るとのことであった。

 Krishnanら(TaqManによるmtDNAの欠失定量法を開発したTurnbullの研究室)は、アルツハイマー病患者の海馬およびDLBD(びまん性Lewy小体病)患者の黒質で、COX陰性ニューロンが多く見られることを示した(P045.03)。マイクロダイセクションによりこれらCox陰性ニューロンを切り出し、シーケンスしたところ、9細胞中2細胞でsomaticな中立変異が見られた。Nested Long PCR(全周ではない)により増幅したところ、細胞により異なった種類の欠失が見られ、clonal expansionが見られるのではないかという。また、TaqMan法で定量したところ、DLBDおよびコントロールの黒質では、年齢に応じてmtDNA欠失が増加したが、海馬では変化しなかった。

Mullerら(S045.05)は、APPsw変異を持つ細胞を用いて、ミトコンドリア機能障害に対する治療法について、既存の抗痴呆薬を用いて検討した。その結果、PiracetamおよびGinkgo(イチョウ葉抽出液)がAβによる膜電位低下を改善することを示した。彼らはPiracetamの神経保護作用を長く研究してきたが、酵素阻害作用などはなく、唯一見つかったのは膜安定化作用だという。Piracetamは水溶性で細胞膜は通過しないらしく、ミトコンドリアへの直接作用かどうかは不明である。彼は、Aβへの細胞内への取り込みを阻害するのだろう、と言っていたが、APP変異を持つ細胞を用いているのに、その説明でよいかどうかわからない。

終了後、Dr. Oliveiraに、NT2のローゼロを分けてもらえないか訪ねたが、Parkerらにもらったもので、彼らの許可が必要だという。彼らに頼んだら返事がないんですよ…と言ったら、なかなか難しいのだ、と言っていた。彼女の教室の人がParkerのところに留学していて、それでやっともらえたのだという話だった…。

 

Impulsivityについて

 本学会には、Impulsivityのシンポジウムがあった。今年の日本の生物学的精神医学と神経科学会でも同様のテーマが取り扱われているが、なぜ今impulsivityなのか。改めて考えさせられた。

縁者の一人、Dr.Bayleは、impulsivityexophenotypeと位置づけていた。質問しても今ひとつexophenotypeの意味ははっきりしなかったが、筆者の理解では、endophenotypeのように直接遺伝的に規定されてはいないが、遺伝環境相互作用の結果である生物学的な変化を反映しており、一定の社会的態度と関連した精神現象の一局面、とでも言うことができよう。

現在の社会問題を引き起こしている精神医学的問題は、古典的な診断分類の枠を飛び越え、複数の疾患で見られたり、あるいは逆に該当するような診断が存在しないものが少なくない。例えば、子供の殺人、いじめ、虐待、ひきこもり、インターネット依存、病的賭博、そして自殺、薬物乱用などである。精神疾患の生物学自体、困難な対象であるが、こうした精神医学的に未分類な問題の研究は更に困難である。

Impulsivityという概念は、疾患の枠を越えているが、一定の生物学的基盤(セロトニン、frontal-limbic connection、といったように)を想定することができ、疾患そのものよりも社会との関係性を規定していることから、研究上のツールとなりうるのではないかと考えられるのではなかろうか。

Impulsivityは、検査課題成績(IMTDMTなど)として操作的に定義することができ、動物でも測定可能である点でも有用である。

 

統合失調症

 米国ではDysbindinNeuroulinDISC1などの話題が花盛りであるが、この学会ではそれほど中心課題となっていない。むしろ、周産期障害などの環境因をモデリングする動物モデルが報告されていたり、より幅広い視点からの研究が行われている印象であった。アメリカでは、流行の研究に飛びつかないと研究費がでないが、ヨーロッパは歴史が長い分(?)、もう少し慣性が大きくて、そんなにドラスティックに研究内容が変化しないのかも知れない。

 Schizophreniaの動物モデルのセッションでは、生後の海馬損傷モデル、前頭葉損傷モデル、低酸素モデルなどが報告された。

新生仔期のmPFC破壊モデルでは、ドーパミン系の異常、社会行動の異常、GABAニューロンの減少など、多くの所見が確認され、動物モデルとしての意義は小さくないと感じられた。

Schmitら(S004-05)は、低酸素モデルを検討した。これは、PD4-8の間、ケージごと11%O2の低酸素にしてしまうものであり、社会行動の異常、social recognition(どうやって調べるのか聞き漏らした)の異常などが見られ、後者はclozapineで改善するということであった。親も低酸素になり、partial maternal deprivationにならないか、と質問したら、それは否定できないとのことであった。

また、ラットでもF344Lewisでは、腹側海馬損傷による反応が異なるらしい。

 

グリア

 Deckert(S072.01)は、アストロサイト蛋白であるS100βのノックアウトマウスを調べた。このマウスでは、アストロサイトが過剰に活性化し、それに伴い、神経突起の成長は阻害されたという。

 Uranovaら(P0-031.13)は、統合失調症患者の死後脳では、血管周囲のオリゴデンドロサイトが少ない、と報告した。オリゴかどうかは、細胞質がそまらず、核の形がまん丸いことでわかる、という。岩本さんのSox10論文のことは知らないようだった。初日の、「Involvement of Glia in the pathogenesis of schizophrenia」にで損ねたのは誠に残念であった。彼女は、オリゴの障害がprimaryだろう!と言っていた。その理由は死後脳ではneuropilの減少はそれほどはっきりした所見ではなく、でたり出なかったりだが、オリゴの減少は病初期からはっきり見られるのだ、ということであった。

 

セロトニン

 Organic cation transporter (OCT)というトランスポーターがある(MossnerS072.02)。OCT1(SLC22A1)は肝臓、腎臓、OCT2は腎臓とニューロン、OCT3ubiquitousに発現している。これらは多くのモノアミンを輸送する。セロトニントランスポーターノックアウトマウスの海馬ではOCT3upregulateしており、代償的なものではないかという。抗うつ薬はOCTによるセロトニン輸送を阻害する。OCT3のアンチセンスによるノックダウンは抗うつ作用がある。これらの結果から、OCTもセロトニンの細胞内への取り込みに関与していると考えられる。現在OCTHTTのダブルノックアウトマウスを作成中とのこと。

 ノルアドレアリントラスポーターがドーパミンも取り込んでいるという事実からも思ったが、いったん名前がつくとなかなかその考えから抜け出せなくなるので、やはり「名前」には要注意である。セロトニンを輸送するのはセロトニントランスポーター、と神様が決めた訳ではないのだ。n

 MAO-A の欠損が境界知能と攻撃的行動(放火など)を伴う症候群が報告されているが、Seif(S072.05)は、MAO-Aノックアウトマウスを調べ、MAO-A欠損が攻撃性を生むには臨界期が存在することを明らかにした。MAO-A KOは、攻撃性が高く(latency-to-1st attackが通常3分以上のところ、12分となる)、同じケージの兄弟を噛んでひどい怪我をさせる。数匹飼いしたケージでは、時にDominantマウスが一方の端にひとりでねていて、他方の端に何匹ものマウスが縦に束になって寝ている様子が見られる。

 この攻撃性は、HTTとのダブルノックアウトでは悪化し、HT-1B1Aとのダブルノックアウトでは改善する。彼らは、P0-P14の間、MAO-AノックアウトマウスにPCPA(セロトニン合成を阻害する)を投与することで、P30以降も攻撃性が改善することを発見した。これらのマウスでは、成長後の脳内セロトニン含量には差がない、従って、セロトニン量の増加が攻撃性を生む作用には臨界期があり、それがP0-P14であることが示されたことになる。これは、本学会の発表の中で最大と言って良い、かなり重大な発見だと思う。

 

エピジェネティクス

 我々のセッションは、日本人3人とDr. T.J.CrowDr. Klar2人が話した。Dr.Crowは、他のセッションでも、Dysbindinで決まったとかいうが、連鎖解析に再現性がないじゃないかとか、うつ病で海馬が小さいとかいうが、死後脳では見られないし、脳室拡大のためにMRI測定が変になるんじゃないか、とか色々と噛みついているようであった。残念ながら、このセッションでの話は、いつものX染色体、Y染色体が統合失調症に関係しているのでは、という話で、それこそ根拠が乏しいのでは、と言いたくなるような話であった。

 Dr.Klarは酵母のepigeneticsの専門家であり、「趣味でやっている精神疾患のシンポジウムに呼んでくれてありがとう」と述べた。彼の理論は難解であったが、DNA2本のstrandは全く別の分子であり、発生の初期に2本のstrand(Watson-strandCrick-strandと名付けて(?)いた)2つの細胞に分かれる際、それぞれが何らかの形で「imprint」されていたとすれば、その後両者の娘細胞にそのimprintが伝達され、脳の左右差などを説明できるのではないか、という話だった(のではないかと思う)。W鎖とC鎖の分配の仕方が細胞によって異なり、膵臓や心筋細胞ではランダムだが、神経細胞では一定の方向に分配されることを巧妙な方法で示したらしいが、よくわからなかった。なお、そのimprintはメチル化ですか、と聞いたら、それはわからない、ということであった。セッション後、ビーチでホモセクシュアルの人はつむじが反対向きだということに気づいて、ゲイの集まるビーチに行って逆さつむじの頻度を数えさせてもらったら、ゲイでは有意に多かった、という話を蕩々としてくれた。逆さつむじは脳の左右分化の障害と関係しているはずだ、という話であった。

 

 

双極性障害

 肝心のbipolarに関しては、見るべき発表はなかった。Bipolar研究の主立った人としては、BelmakerG.GoodwinBowdenなど、来ていることは来ていたのだが、あまり基礎的な研究を発表している人はなく、ほとんどが臨床に関するレビュー的な発表であった。

 臨床面では、olanzapinefluoxetineの合剤が双極うつ病に有効であることなどがトピックのようであった。

 スタンレーBipolar Network(SBN)では、bupropionsertralinevenrafaxine3種の抗うつ薬のどれが双極うつ病に有効かを検討しているという(S110.03)。これらが3つとも日本では使えないことを思うと、実に暗澹たる気持ちにならざるを得ない。どれが有効だとわかっても、使えないではないか! これら3剤のうち、venrafaxineは躁転率が高いらしい。また、SBNで、双極うつ病の改善後、抗うつ薬を続けることにより再発が予防できるとの衝撃的な報告があり、筆者自身もそれ以来、臨床の判断を少し変更していたのだが、なんと、STEP-BDという、もう一つの双極性障害の臨床研究プロジェクトでは、抗うつ薬続行のメリットはないという、矛盾した結果がでたという! いったいどうしたら良いのでしょうか…。

 また、Dr. Grunzeは、Angstの古い論文(Convulsive therapy 1992)を引用して、治療なし群と抗うつ薬群で躁転率には差がないと主張していた。少なくとも、SSRIに関しては、躁転を引き起こすとの証拠はないと述べていた。

 Neurobiology of bipolar disorderという、筆者にとって直球のはずのシンポジウム(S100)は、本学会中最低のシンポジウムであった。チェアが2名ともいなくて、4人のスピーカー中唯一来ていたDr. Grunzeがチェアをかねるという具合で、他のスピーカーも急ごしらえであった。双極性障害の神経心理を研究しているDr. Vietaの代理で、同研究室の心理士の人がしゃべる、というので、彼らの提示した、「双極性障害におけるWCSTの成績低下」について、「カテゴリーを黙って途中で変更します」と事前に患者に伝えるのか、と尋ねたら、精神科患者に使うときは説明しないのが普通でしょう!と当たり前のように言われた。前頭葉損傷患者では教えても出来ないわけで、いわゆる前頭葉機能とは別の側面を調べているのではないか、と追求したら、鹿島先生たちの主張も知ってはいるらしく、精神科患者では教えたら改善すると思うし、確かに違う側面を見ているかも知れない、とのことであった。しかし、それなら、いわゆる前頭葉機能ではなく、「自分の過ちでなく、テスターが被検者に断りなくルールを変更してしまったために自分の答えが間違ったと判定されていることに気づく能力」を見るという、大変複雑な試験になってしまい、適当に「達成カテゴリー数」などと数値化して有意差を調べることに何の意味があるのだろうか。その方が差がでるから、ということで、意味づけを放棄して使っているような印象を受けた。こういうことはもっとちゃんと議論しないと、学問が進歩しないだろう。

 Plenge(P0-018.10)は、リチウムを11回の注射と食事に混ぜた場合と、異なった方法で投与し、脳のDNAマイクロアレイを行った。その結果、餌に混ぜた場合は、注射に比べて飲水量が顕著に増えることを示し(知ってるよ、それ…[])、リチウムは投与間隔を開けて腎臓を休ませた方が良いのだ、と述べた。わざわざマイクロアレイを使った研究をしているのに、主たる結果は、「投与間隔を開けた方が良い」との内容で、いったいどういう人かと思ったら、以前7Li-MRSの研究もやっていて、2日おきでも脳内濃度は一定だ、という論文を書いた人でした。粘りがあるなあ…。

 

非定型抗精神病薬

非定型抗精神病薬がneurotrophicな作用を持つことが一般に認められるようになってきた。定型では灰白質体積が5年間で有意に減るが、非定型では減らない。この作用は、セロトニン1A受容体刺激作用を介したものだという。

 

その他

 rTMS(経頭蓋磁気刺激)の作用機序などについての話が多かった。

 Dexamthazoneの代わりにpredonine(こちらはグルココルチコイド受容体と同時に、ミネラルコルチコイド受容体も阻害する)を用いたPSTというのが試みられていた。色々データーがでていて、DSTとは違った側面を反映する、ということであったが、DSTより良いという証拠があるわけではなく、あまり説得力はなかった(S42)

 56時間の断眠と48時間断眠+8時間睡眠では、いずれも神経新生が障害されていたという。やはり断眠するなら最低48時間必要なようだ。 

 某社のサテライトシンポジウムは、「統合失調症も双極性障害もうつ病も、症状には共通点が多く、どれも非定型抗精神病薬が効く」との内容であったが、専門家向けでこれはないだろう…というような、少々お寒い内容であった。途中で出てしまったので、あまり文句を言う資格はありませんが…。

 

ADHD

 サテライトシンポジウムでレビュー的な講演を聴いた。Geneticsについては、SchizoBipolarよりよほど一致した結果がでており、うらやましい位だ。とはいえ、オッズ比は2未満だが…。

 サテライトシンポの目的はメチルフェニデート徐放錠の宣伝らしかった。徐放錠だと、急性投与による自覚症状が少ないため、依存、乱用になりにくく、成人でも使える、ということのようであった。その量確か1.3mg/kgという、かなり大量なものであった。

 

ベストプレゼンテーション

学会を通して、特にプレゼンテーションが良いと感じたのは、Dr. PerianteInst of Psychiatry, 抗うつ薬のステロイド受容体への影響)、Dr. Michael Koch(ドイツ、統合失調症の動物モデル)、Dr. Barry L. Jacobs(神経新生)などであった。

 

何となく、セッションが多い割に参加者の少ない、寂しい学会だったかなあ?という印象であったが、こうして書いてみると、意外に色々収穫があったかも知れない。