双極性障害と診断されるまでの16年間
はじめまして、わたしは41歳専業主婦です。半年くらい前からホームページ拝見させていただいています。とても解りやすくて参考になりました。ありがとうございます。
このような専門知識の乏しい患者やその家族そして全ての人に、正しい情報を提供してくださるホームページに感謝します。
わたくしごとですが、16年前発病し精神病院へ入院しました。病名は「抑うつ神経症」でした。3年間入退院を続けましたが、
思わしい結果が得られませんでしたので、転院しました。そこには9年間通院しましたが同じでした。結局12年間薬物治療と共に7年間の精神分析も受けました。精神分析の先生が心臓麻痺で急死して以来4年間わたしはひきこもりました。
1年前パソコンを購入してもらい自宅で自分の病気について、そしてひきこもりから抜け出す方法について探しました。その結果紆余曲折ありましたが、A大病院で検査をしていただき、現在薬物治療をB大学病院で行っています。病名は「ラッピットサイクラー」でした。
誤診さえなければというやりきれない気持ちはあります。医師に人格障害、性格障害、境界例ではないかと言われた言葉も忘れられません。A大病院で家族面接をしてくださった医師に対して家族が「その診断が正しいか否かは誰が診断してくれるのでしょうか」と言った言葉もわすれられません。
たしかにラピットサイクラーになってしまった原因は過去の誤診です。しかしその病院、医師を信じたのはわたしですし処方された薬を飲んだのもわたしの意思ですから今更仕方が無いと思っています。むしろ最初に担当してくださった先生には生意気で理屈っぽいわたしに、よくぞ3年間もお付き合いくださったと感謝しています。
またその後9年間担当してくださった先生には人として生きていく基本的なこと。親に躾られて当然なことがきみには何も躾られていない。といってビシバシ教育されました。とても感謝しています。
そして中断もありましたが7年間精神分析(カウンセリング)をしてくださった先生はわたしを初めて全面的に受け入れてくださった人でした。
母親以上に母親的存在でした。自分を受け入れるということは大変な作業ですね。それが出来なければ親や兄弟、夫や子供を受け入れることが出来ないのですから。
わたしは今こうして生きていることに感謝しています。
多くの自殺していった友に対して、
わたしは最後まで病気と共に生きていくつもりでいることを毎年伝えています。
患者とその家族はもっと病気について正しい知識を得るべきです。
そして医師や社会はその手助けにすぎません。
そうすることでかけがえのない命の尊さと、生きがいのある人生を誰もが手にすることを祈りるばかりです。
最後にこのような機会を提供してくださった加藤先生に心から厚く御礼申し上げます。
梅の花が咲き、辛夷の花が開き、もうすぐ桜の花が咲くことでしょう。
本郷近辺には名所がたくさんあって良い季節ですね。
お身体大切にご自愛ください。
加藤よりコメント
メールありがとうございます。
正しく診断されるまでの長い間の病気との格闘、大変な思いをされたことと思います。
米国における360人の患者さんの調査では、双極性障害の方が、初めて病相が出てから診断されるまでには、平均9.3回の病相と、8.3年の歳月を要したとのことです(Baldessarini 1999)。
医師の診断に対する不信感、正しく診断されなかったことへのやりきれなさは忘れられないと思いますが、決してあなただけのことではなく、他にも多くの方々が同じようなやりきれない思いをしておられることだろうと思います。
Baldessarini RJ, et al
Latency and episodes before treatment: response to lithium maintenance in bipolar I and II disorders. Bipolar Disord. 1999 Dec;1(2):91-7.