英国留学奨学金

 

 英国エジンバラ大学では、修士の学生向けに、東北地方の学生(修士課程)のための奨学金を新設いたしました。£10,0006名に提供されます。

 詳細は下記のサイトをご覧下さい。

 http://www.ed.ac.uk/student-funding/japan

 この情報は、同大学のDr. Andrew McIntoshからのお知らせに基づき、掲載いたしました。

 

DSM-5ドラフト

 

2010210日に、DSM-5のドラフトが発表されました。

(なお、どうやら、これまでのようにローマ数字で表記 [DSM-V] することはやめるつもりのようです)

 

APADSM-5サイト http://www.dsm5.org

ニュース(和文) http://news.e-expo.net/world/2010/02/post-116.html

 

 まだざっとしか見ておりませんが、気分障害の項目を見る限り、思ったよりはるかに真っ当です。

 

 気分障害で増えているのは、

Mixed Anxiety Depression

 のみです。これは、ICD-10の「F41.2 混合性不安抑うつ障害」に対応したもので、ICD-10の基準ははっきりしないので、どうせ使われるのなら、それをきちんと定義しておこう、というコンセプトのようです。

 

混合状態がなくなる!?

 

 その他、大きな変更は、混合性エピソードがなくなり、躁病エピソードあるいはうつ病エピソードに、「混合性」のspecifierがつけられる、ということです。

 DSM-IVの混合性エピソードの基準はあまりにも厳しいため、合致する症例はめったになく、DSM-IVの混合性エピソードの基準は、有用とは言えませんでしたが、今回の改訂は、実情に良くあったナイスな変更だと思いました。

 

双極スペクトラムはどうなる?

 

 さて、軽躁病エピソードの持続期間を短くするという案が提出されていましたが、ドラフトでは、軽躁病エピソードの持続期間は4日間となっており、事前の触れ込みとは異なり、意外に保守的で、ちょっと安心しました。

 その他、躁病エピソードおよび軽躁病エピソードのD基準に、「抗うつ治療中に出現したが、治療の生理的作用を超えて持続する躁病あるいは軽躁病エピソードは、躁病あるいは軽躁病エピソードの診断に十分なエビデンスである」との記載が加わりました。

双極スペクトラムへの対応となる変更は、この1点のみのようです。

 私が予想していたような、「大うつ病、双極スペクトラムの特徴を伴うもの」というようなspecifierは含まれていませんでした。

 

ディメンジョン診断はどうなる?

 

 話題になっていたディメンジョン(次元)診断については、「不安次元」と「自殺評価次元」の2つで、これは一応Axis Iには入るのでしょうが、特に後者は、Axis Vの機能の全体的評価とさして変わらないような感じで、実際有用と思われますので、違和感なく使えそうな感じがします。不安次元も、やたらと併発症(comorbidity)を乱発するよりは、こちらの方が良さそうです。

 また、緊張病性の特徴を伴うもの、というspecifierが、気分障害に限らず、精神病性障害にも用いられることになっています。

他には、月経前不機嫌性障害(Premenstrual Dysphoric DisorderPMDD)を、検討中とのこと。

 

小児双極性障害の過剰診断への対応

 

小児期、思春期の障害のところに、

Temper Dysregulation Disorder with Dysphoria

(「不快気分を伴う機嫌調節不全障害」みたいな感じ)

Non-Suicidal Self Injury(非自殺自傷)

 というのが加わっています。

 前者は、小児双極性障害の濫用を防ぐために設けられた新たな基準だそうです。

 後者も、時機を得た診断基準という感じがします。

 

気分障害以外の変更

 

 気分障害以外の変更としては、「Psychosis Risk Syndrome(精神病リスク症候群)」という、At Risk Mental Stateに対応する状態(精神病前駆状態)が提案されています。これも、時機を得たものと言えます。

 また、物質使用障害が、「嗜癖および関連障害(Addiction and Related Disorders)」と名づけ直されて、病的賭博を衝動制御障害からここに移すことが提案されています。

 アスペルガー障害はなくなり、自閉症スペクトラム障害に統合されるようです。

 

意外に常識的な変更にとどまる!

 

 以上、ざっと見た限りでは、事前の触れ込みのような大幅な変更は提案されておらず、混合性の考え方、抗うつ薬による躁転の基準、小児思春期双極性障害濫用への対応など、常識的で合理的な線に収まっていると思いました。

 正直、ちょっと拍子抜け、と言えなくもない位ですが、変な方向に変えようという話でなくて、良かったです。

 

420日まで、コメントを募集しているとのこと。

文句を書き込もうと思っていましたが、ナイスですね、と書き込もうかなあ?

意見のある皆さん、ぜひ書き込みましょう!

 

パブコメ終了後、2013年にDSM-5が出される予定とのことです。          

 

(加藤忠史)