躁うつ病の文献紹介

  躁うつ病に関する書籍・文献を紹介するコーナーです。

                              最初のページに戻る

うつ病治療の基礎知識 加藤忠史著 筑摩選書 1600円+税 NEW (2014/2/15)  

うつ病の治療に関する本を書いて下さい、と言われた時は、うつ病の本は多数あると思ったのですが、意外に医学的観点から診断、薬物療法、心理療法等を網羅した新しい本は少ないようです。DSM改訂と治療ガイドラインを軸に解説しました。『うつ病について、当たり前のことが普通に書いてある本』を目指しました。もちろん、うつ病と双極性障害との鑑別、そして双極性障害の治療についても書いてあります。詳細はこちらをご覧下さい。  http://www.tadafumikato.com/?p=127

双極性障害(躁うつ病)の人の気持ちを考える本 加藤忠史監修 1404

 双極性障害の人の気持ちはどんなだろう、と周りの方に考えていただくための本ですが、もちろん当事者の方にもご利用いただけます。この本を監修して、特にイラスト入りの本の場合は、チーム作業であることを実感しました。少しでもご本人の気持ちに寄り添った本になるように、と当方のお願いで何度も何度もイラストや文を書き直して下さったスタッフの皆様に心より感謝申し上げます。この本が少しでも皆様のお役に立てればと願っております。

躁うつ病に挑む 加藤忠史著 日本評論社 1575   

雑誌「科学」に5年半にわたって連載したエッセイ「脳と心の交差点」をまとめた本です。その後、状況が変わったことについては、後日談を加え、新たな章も加筆しました。双極性障害やうつ病の研究についてを中心としつつ、研究倫理、出版、インターネットなど、さまざまな話題について述べました。系統的な教科書ではないので、目についた章からご覧いただければと思います。それにしても、この5年半というのは、精神疾患とその脳科学研究を巡る環境が激変した期間だったなあ、と感慨深いです。

「双極性障害」ってどんな病気? 「躁うつ病」への正しい理解と治療法 加藤忠史監修 大和出版 1365   

双極性障害について全く知らない方向けです。図版が中心なので、他の本は文字ばっかりでちょっと、という方に良いと思います。絵が中心なだけに、誤解が生まれては大変と思い、色々注文させていただきましたが、このように完成して下さって、ほっとしました。100ページ足らずの本とはいえ、内容的には基本的なことは大体入っているのではないかと思います。

躁うつ病はここまでわかった 第二版: 患者・家族のための双極性障害ガイド 日本評論社 加藤忠史&不安抑うつ臨床研究会編 1680   

2007年に刊行された「躁うつ病はここまでわかった」を改版したものです。前版からの5年間は、日本の歴史の中で双極性障害の治療や認識が最も大きく動いた期間かも知れません。適用拡大への対応、対人関係社会リズム療法、症例変更、セカンドオピニオン掲載等などが主な変更点です。5年間の研究の進歩の対照表もつけました。この改訂が『ここまでわかった』という題名に沿った内容になっていると良いのですが。ご多忙の中、改訂して下さった先生方に感謝申し上げます。

脳(ブレイン)バンク 精神疾患の謎を解くために 光文社新書 加藤忠史&ブレインバンク委員会 882  

双極性障害の治療法、診断法は、未だ満足のいくものとは言えません。精神疾患を解明し、根本的な治療法、診断法を開発するためには、亡くなった方の脳を直接調べる研究がどうしても必要です。しかし、脳を調べてもわからないと思われてきた精神疾患では、亡くなった方の脳を大切に保存して研究に役立てるということが、これまでほとんど行われてこなかったのです。

精神疾患の原因を解明し、治療法・診断法を開発して、これを克服するためには、ブレインバンクを設立して、研究を進めることが必要です。そのため、日本生物学的精神医学会では、ブレインバンク設立委員会を作り、検討を行ってきました。そして、ブレインバンクの必要性をご理解いただくために、当事者の方、ご家族の方と共に、この本を書きました。

対人関係療法でなおす 双極性障害 躁うつ病への対人関係・社会リズム療法 水島広子 創元社 1575円   

本邦における対人関係療法の第一人者による、日本では初めての対人関係・社会リズム療法(IPSRT)に関する、一般向けの本です。対人関係・社会リズム療法が双極性障害の予防に有効なことについては、拙著でも少し紹介しましたが、実際に受けられる場所は、というと、ほとんどないのが現状です。(水島先生のクリニックも、もう予約で一杯のようです。) しかし、社会リズム療法は、この本で基本を学べば、ある程度自分でも出来ると思います。主治医とご相談の上、この本を参考にしながら進めることは、十分可能かも知れません。

うつ・不安に効く7つのステップ ケータイ式認知療法 大野裕 大和書房 1200円 

 中等症以上の大うつ病では抗うつ薬が中心になるとはいえ、軽症の大うつ病では、認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy)と抗うつ薬の効果には差がないとも報告されています。
 しかし、実際に認知行動療法を受けようとしても、受けられるところは少なく、認知療法専門の臨床心理士は予約で何ヶ月待ち、しかも11万円前後という料金では、誰もが気軽に受けるという訳にはいきません。この状況は米国でも似たようなもので、そんな中期待されているのが、コンピューターを用いた認知行動療法(Computer Assisted CBT)です。米国では既に実用化されており、心理士が行う認知療法と同等の効果があるとの報告(Wright et al, 2005)もありますが、日本ではまだそのようなソフトウェアはありませんでした。
 この度、ケータイを用いた認知療法サイト(うつ・不安に効く.com)ができたそうです。このサイトを監修されているのは、何と日本認知療法学会の理事長でもある大野裕先生。そして、これがそのガイドブックです。
 私のような、携帯電話の使い方を子どもに尋ねているような者には使いこなせそうにありませんが、ケータイ世代の人たちには朗報だと思います。
 双極性障害専門バージョンもできると良いですね。

双極性障害 −躁うつ病の対処と治療」 加藤忠史著 ちくま新書 861 

 200916日発売ですが、内容は増刷のたびに更新しています。身近な人が躁うつ病になった時にどうしたらよいか、自分がかかったらどうしたら良いかなど、躁うつ病という病気に対する対処法、治療法を中心に、読みやすいように心がけて書きました。
 一般向けの本ではありますが、理研脳センター・精神疾患動態研究チームの最近の研究成果などを紹介した「年輪の会」での講演録(「双極性障害の最新研究」)、患者さんやご家族の方々との質疑応答、最近の話題(抗うつ薬と自殺の問題、抗うつ薬の臨床試験データの読み方、小児双極性障害についてなど)なども盛り込みましたので、このホームページをチェックされる程十分な知識をお持ちの方にも、何かお役に立てるところがあるのでは、と思います。
 http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480064653/
(注:現在発売中の第5[20142月改訂]では、DSM-5改訂や適応追加など、新たな状況への対応を加筆・改訂してあります。ご購入の際は、ご確認下さい。)

「私のうつノート」 読売新聞生活情報部  中央公論新社 2008年 1260

読売新聞の龍野記者が、双極II型障害の闘病体験をつづった、読売新聞で好評を博した連載記事をまとめた前半と、更なる取材を加えてまとめた後半からなる本です。
 前半は、さすが記者さんだけあって、表現力があり、年末年始の旅行を、「サンゴ礁の沖縄から第九を挟んで、雪の舞う新潟へ。まるで交響曲のようなプランだ」と語っているところなど、いかにも軽躁状態らしいビビッドな表現だと思いました。
 また、奥様の態度の変遷も、最初の薬に反対するシーンなどは特にリアルで、ご家族にとっても共感できるのではないでしょうか。その後、奥様もだんだん病気への対処法がわかってきて、適切に対処してくれるようになり、最終的には雨降って地固まる、という感じで家族がまとまり、ホッとしました。
 また、新聞記者の方が何を目標にして仕事をしているかについての記載もあり、研究者とそっくりで人ごととは思えませんでした。
 月曜朝の通勤電車に乗る練習、残業、夜勤なしという条件での復職など、復職までのプロセスも丁寧に書かれており、うつ病から復職される方には特に参考になると思います。
 後半の「変わる常識」やリワークに焦点を当てた部分も、とてもup-to-dateだと思いました。
 本書で紹介されているうつ病の社会復帰プログラムのようなレベルの高い治療が、全国の病院で受けられるようになってくれるとありがたいのですが、現状では、こうした治療を受けられる施設は多くありません。最近、保険制度の制約から、短期入院が推奨され、病院内では、在院日数を短縮することこそが正義のように扱われる風潮があります。管理医療が徹底している米国では、このような「教育入院」は、そもそも認められないでしょう。日本でも、放っておくとこのような入院はコストがかかる、と認められなくなり、自費診療の高い治療費を払える人だけがこうした最高の治療を受けられる、ということになりかねません。日本の医療システムを変革するとしても、アメリカはモデルにならないし、どういう方針でやっていくべきなのかと考えさせられます。

躁うつ病とつきあう 第2版 加藤忠史 日本評論社、1500円、2008年 

筆者が1998年に書いた一般書が、10年目にして、改訂されることになりました。第1版の内容については、細かな変更点について改訂を加え、巻末付録を削った上で、新たに3章を加筆し、新たな巻末付録「躁うつ病を知ろう」を加えました。その結果、3分の1が新しい部分となっています。
 実は、10年もたったのだから、双極性障害の治療の進歩によって内容が古くなっているだろう、時代遅れの部分は全て削除しよう!と思ってチェックし始めたのですが、この10年の双極性障害の治療の進歩は思ったよりもはるかに少なく、少々がっかりでした。
 双極性障害に関心がない方にも、ノンフィクション小説として気軽に読め、さりげなく、双極性障害にまつわる話題がほぼ網羅されている、ということを目指した本です。
http://www.7andy.jp/books/detail/-/accd/R0348733
Amazon

躁うつ病はここまでわかった 加藤忠史&不安・抑うつ臨床研究会編 日本評論社 1600(+) 

 200724日(日)に行われた講演会、「躁うつ病はここまでわかった」をまとめた本です。当日は、時間の関係で多くの御質問にお答えできませんでしたが、本の中では、なるべく多くの御質問に回答するようにいたしました。講演の内容に加え、躁うつ病体験者である敷島カエルさんの心にしみるエッセイが加わって、単なる講演のまとめ以上のものになったと思います。当日、ご参加いただいた皆様、質問をいただいた皆様、どうもありがとうございました。
Amazonで注文できます
毎日新聞2007年12月19日朝刊で紹介されました

こころの科学 特別企画 「双極性障害」 (加藤忠史 編) 日本評論社 1200円 

 私が編集を担当した特集号です。
 この雑誌が躁うつ病を取り上げるのは10年ぶりとのこと。
 巻頭で、エッセイストの斉藤由香さんにインタビューさせていただきました。
 http://www.nippyo.co.jp/maga_kokoro/index.htm

ER緊急救命室VII(セブンス)DVDコレクターズセット(6枚組15750円)、ワーナー・ホーム・ビデオ 

実は私はまだ観ていないのですが、長崎大学精神科の小澤教授オススメのビデオ。
アメリカの有名なロングランテレビ、「ER」の、シリーズVIIに、双極性障害の話が登場するとのこと。ERに勤務する女性(アビー)の元に、彼女の母親が躁状態でハイテンションで登場。
双極性障害患者を家族に持つ者の心情がよく描かれているとのことです。

→その後、レンタルして、ER VII  第6話「突然の訪問」、 第7話「だれか助けて」を観ました。患者さんの気持ちはあまり切実な感じでは描かれておらず、むしろ娘であるアビーの立場から、家族の気持ちがよく描かれています。ただ、躁うつ病以外の過激な部分が、私としては何だか疲れてしまいました。その後、第19話 「出帆」、第20話 「強制収容を逃れて」あたりまで、話は続くそうです。

あの人が躁うつになったら 双極性障害の伴侶とともに ジュリー・A・ファスト、ジョン・D・プレストン著、田中雅子訳 オープンナレッジ 1500円 2006年 

 配偶者が双極性障害になった場合、どうやって対処したら良いかを、詳細に述べた本。その内容は、原題、”Loving someone with bipolar disorder: Understanding & helping your partner (双極性障害を持つ誰かを愛するということ: あなたの伴侶を理解し助ける)”の方がわかりやすいかも知れない。著者の夫婦は、二人とも双極性障害で、妻はフリーライター、夫は臨床心理士というだけあって、全体に認知行動療法的な考え方に貫かれていながら、日常の言葉で書かれている。アメリカ的で、日本でそのまま役に立つとは限らない部分もあるが、全体として、かなり有用だと思う。例えば、冒頭では(p13)、パートナーの状態を10(安定していてあなたと一緒にがんばりたいという気持ちがある状態)から最低の1(症状があまりに重くて一緒に取り組めない場合)までに表してみて、1の場合にはまずあなたひとりで取り組み、「厳しい状況にある場合にはまず自分のことを考え、本書の助言に従ってあなた自身が変わることです」と書かれており、パニック状態になってしまっている配偶者の気持ちを整理するのに役立つと思われる。また、パートナーが自分の話している内容と全く別のことを話しているように感じられた時、これは「双極性障害の会話」である、と定義し(第8章)、こうした場合、「ちょっと待って! 双極性障害が話しているみたいだけど、私は双極性障害と会話をするつもりはない。パートナーとしか話さない」ときっぱり言うように勧めている。こうした実践的な内容が多く、内容が豊かなだけに、全部読むのは骨が折れるかも知れないが、役立つのではないだろうか。

 何よりも、こうした本が日本で出版されるようになったこと自体、10年前には考えられないことであり、ありがたいことだと思う。

こころだって、からだです 日本評論社、1,500(税込み1575円)2006

 私としては、「躁うつ病とつきあう」以来、2冊目の一般向けの本です。躁うつ病専門の本ではなく、精神疾患全般について一般向けに解説した16章と、脳と心に関するコラム16編からなる本なのですが、もちろん、躁うつ病についても、研究の最前線を含め、解説しました。大好きな中島らもさんの言葉をタイトルに使わせていただけることになり、何より嬉しく思っています。
(編集者の方から予定価格を聞いた時には、『値段の割に内容が物足りない』と言われそうで気が滅入りましたが、Amazonで購入する際、1500円未満にすると送料がかかってしまい、逆に高くなるのだそうです。せめてぎりぎりの値段にしてもらいました。)

ケイ・ジャミソン、躁うつ病を生きる、新曜社、2400円、1998

 自らが双極性障害(躁うつ病)を持ち、なおかつ双極性障害の研究者である、という希有な経歴を持つJamison博士が、自らの躁うつ病体験を研究者の視点で振り返った本です。翻訳本のためやや読みにくい部分もありますが、一読の価値があります。

自殺って言えなかった。 自死遺児編集委員会・あしなが育英会/編、サンマーク出版、1300円、2002

 父親の自殺という、乗り越えがたい事態に直面した自死遺児たちが、悲しみ、考えないようにする、自責、怒り…という、心を閉ざした年月を経て、仲間とのふれあいの中で始めて父の死を受け入れ、再び生きる意志を取り戻すまでの心の動きをつづった本。彼らの痛切な心の叫びに対しては、どんな評も軽々しく思えて口に出せず、とにかく読んでみて、という他ありません。

「心が雨漏りする日には」 中島らも著、青春出版社、1300円、2002

 中島らも氏の本は好きで何冊か読んでいたので、氏がアルコール・薬物依存症らしいとは思っていたが、雑誌の記事で、どうやら依存症以外に本格的な双極性障害も煩っていたらしいことを知った。早速書店で探したら、この本が見つかった。やはり才能ある作家は違う。躁状態の精神内界が表現力豊かに書かれていた。ただし、これは治ってから書いたものであって、躁状態の時は、マス目を一字一字生めるような地道な作業はとてもできる状態ではないそうだ。彼がコピーライターとして書いた言葉、「こころだって、からだです」は名言だと思った。P153の言葉も印象に残った。「また、躁うつ病とも一生つき合うことになると思っている。これはあきらめや覚悟とは少し違う感情である。(中略)この躁うつ病にも何かの意味というか、因果関係がある。それをそのまま引き受けるしかないのが、おれという人間なのである。こんな風に考えて悲壮感などは抱かないようにしている。」 今後は病気をちゃんとコントロールして、作家として良い作品を発表し続けて欲しい…と思っていたが、2004715日に、階段から転落して頭部を強打し、脳挫傷により同月26日亡くなられた。(享年52歳)。誠に残念である。

ウイリアム・スタイロン、見える暗闇、新潮社

 自らがうつ病に罹患した作家が、うつ病体験をつづった本。うつ状態の患者が自殺へと追いやられている精神状態が克明につづられ、臨場感がある。ただ、著者はトリアゾラムのせいでうつ状態が悪化したと思いこんでおり、不適切な記述があるのが難点。(もちろん実際はトリアゾラムがうつ状態を悪化させるとは考えられていない。)

最初のページに戻る