ECNP(ヨーロッパ神経精神薬理学会)2005参加記(20051026日) 

 

 本学会は1021日〜26日、アムステルダムにて行われた。(25日まで参加した。)

ECNP参加は初めてであるが、シンポジウムで「Is Bipolar Mitochondrial Disorder?」というタイトルで話してくれ、と言われたら断るわけにはいかないであろう。

Dutch Weatherと呼ばれる重苦しい雨模様の中参加してみると、韓国等、アジアからの参加者も少なくなかったものの、スピーカーはほとんどヨーロッパと北米で、アジアのスピーカーは筆者のみのようであった。何となく内輪の学会に紛れ込んだような疎外感を覚えたが、日本の国内学会に参加した外国人の気持ちもこんなものかも知れない。

 

モノアミン仮説を再考する

22日のサテライトシンポジウム「NDRIs: The future of treating major depression」は、画像、薬理など多方面から、うつ病とドーパミンの関連を述べる講演が並び、興味深かった。なお、NDRIとは、ノルアドレナリン・ドーパミン取り込み阻害薬の略で、主としてbupropionのことをさしているようであった。Bupropionによる臨床試験では、SSRIとほぼ同等の作用が示されている。

中でもDr. Philip Cowen (UK)の話がなかなか面白かった。トリプトファン欠乏食によるセロトニン欠乏とAMPT投与によるノルアドレナリン・ドーパミンの欠乏を比較すると、前者は7時間後にハミルトンうつ病評価尺度で10位まで悪化するのに対し、後者は10時間後で25位まで症状が現れる。セロトニン欠乏の影響は主として不安などに現れるが、NA/DA欠乏は興味喪失、制止など、うつ病の中核症状に関係している(Berman 1999)。 

より最近では、CitalopramSSRI)とReboxetine (選択的ノルアドレナリン取り込み阻害薬)を健常者に投与し、感情を伴う表情の認知への影響を見た研究がある(Harmer 2004)。Reboxetineで自覚的な活力が増えた他は、両者とも気分には明らかな影響はなかった。にもかかわらず、SSRIでは、否定的な感情を持つ表情を幸福な表情と誤認する変化が見られた。(これはS23.04でもっと詳しく紹介された)

 最近は、抗うつ薬の効果発現に12週間かかることを根拠に、セロトニン、ドーパミンが気分を制御しているとは言えず、神経可塑的変化が重要、ということになっているが、確かに欠乏食の所見からは、モノアミンが直接気分を制御しているようにも見える。なぜ欠乏では数時間以内に症状がでるのに、抗うつ薬の効果発現に何週間もかかるのか?と質問したところ、長期にうつ状態が続くと、二次的に認知なども変化しており、こうした変化も含めて治るのには時間がかかるのではないか、との回答であった。

 また、抗うつ薬は健常者の気分には影響しないということになっていたが、確かに自覚的気分には影響しないが、感情の認知に影響するということのようである。

 抗うつ薬の作用の遅れと欠乏食のデーターの間には食い違いがあり、解釈は一定しないが、モノアミンはやはり何らかの形で気分制御に関与している可能性はあると思われた。

 

双極性障害について

筆者が発表した23日のシンポジウム「Bipolar Disorder」は、朝一番で数百名収容の大きな会場で行われたが、会場がほとんどいっぱいになるほどの盛況であった。

 筆者の「Is bipolar disorder a mitochondrial disorder?」を皮切りに、スペインのDr. Anabel Martinez-Aranによる神経心理学的所見についての話、オランダのDr. Ralph W. Kupkaによる急速交代型についての話、アメリカ(ワインバーガー研)→オーストリアのDr. Lukas PezawasDr. L. Trevor Youngと続き、基礎から臨床まで、充実したシンポジウムとなった。

双極性障害の治療についてのシンポジウム(S13)もあった。

双極性障害のうつ状態に、非定型抗精神病薬クエチアピンが単剤で有効だという臨床試験の結果が最近Am J Psychiatryに報告されたが、ほぼ同じデザインの臨床試験で同様の結果が得られ、かなり確実な所見だとのことであった。双極うつ病に対するオランザピンの臨床試験では、オランザピン+フルオキセチンの併用のみで有意だったので、非定型抗精神病薬としては初であるだけでなく、双極うつ病の臨床試験でpositiveな結果がでたのは、ラモトリジン、オランザピン+フルオキセチンについで3つ目である。クエチアピンは、統合失調症の薬として既に日本でも(珍しく!)発売されており(セロクエル)、難治な双極うつ病に対して初めて日本で利用可能な薬がでてきたということで、(保険適用外ではあるが)福音である。効果が1週間目から現れるという、急速な効果が特徴とのことであったがこれは1日目に50mg2日目に100mg3日目に200mg4日目に300mg、と4日で300mgまで増やすという独特のプロトコールにもよるようだ。300mg600mには差がなく、300mgが推奨される。副作用としては、口渇、鎮静、傾眠が多い。眠気は特に投与初期に強く、服用継続でだんだんましになるという。

 

新薬開発の現状について

新しい抗うつ薬についてのシンポジウム(S11)や他のセッションで紹介された新薬には、

     AMPA受容体potentiator LY392098

     NA/5HT/DAモノアミン取り込み阻害薬 DOV 216303

     Neuroplastiity enhancer Tianeptine

     5-HT1A/1B アンタゴニスト AR-A000002

     Galanin受容体阻害薬 M35

     メラトニン受容体アゴニスト Agomelatin

     バゾプレッシン受容体アンタゴニスト

 などがあった。

TianeptieAgomelatineは既に使われており、他の多くも臨床試験が行われている。このように全く新しい作用機序の抗うつ薬がどんどん出来ているとは知らなかった。まあ日本人には関係のない話であるが…。

抗うつ効果を速くさせる方法は?というシンポジウム((P2.147)では、セロトニン1AノックアウトマウスではSSRIによりセロトニン上昇が顕著になることから、1AアンタゴニストであるpindrolDU-125530が抗うつ薬増強効果がある、というような話であった。また、2C阻害もセロトニン上昇を強める。(これはオランザピンとフルオキセチンの併用療法の根拠か)。

また、アスピリンを併用すると抗うつ効果が強まる、という動物実験のデーターも出され、臨床のオープン試験でも有望とのことであった。

各新薬の背景

Galaninは縫線核のセロトニンニューロンに共存しているペプチドである(S11.03)。その受容体はGalR1GalR2があり、R2は縫線核、青斑核に局在し、R1ubiquitousに存在する。Galaninは、in vitroで縫線核ニューロンの発火を抑制する。In vivoでも、ガラニン投与はセロトニンを減少させる。ガラニンはFSTで無動時間を増やし、ガラニンアゴニストは短縮させる。2分のFSTで海馬のセロトニンは増加(150%)するが、ガラニンのトランスジェニックマウスでは、セロトニンの増加がより顕著(3倍近く)である。

 Agomelatineは、メラトニン12の両受容体への作用と同時にセロトニン2C受容体阻害作用を持ち、これらが作用に関与しているという。この薬は色々なモデルで効果があり、tree shrews?のsocial defeatにも効果があるという話であった。また、agingblindphase-delayなどによる再同調にも効果がある(メラトニン受容体を介したもの)。臨床的には、重症患者にも有効であることが強調されていた。

日本の新薬事情

それにしても、日本の状況はまことに悲しい。本学会でポスターを見ていても今ひとつピンと来ないものが多いなあと思っていたら、よく見ると、ポスターで議論されている薬のほとんどは日本では使えないものである。会場で製薬企業の方々にも色々お話を伺うことができたが、日本の新薬承認は本当に世界一厳しいらしい。厚生労働省から色々指導をうけているうちに、次第に資料が古くなり、「この資料は古い」ということでまたやり直し…と全く冗談にならないことになっているらしい。双極うつ病の治療薬として心待ちにしているlamotrigineも、いつ承認になるやら、わからない。

 呉秀三の、「我が国の精神病者は、実にこの病を受けたるの不幸の外に、この国に生まれたるの不幸を重ぬるものといふべし」との言葉は、現代にも当てはまるのか…。

 この状況、何とかならないかと思う。

 

うつ病の動物モデルとその評価法としてのSucrose Preferenceについて

うつ病モデルとして、これまで絶望モデル(FSTTSTLH)についてしかあまり考えていなかったが、もう一つのモデルとしてchronic mild stress(CMS)というのがあるらしい。これは、食事制限、ホワイトノイズ、孤立飼育、床を傾ける、等の軽いストレスを次々と1ヶ月与えるモデルで、これによりsucrose preferenceが低下する。この低下は終了後5週にわたり続く。このモデルを作ったWillner自身によるプロトコールについての最近の総説を参照するようにとのことであった。ラットで確立されたモデルではあるが、マウスでもやっている人はいるという。CMSでは、他にejaculationの低下が見られる(P1.149)。また、BDNFの低下が見られた。

sucrose preferenceのプロトコールでは、最初の7日間同じ場所にボトルをおき、次の2日、場所を反対にし、その後また戻す、という風にしているという。また、明かりは暗い方がよいとか、再現性のあるデーターを得るには色々コツがあるらしい。

Dr. E. Fuchsの発表によると、うつ病の動物モデルは

1) 古典的抗うつ薬モデル                                                 絶望テスト(強制水泳、尾懸垂)

                                                                                                学習性無力

                                                                                                嗅球摘除

2) サーカディアンリズムに関するうつ病モデル             慢性軽度ストレス(CMS)(?)

                                                                                                transgenic model(?)

3) 不安にかかわる抗うつ薬モデル                                 孤立攻撃的マウス

                                                                                                ビー玉埋めテスト

にわかれるという。これらうつ病モデルは評価法と表裏一体というか、評価法そのものがモデルとなっており、それぞれには互換性がないようであった。(ただし、このプレゼンの言いたいことは、agomelatineは全てに効くすばらしい薬だということだが…。)

最近、CMSが流行らしく、ほとんど全ての抗うつ薬はこのモデルに対して有効だという。PolandPappという人が、多くの製薬会社の新薬テストを一手に引き受けているようであった。なお、このDr. Pappの評価法は、毎週1回、14時間の絶飲絶食の後に、1時間のみショ糖入りの水を置き、飲む絶対量を測定するものであった。これだと、口渇など他の要因も関与するように思われ、水と比較する方法の方がより正確ではないかと感じた。

Chronic ultra mild stressという、床を傾けたり、ちょっとしたストレスを繰り返す、というモデルを作ったという人もいた(S11.05)。ところが、このモデルでは神経新生が増えるという、予想と逆の変化がでたという。会場から、「それはenvironmental enrichmentとして影響しているのでは」と突っ込まれていた。確かにその通りに思えた。

また、遺伝的なうつ病モデルの試みもあり、GRのアンチセンスRNAを発現するトランスジェニックマウスを作成し、この動物では、デキサメサゾン抑制試験が非抑制となり、神経新生が減るなどの変化が見られた、との報告があった(S11.05)。肝心の行動異常については発表がなかった(と思う)。 

 

Mitochondria

 Ben Shachar Dのグループは、SH-SY5Y細胞にドーパミンをかけると、complex I活性が低下し、ATP量が減る、ということを報告していた。しかし、NDUFV2など重要なサブユニットのmRNAや蛋白量には差がなく、他のメカニズムだという。統合失調症患者の血小板では、ドーパミンによるcomplex I低下がより顕著とのことであった。

 Olson Lらは(S08.01)、TFAM-LoxPマウスをDAT-Creマウスと組み合わせて、ドーパミンニューロン特異的にミトコンドリア機能障害を起こさせた、パーキンソン病のモデルマウスを作成した。このマウスではゆっくりとドーパミンニューロンの神経細胞死がおき、43週頃には目立ってドーパミン神経が死んだ。まずは黒質から変性が生じ、VTAはその後に変性した。変性ニューロンには、αシヌクレインが蓄積しており、パーキンソン病の病理がmimicできていた(ということだと思う)。このマウスにはL-dopaが奏功し、薬物のテストに利用可能と思われた。

 神経変性疾患におけるミトコンドリア機能障害(S16.05)という発表では、Reactive Oxygene SpeciesによるDNA障害は、特定の遺伝子のプロモーターを傷害する傾向があり、mRNAレベルではシナプス関連、Ca2+シグナリング関連、ミトコンドリア関連が低下し、炎症、ストレス反応、DNA修復関連が増加するという。精神疾患患者の死後脳で見られる変化がこれらと重なりが多いように見えた。この人は、なぜ変性疾患でミトコンドリアなのかと質問されていた。その返答を意訳すると、確かに変性疾患の原因はより上流の部分にあり、ミトコンドリアは非特異的である。しかし、だからこそ共通の経路として治療研究の標的になりやすい、という。確かに、神経変性疾患は多数あり、全てに特異的治療を作るのは経済的にも見合わない中で、共通の部分に対して創薬研究を行うという発想はありうると思った。自分の発表で質問された時は、「まだ双極性障害に特異的な部分がわかっていないので、それを見いだして特異的治療につなげたい」と逆のことを答えただけに、考えさせられた。変性疾患研究の方が20年進んでいることを考えれば、先達に学ぶべきであり、非特異的だからこそ幅広い病気に効く良い薬ができる、という発想もあると思った。

 

DNAマイクロアレイ

Gene Expression profiling: from start to finish(S19)というシンポジウムは、Dr. Weinberger が座長で、Dr. Bunney, Dr. Mirnics、など、アメリカで死後脳マイクロアレイ研究を行っている人たちがスピーカーで、今回最も楽しみにしていたものだったが、内容は死後脳マイクロアレイ研究のpitfallという感じであった。最初の4人は皆問題点を列挙して警告することが主眼のようであった。30秒ですむからマイクロアレイの写真をひと目見て確認するように、とも強調していた。

Dr. Geschwindは、GenSatGFPマウスを使って、FACSで細胞を集めて、マイクロアレイを行う、FACS-Arrayの方法について語っていた。皆考えることは同じか…。

Dr. Weinbergerグループの若い研究者(Dr. Colntuoni)の発表によると、Dr. Weinbergerグループは、これまでSNPと画像の関係をずっと追求してきたが、現在、SNPと死後脳の遺伝子発現の関連をかなり集中して調べているようだ。この研究ではNの大きさが何より重要であるということで、数百人単位でマイクロアレイを行っているようであった。また、laser capture micro-dissectionで、大脳皮質の各層に特異的な遺伝子をとってきて、これを使って皮質構造をきれいに染め分けたスライドをだしていた。

 Dr. Mirnicsは、統合失調症、双極性障害、うつ病、アルツハイマー、てんかん、パーキンソン、多発性硬化症、自閉症など、どのマイクロアレイ研究でも、にたようなカスケードの異常(プレシナプス蛋白、オリゴデンドロサイト、転写因子、GABAニューロン、ミトコンドリア、RGS4)がでてくる、指摘し、その理由について明確な考えは述べなかったが、注意を喚起していた。統合失調症の遺伝子発現変化のまとめスライドでは、我々の論文は無視されていた。文句を言いたかったが、彼は強面でちょっと…。

 Dr. Weinbergerは、GRM3でエクソン4のスプライス異常を起こすSNPNRG1でもスプライスバリアントを増やすSNPを見つけたと報告していた。NRG1は、ハプロタイプとの関連は一致しているものの、functional SNPが同定できていなかったので、重要だということのようだ。また、DISC1についても、ハイリスクgenotypeNUDEL発現を減少させるとのデーターを出していたが、そのメカニズムには至っていないようであった。

 いずれにしても、死後脳のマイクロアレイの領域にワインバーガー博士が乗り出してきたので、今後この分野も大変なことになりそうだ…。

 

バゾプレッシン

 最後にきいた発表(S22.05)はなかなか興味深かった。彼らは、ラットで、高架式十字迷路の成績の両極端なものを選んで交配を重ねることで、高不安ラット、低不安ラットの系統を作ることに成功した。ここからその原因を(連鎖解析とマイクロアレイを使っていたと思うがメモし損ねた)同定し、最終的にはバゾプレッシン遺伝子のプロモーターの、点しぃんしCBF-Aの結合部位に変化を生じるSNPが原因で、バゾプレッシンの発現量が顕著に異なり、バゾプレッシンニューロンの神経突起の広がりもことなることを示した。バゾプレッシンアンタゴニストによい、高い不安ラットの表現型は低不安ラットに近づいたことから、これが関与していることも示した。その他、in vivo dialysisでバゾプレッシンを測ったりもしていた。

 驚くべきことに彼らは、「他の動物で確認すべきという考えもあるから」などといいつつ、マウスで全く同じことをほとんど全て繰り返し、マウスではシグナルペプチド部のSNPが関与していることを示した。また、高不安マウスにおけるDNAマイクロアレイとプロテオミクスで糖代謝関連酵素の遺伝子が変化していることから、不安と糖代謝に何か関係があるかもしれず、この遺伝子がバイオマーカーになるかも知れない、などと言っていた。

 質問者がamygdalaでもバゾプレッシンが変化するのか?と質問したが、扁桃体は恐怖に関係するのに対し、PVHのバゾプレッシンはベースラインの不安を反映しており、全く別の側面だ、と回答していた。

 出産後の母ラットに、intruderを与え、30分後に断頭してc-fosの免疫染色を行ったという発表もあった(P1.042)。BnSTPVNなど視床下部の多くの部位でc-fos発現が見られたため、バゾプレッシンの免疫染色も行ったところ、PVNSON(supraoptic nucleus)ではバゾプレッシン陽性細胞にfosの発現が見られ、他のfos発現が見られた部位がVP受容体を持つ部位であることから、maternal aggressionにはバゾプレッシンが重要、と報告していた。これは、バゾプレッシン受容体ノックアウトマウスで攻撃性が低下することとも一致していると述べていた。彼女(Meddle SL)は、maternal aggressionを正常な母性行動の一部というよりも、不安のモデルと考えて解析しているらしかった。

 

その他の断片的なトピック

P1.007

 BP患者のpremenstral phaseで、血中のprogesteroneとその代謝産物であるallopregnanoloneとを測定したところ、両者とも顕著に高値を示した(p<0.0001N30名位であった)。ちなみにP1-301によると、Premenstral syndromeではprogesteroneはむしろ低下している。Pogesterone投与で、感情を伴う症状の認知が障害されるという。

S07.07

 ヨーロッパの多施設共同研究で、難治性うつ病の要因を調べた。996名のうつ病患者のうち、394名が難治性と評価された。(2つ以上の抗うつ薬十分量に反応しない)

 ロジスティック回帰分析で有意であった要因は、1)自殺の危険、2)不安障害の併発、3)女性、4)季節型、5)最初の抗うつ薬に対する非反応、であった。この種の研究で、季節型、というのが指摘されたのはあまり聞いたことがなかったので、新たな所見かも知れない。双極性障害の家族歴など、bipolar spectrum関連の指標は何もでてこなかったらしい。

 7.5%CO220分吸入により健常者でも不快感が生じ、これにベンゾジアゼピンとSSRIが聞くことから、不安障害のモデルになる、という発表があった(P4.047)。ついでに、パニック障害の診断検査として使われている、5%CO235%の課題の差を聞いたら、35%CO2というのは、ワンショットで吸うだけで、全然違う課題だとのことであった。

S11.04

スウェーデンのHellstenらのグループ。ECT後、海馬でBrdU positive cellが増えることは有名であるが、これはオリゴデンドロサイトの前駆細胞と言われてきたNG2 positiveなものが多い。(ただし、NG2陽性progenitorがニューロンに分化するという話もある。)また、血管内皮細胞もproliferationが促進されている。ストレスでは、neurogenesisだけでなく、gliogenesisangiogenesisも障害されており、これらも重要なのではないか、とう。P2.092では、ECT後に視床下部でも血管細胞が増殖しているとのことであり、海馬に特異的な訳ではなく、脳全体で見られる所見らしい。彼らはECTで血管が実際にのびるのではないかと考えているという。

S08.01 Olson L

 パーキンソン病の遺伝的危険因子を元に動物モデルを作るという話があった。ADH4(アルデヒドデヒドロゲナーゼ)に着目した研究を行っていた。ADH4の機能が低いと、食事中のアルデヒドなどがたまりやすく、アルデヒドとドーパミンが結合するとsalsolinolという神経毒性を持つ物質ができ、ドーパミン神経細胞を障害するという。ADH4KOマウスは、行動量低下、ドーパミン低下などが見られ、これは“Western Diet”(高脂肪食?)で更に悪化するという。

 

 以上、軽い気持ちで参加した学会であったが、結構有意義だったかも知れない。

 次回の本学会は、2006916-20日、パリで行われるが、その前に、79-13日にシカゴでCINP(国際神経精神薬理学会)がある!

 

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