毛様細胞性星細胞腫 pilocytic astrocytoma について

(視神経膠腫 optic glimaも)

  1. 赤ちゃんから学童まで,小さな子供の脳には毛様細胞性星細胞腫という良性腫瘍ができます
  2. 小脳にできるものが最も多く,この小脳にできるものは手術だけで簡単に治ります
  3. 手術だけで治るこのタイプはWHOのグレード1といいます
  4. 多くの毛様細胞性星細胞腫は摘出ができる大脳の浅い部分や小脳にできますから,手術だけで治ることの方が多いのですが,問題はそれ以外のものです
  5. 脳幹部、視神経,視交叉,視床下部といったところにできたものは手術で完全にとることができません
  6. 特に小さな子供たち,乳幼児には髄液播種を起こす悪性のものができることがあります
  7. 全部とることが難しい場所のものを最初にまず手術をするといわれたらまず断った方がいいです
  8. 多くの場合,MRIでほぼ確実に診断できますからどんな腫瘍か分からないことはありません
  9. 稀なのですが,本当に迷った時だけ,生検術というほんの少し腫瘍を取ってみるという手術が必要なことがあります
  10. 摘出ができない場所にできた小児の腫瘍には化学療法を行います
  11. 視神経と視床下部の腫瘍には,シスプラチンとビンクリスチンを使いますがほとんどの例で有効です
  12. 世界的に最も広く使用されているのはカルボプラチンとビンクリスチンの組み合わせです
  13. でも,残念ながら化学療法だけで治ることはまれです
  14. 摘出できない腫瘍では子供が大きくなった時点で放射線治療を加えなければならないことが多いのですが知能の低下を招くことがあります
  15. 経過によっては手術をしなければならないこともありますが慎重にその時期と方法を考える必要があります
  16. 視床下部のものでは下垂体ホルモンの異常を伴うことが多いので内分泌専門の小児科医に必ず診てもらって下さい
  17. 不思議なことに思春期になると自然に治ってしまうことがある腫瘍です

ちょっと取れば治ってしまう小脳の毛様細胞性星細胞腫

思春期の女の子にできた小脳腫瘍です。とても大きく見えますがほとんどが水たまり(のう胞といいます)。第4脳室が腫瘍で圧迫されて閉塞性水頭症になりました。のう胞の中に出血がありますが毛様細胞性星細胞腫では腫瘍内出血をしばしば見ます。右の写真で脳室が大きくなっています。こんなに大きいのに小脳症状は全くなくて,頭痛と嘔吐が症状でした。

赤で塗ったところだけが毛様細胞性星細胞腫です。これを取れば治ります。簡単な手術ですし後遺症も残りません。

手術後のMRIです。水頭症も改善してますから症状も消失しましたし,すぐに退院です o(^o^)o


手術が難しい場所の毛様細胞性星細胞腫の手術

  1. 取りにくい場所にできた腫瘍が問題です
  2. それは視床下部,視神経,視神経交叉,視索,脳幹部,脊髄です
  3. 前のところに書いたように,どんな腫瘍か解らないから開頭手術でちょっと取ってみるという生検術はあまり意味がありません
  4. 一度開頭術をしてしまうと腫瘍の周りに癒着が起こるので,後でいざ手術で腫瘍をほとんど摘出してしまわなければならないという時に,とても困ったことになりますし,癒着のために十分に腫瘍が取れなくなってしまっています
  5. 澤村自身がたくさんの再手術をしましたから,身にしみて解っていることは,最初の手術が予後を決定することが多いことです
  6. 再手術はとてもとても難しいことを,最初に手術をする脳外科の先生はしっかり理解しなければなりません
  7. 手術をする前にはCISSというMRI画像が必要です
  8. なぜかというと,腫瘍がどこから発生したかを詳細に読み取ることで,手術の作戦が決定されることです
  9. 視神経交叉から出たのならば,全摘出すれば全盲を覚悟しないといけません
  10. 片方の視神経から出て巨大になったものなら,全部とっても片方の失明だけですみます
  11. 視床下部から出たもののごく一部は全摘出できることがあります
  12. でも両側の視床下部に明らかに浸潤するものを全摘出するとひどい視床下部損傷で通常の生活ができなくなることがあります
  13. 視索が大きく膨れる腫瘍を摘出すれば,同名半盲になりますし,それは取りきれるものではありません
  14. 大脳半球の底部に浸潤して穿通枝という細い血管をたくさん巻き込むものは取れません
  15. 手術の前にMRIをみて正確に予測するのはとても深い経験が必要です
  16. 脳幹部の中にできた毛様細胞性星細胞腫をほとんど取ることはできるのですが,多くの場合は完全摘出にはなりません
  17. なぜかというと,毛様細胞性星細胞腫でも多少は脳組織に浸潤するからです
  18. 脳幹内部にできたものには視床下部や視神経にできたものより,放射線治療がし易いことを手術の前に考えに入れておかなければなりません
  19. のう胞性拡大(腫瘍の中に液体がたまる)が続く腫瘍では部分摘出が必要です

小さい子供の視神経と視床下部の毛様細胞性星細胞腫

 毛様細胞性星細胞腫はグレード1といわれていますから,手術で全部とってしまえば治る腫瘍のはずです。思春期の小脳にできる毛様細胞性星細胞腫の長期生存率は95%を越えていますし後遺症を残すことも少ないです。でも場所と年齢が違って,乳幼児の視床下部/視交叉にできた時には死亡率が高いし生存し得たとしても社会的に自立できる児は少ないです。

 乳幼児の視床下部と視交叉に発生するものの多くは毛様類粘液性星細胞腫 (pilomyxoid astrocytoma, グレード2)と呼ばれるちょっと違った性質を持つものです。大きくなる速度が速くて髄腔内に播種することもあります。視床下部と両側の視路へ浸潤するために完全に摘出することができなくて,場合によっては生検術さえ危険なこともあります。放射線照射が有効ですが重篤な放射線脳障害を考えなければなりません。このような状況から最近,この腫瘍に対してはプラチナ製剤(シスプラチンもしくはカルボプラチン)とビンクリスチンを用いた併用化学療法が第一選択肢として用いられています。

 この腫瘍においては数ヶ月かけて化学療法を継続することにより腫瘍縮小効果が明らかとなるので,1コースや2コースの化学療法で有効性がないと判断してはいけません。化学療法の奏効率は高くて,化学療法の開始とともに間脳症候群(ひどい痩せとか)の改善や進行性視力視野障害の停止が得られることも多いのです。私はシスプラチンとビンクリスチンの併用化学療法をまず6コース行って経過をみることにしています。経過観察中に年長児になると思春期早発症が生じることもあります。再燃時には,化学療法の再開か部分摘出か半定位的分割照射かの選択となりますが,腫瘍の残存部位と年齢を考えて決定します。逆に年長児になれば自然緩解して治癒に至る症例もあるので,治療の後の残存腫瘍の観察にはとても慎重にならなければなりません。

Sawamura Y, et al.: Role of Surgery for Optic pathway / Hypothalamic Astrocytomas in Children. Neuro Oncol 10: 725-733, 2008
まず,この腫瘍は開頭手術で生検術をしなくても画像診断できるし,開頭生検術が無駄になることが多いしリスクもあることを書きました。完全摘出はできないし,必要であれば部分摘出術をしますが,その時期と手術の方法がとても複雑で難しいことを書いています。かなり専門的ですから,患者さんには読めません。


再発とまちがえやすいのう胞性拡大 cystic expansion

  1. 腫瘍を観察しているとじっとしていた腫瘍が大きくなることがあります
  2. 2つの場合があります
  3. 一つは腫瘍細胞が増えてほんとに増大すること(再燃)
  4. もう一つは腫瘍の中に水が溜って大きくなることです(のう胞性拡大)
  5. のう胞性拡大の場合は,よくよく経過を見ているとやがてまた大きくなるのが止まって,逆に小さくなってくることがあります
  6. 自然に治るという自然退縮の前によく見られる現象です
  7. ですからあわてない
  8. でも,のう胞が大きくなりすぎて視神経などを圧迫してきた時には,のう胞にチューブを入れて水を抜くとかのう胞の壁を手術で摘出するとかが必要になります

化学療法について

  1. シスプラチンとビンクリスチン:入院が必要ですが切れ味はいいと思います。初回治療に用います合計6コースくらいします。Sawamura Y, et al.: Chemotherapy with cisplatin and vincristine for optic pathway/hypothalamic astrocytoma in young children. Jpn J Clin Oncol 2009 Feb [Epub]
  2. カルボプラチンとビンクリスチン:世界で最も広く初期治療に使われています。入院してすることも外来投与もできます。
  3. テモゾロマイド:月に5日間だけ自宅で飲みます。最近有効であるという報告が増えています。維持療法として使えるのかもしれません。
  4. 澤村は,第一選択としてシスプラチンとビンクリスチンの入院治療を6コースして治療反応性がいいときは経過観察します。あまり腫瘍が小さくならないで治療反応が良くない時,あるいは経過観察後に再増大すればカルボプラチンとビンクリスチンの外来治療を6コースまでします。更に腫瘍を押さえ込む必要がある場合にはテモゾロマイドの外来投与を継続しています。

シスプラチン/ビンクリスチンを用いた化学療法の効果

シスプラチン/ビンクリスチンを用いた化学療法の効果を示すMRI画像です。aは治療前,gは6コース終了時点で,各々のMRIは各コース終了時点で撮影されています。このようにはっきりした腫瘍縮小効果は数カ月にわたる経過でゆっくりと観察されるので,1コースか2コースの化学療法であまり小さくならないからといって,化学療法が有効でないと即断してはいけません。1歳で発症して8年が経ちますが,この化学療法だけで腫瘍はほぼ消失して元気に暮らしています。


放射線治療について

  1. 有効率(奏功割合)は50%強くらいで,腫瘍は小さくなります。
  2. 放射線治療だけで腫瘍が縮小してその後の治療が全く必要ないこともあります。
  3. 45グレイという放射線量以上が必要です。
  4. 後遺症を考えた場合に放射線治療をしやすい腫瘍の場所は,小脳,大脳半球,脳幹部,大脳基底核,脊髄,視床下部,視神経の順です。
  5. でも小さい子供が多いので後遺症を考えれば使いにくいです。
  6. 化学療法や手術でなんとかできない時に考えましょう。
  7. 腫瘍の場所と大きさと患者さんの年齢で,かけられる線量(グレイ)が違いますから,放射線治療医の先生によくよく相談して下さい。
  8. また使える放射線治療の方法も違います。
  9. 毛様細胞性星細胞腫は重要な脳や視神経の組織に囲まれています。でも少し浸潤性(脳にしみ込む)をもった腫瘍ですから,定位放射線外科は適切ではないと思います。
  10. しかしそれほど浸潤しないので,周囲に広くかける必要もありません。三次元原体照射とか強度変調放射線治療(IMRT)が適しています。後者は,形がいびつで大きなものに適しているかもしれません 。
  11. できるだけ年長児になってから検討するべき治療方法です。
  12. 前のところに書いた嚢胞性拡大をしている毛様細胞性星細胞腫には放射線治療が効かないこともありますので注意しましょう。

毛様類粘液性星細胞腫 pilomyxoid astrocytoma WHO グレード2について

  1. 小さな子供,とくに乳児と幼児にできるものの多くは毛様類粘液性星細胞腫というものが多いです
  2. できる場所は,視床下部と視路(視神経など)に多いです
  3. 成長障害(ご飯が食べられなくてやせる,体重が減る)や嘔吐,視力の低下などが症状です
  4. これは,播種する性質を持っていますし,早く大きくなるので治療を早めにした方がいいでしょう
  5. うれしいことに,普通の毛様細胞性星細胞腫よりも化学療法がよく効きます
  6. とても小さい子の視床下部と視神経に発生するので放射線治療や無理な外科摘出はできませんが,化学療法でなんとかできることが多いのです
  7. 化学療法だけで治った子もみたことはありますが,多くの場合には年長児になってから手術摘出や放射線治療が必要になると考えて下さい
  8. 治療を順当に後遺症を少なくコントロールするのはとてもとても難しいです

毛様類粘液性星細胞腫の病理像です。関質が広くて粘液用の物質が貯留されています。これは手術で取る時にドロドロの腫瘍に見えますから,ちょっと硬い普通の毛様細胞性星細胞腫とは判別できます。この病理像をもつ腫瘍は,患者さんの年齢が年長児になっていくと,自然に変化して普通の毛様細胞性星細胞腫に変わっていきます。腫瘍も年をとるのだと考えられます。ですから,毛様類粘液性星細胞腫は特殊なものではなくて,毛様細胞性星細胞腫の赤ちゃんかもしれません。

2007年のWHO分類では,毛様細胞性星細胞腫はグレード1に,毛様類粘液性星細胞腫はグレード2に分類されました。毛様細胞性星細胞腫よりも予後が悪いとの判断です。


視神経膠腫 optic glioma について

  1. 小さ子供の視神経(視交叉と視索も)にできます。
  2. 病理組織は毛様細胞性星細胞腫です。
  3. 良性の腫瘍ですが摘出すると視神経も一緒にとれてしまいます。
  4. 片方の視神経だけに厳密にとどまるものは手術で全部とれますが,摘出した側の視力はなくなってしまいます 。
  5. 治療方針は,前のところにかいた毛様細胞性星細胞腫と同じです。
  6. 子供が成長すると腫瘍も大きくならない傾向がある腫瘍です。
  7. 特に,神経線維腫症1型 (NF-1)に合併する視神経膠腫は治療しなくてもよい場合が多いです
  8. 下の図は乳児にできた視神経膠腫です(左側の写真)。腫瘍が眼窩内にとどまっていて左の目はすでに失明していましたから,腫瘍を手術で全部とりました(右側の写真)。このような手術は腫瘍が反対側の視神経にいかないようにするために視神経交差のところで切り離すので,開頭手術が必要です。眼球も残っていますし再発はありません。

 


画像の特徴について(T2で白い)


7歳の子の小脳虫部腫瘍です。左と中央のMRIをみると一見,髄芽腫に見えます。でもこれは毛様細胞性星細胞腫で,手術で全部取れて,後遺症もなく治りました(右側)。inverted T2(真ん中のCISS)では黒く(低信号)に写って小脳との境界が明瞭です。


T1強調画像のガドリニウム増強(左)ではわかりませんが,右のT2強調画像で腫瘍部分がとても白く(強い高信号)に写っているのが,最大の特徴です。多くの場合,T2強調画像で毛様細胞性星細胞腫の診断がつきます。このようなT2でかなり強い高信号になるものは毛様粘液性星細胞腫の成分を含むことが多いです。


シスプラチンとビンクリスチンを使うCV化学療法
(視神経交叉/視床下部の大きな毛様細胞性星細胞腫のみを対象として)
1コースの治療レジメン

シスプラチン 20 mg/m2/day day 1-5 div
ビンクリスチン 1.4 mg/m2/day days 1,8,15 iv

2歳未満の乳幼児のみは次のようにします。
シスプラチン 0.7 mg/kg/day day 1-5 24hr div
ビンクリスチン 0.05 mg/kg/day days 1,8,15 iv

2007年時点での成績

今までに16例の子供たちにこの治療を行いました。縮小率はちょっと厳しい評価方法をとっています。
CR(著明に縮小したもの)          1例
PR(著明に縮小したもの)          8例
MR(少し小さくなったもの)         3例
SD(大体同じかほんの少し小さくなったもの) 4例
PD(治療中に大きくなってしまったもの)   0例

CR, PR, MRを足すと12例です。75%ではっきり腫瘍が小さくなったと言えます。disease stabilization(病変の進行を止める)という意味では100%の有効率です。 有名なPackerという人が書いたいろんな論文での良い成績を取ってPRとMRは55例中の33例 (60%)ですから,その成績よりは勝っています。Massimoというお医者さんは,シスプラチンとエトポシドの組み合わせを使って,34例中の24例(71%)がPR/MRであったとしています。 でもこの論文間の比較は慎重にしなければなりません。私の成績には神経線維腫症1型(NF-1)が含まれていませんし,視神経交叉から視床下部を侵す大きな乳幼児の毛様細胞性星細胞腫だけを治療対象としていますから,本来は厳しい予後のはずです。また,PackerさんやMassimoさんの論文の対象はNF-1や他の部位の星細胞腫や年長児を含みます。

澤村の書いた論文です

Sawamura Y, et al.: Chemotherapy with cisplatin and vincristine for optic pathway/hypothalamic astrocytoma in young children. Jpn J Clin Oncol 2009 Feb 17. [Epub]


最も有名なカルボプラチンとビンクリスチンを使うPacker先生の化学療法の論文

Packer RJ, et al: Carboplatin and vincristine chemotherapy for children with newly diagnosed progressive low-grade gliomas. J Neurosurg 1997;86:747–754

進行性の悪性度の低い神経膠腫に用いられましたが,かなりの症例が毛様細胞性星細胞腫と考えられます。導入化学療法でカルボプラチン 175 mg/m2 weekly (weeks 1-4, 7-10) と ビンクリスチン 1.5 mg/m2 weekly iv (weeks 1-10) を10週間使って,後は同じような方法で4週間治療して3週間の休薬期間をおいて,最大で12コースまで治療を続けるという方法です。78人の子供のうち44人(56%)で腫瘍が客観的に小さくなったという成績が得られました。

解説:この化学療法は,外来でできるし,有効性(奏功率)も高くて,たくさんの症例で証明されていて,いろいろな施設で追試されても信用性があって,標準的な治療として世界に広まりました。ビンクリスチンを長く使うと抹消神経障害がおこるのでこの治療を嫌う先生もいます。また,カルボプラチンアレルギーが生じて使えなくなることもあります。長期間(2年くらい)使用できる化学療法というのがこの治療法の強みでもあるでしょう。でも,乳幼児の大きな毛様細胞性星細胞腫への導入化学療法としてはシスプラチンを使った方が奏功率は高いのかもしれません。


かなり有効性の高いシスプラチンとエトポシドを使う化学療法の論文

Massimino M, et al.: High response rate to cisplatin/etoposide regimen in childhood low-grade glioma. J Clin Oncol 20:4209-4216, 2002

34人のとても小さな子供にシスプラチンとエトポシドを使う化学療法がされました。この内29人が視神経に腫瘍を持っていて,神経線維腫症1型の患児は8人いました。シスプラチン 30mg/m2/day, days 1-3,エトポシド 150mg/m2/day, days 1-3です。これを1月に1回で10ヶ月続けます。 実に24例(71%)で腫瘍の縮小 objective response がみられ,増大した症例はなかったと書かれています。

解説:今まで発表された化学療法の成績では最も有効性(奏効割合)が高いものです。シスプラチンは使いにくいけど,有効性は高いと確認されたともいえます。神経線維腫症1型の患者さんの割合(24%)が高いのがとても気になります(NF-1の患者さんの視神経腫瘍は元々予後がよいのです)。また心配されたシスプラチンの聴力障害は高音域障害が28%にみられたと書いてありますから,会話領域での聴力障害はなかったのでしょう。聴力のモニター(耳音響放射検査)をもっと頻回にすればこの高音域の障害も減らせるはずです。


視神経(視路)に発生した毛様細胞性星細胞腫に対するテモゾロマイドの効果

Gururangan S et al. Temozolomide in children with progressive low-grade glioma. Neuro-oncol 9: 161-168, 2007
この論文は,悪性度の低いグリオーマをもつの30人の子供たちにテモゾロマイドを使った経験を書いています。平均年令10歳でいずれも病状が進行性の子供たちです。この中の26人は視神経にできた腫瘍である毛様細胞性星細胞腫の子供です。テモゾロマイドは200mg/m2を5日間使う普通の方法で投与されました。26人の内の3人で腫瘍が半分くらいになり(PR),1人で腫瘍がほんの少し小さくなり(MR),10人で同じで変わらず(SD),12人で投与中に大きくなりました(PD)。54%の子供で病状の進行が一時的にも止まり,34ヶ月くらい維持できたとのことです。副作用は軽度のものでした。
解説:いろいろな治療の後でテモダールが使用されていますので,ある程度の効果はあると判断できる成績でしょう。しかし,腫瘍の縮小は26人中で4人に見られただけですし,おそらく従来のシスプラチンやカルボプラチンとビンクリスチンを使う化学療法には劣ります。従って,それらの薬が使えなくなった時の3番目くらいの化学療法として使用できると考えた方がいいでしょう。


カルボプラチンへのアレルギーをもった子供の低悪性度グリオーマへのビンブラスチン単独化学療法の効果

Lafay-Cousin L, et al. Weekly vinblastine in pediatric low-grade glioma patients with carboplatin allergic reaction. Cancer 103: 2636-2642, 2005

毛様細胞性星細胞腫を含む悪性度の低い神経膠腫(グリオーマ)へのビンブラスチン(エクザール)の単独効果を見たものです。カルボプラチンとビンクリスチンの化学療法がアレルギーのために使えなくなった9人の子供に使用されました。週に1回ビンブラスチンを投与する方法で,外来でできます。腫瘍が完全に消えたもの(CR)1例,かなり小さくなったもの(PR)1例,少しでも縮んだもの(OE)5例,変わらなかったもの(SD) 2例で,全ての症例で腫瘍の増大傾向が抑えられたとのことです。 おそらく,毛様細胞性星細胞腫や乏突起膠腫のような腫瘍には使える方法でしょう。

解説:ビンブラスチンはビンクリスチンとても似た制がん剤です。小児脳腫瘍を含めて,神経膠腫にはビンクリスチンの方が効果は高いし,過去の臨床試験でもしっかりした成績があります。ビンクリスチンは末梢神経障害があって使いづらいから,ビンブラスチンというのは短絡的すぎますので気をつけましょう。でも使える薬剤です。


カルボプラチンへのアレルギー

カルボプラチンはアレルギーを生じやすい制がん剤です。少量を繰り返し投与するとアレルギーを生じやすいともいわれています。カルボプラチンにアレルギー反応がでるとシスプラチンにもアレルギーが生じることがあります。両者ともにプラチナ製剤 platinum だからです。カルボプラチンへのアレルギーは,じんま疹などの軽いものが多いです。繰り返し投与をすると稀にアナフィラキシーという重症のアレルギーになることがあります。しかし,アレルギー反応がでたからといって必ずしも,プラチナ製剤が使えなくなるわけではありません。desensitization 脱感作という方法があります。少量のカルボプラチンから増やしていく方法ですが,初回はショックになるといけないのでICU管理が必要ですから,化学療法のかなりの専門家にしかできません。rapid desensitization protocol に関しては多くの論文があります。Castells MC, et al.: Hypersensitivity reactions to chemotherapy: outcomes and safety of rapid desensitization in 413 cases. J Allergy Clin Immunol 122: 574-580, 2008


学術的な記載ですが参考になればと思います。ちょっと古いものですが,現在も内容に大きな変わりはありません。

乳幼児の視床下部/視神経交叉に発生した毛様細胞性星細胞腫( pilocytic astrocytoma)に対するシスプラチン/ビンクリスチン併用化学療法の効果

要旨

 乳幼児の視床下部/視神経交叉に発生した毛様細胞性星細胞腫( pilocytic astrocytoma)の9症例をシスプラチン/ビンクリスチン併用化学療法にて治療した。治療開始時年齢中央値は1歳であった。シスプラチン(cisplatin; CDDP)  20mg/sq.m/day (day 1-5),ビンクリスチン (vincristine; VCR) 1.4mg/sq.m/day (day 1, 8, and 15)を,6~8コースを投与した。全9例で化学療法後に腫瘍の縮小が見られ,partial response 5例,disease stabilized 4例と評価された。1コース終了する度にごくわずかに腫瘍が縮小するのが特徴的な画像所見であった。治療後再増大した4例で,4歳を越えた時点で放射線治療もしくは手術摘出をsalvage therapyとして行った。追跡期間は8~134ヶ月であり,全例が顕著な精神発達遅延なく生存しており,生下時より全盲であった1例を除き視機能を温存できた。この化学療法は,間脳下垂体部を含む脳の放射線耐性が低い乳幼児例では寛解導入療法として第一選択とされるべき治療法と思われる。

I. はじめに

 pilocytic astrocytoma(毛様細胞性星細胞腫)は小児と若年成人に発生し,緩徐に増殖する良性原発性脳腫瘍である。好発部位は小脳,脳幹,視床下部,視神経と視交叉,視床と大脳基底核,大脳半球表層などである。WHOでは,この腫瘍をgrade Iとして規定している。すなわち,全摘出できれば予後の良い腫瘍として知られる。しかしながら,原則的に浸潤性腫瘍であるので部位によっては摘出が不可能なものもあり,小脳と大脳表面に発生するものを除けば,逆に予後は良いとは限らない。思春期の小脳に発生するcystic pilocytic astrocytoma,乳幼児の視交叉に発生するもの,脳幹部原発のものでは,それぞれ治療方法においても予後においてもかなりの開きがある。

 視床下部と視神経交叉を母地として発生するpilocytic astrocytomaは,主として乳幼児や思春期以前の小児に好発する。乳幼児に発生するこの部位のpilocytic astrocytomaは,組織学的には毛様類粘液性星細胞腫 (pilomyxoid astrocytoma) のパターンを呈することが多く,概して増大速度が早い。また,髄腔内播種して急激な死の経過をたどる危険性もある。

 この腫瘍は視床下部と視神経交叉から両側の視路へ浸潤するためにしばしば完全摘出が困難であり,従って摘出すれば完治するという良性腫瘍であるにも関わらず治療手段に窮することが多く,時としては生命予後も不良である。また,乳幼児の中枢神経は放射線照射に対して極めて脆弱であり,重篤な遅発性放射線脳障害を鑑みればこれも選択し難い。上記のような状況から,近年この腫瘍に対しては化学療法が第一選択肢として用いられることが多くなった。ここではシスプラチンとビンクリスチンを用いた化学療法の有効性を報告する。

II. 対象と方法

 症例は,神経線維腫症を除いた孤発例の視交叉と視床下部に主座を置く,hypothalamic / optic-pathway (chiasmatic) pilocytic astrocytomaの9例である。治療開始時年齢は,5ヶ月,13ヶ月,1歳,1歳,1歳,3歳,3歳,4歳,5歳であった。診断のきっかけとなった初発症状は,間脳症候群(diencephalic syndrome)が4例,眼位の異常を指摘されたものが1例,眼位の異常と視力低下が3例,水頭症による頭蓋内圧亢進症状が1例であった。

 生後5ヶ月より治療を開始した乳児例では,生下時より全盲であり体重減少を伴う高度の間脳症候群を呈していた。残りの8例では視力障害はあるものの全盲ではなかった。3歳児2例,4歳児,5歳児の4症例では高度の視力視野障害があるにも関わらず,患児が訴えることがなかったために診断が遅れたものと考えられた。また逆に入院中であっても,この年齢層にあっては患児が視力低下を自発的に訴えることはほとんどなかった。

 MRIでは7例が典型的な画像所見を呈していた。 すなわち,T2強調画像での髄液と同等で均一な高信号,T1強調ガドリニウム増強像での強い高信号,明瞭な腫瘍境界,腫瘍周囲の脳浮腫がほとんど見られないなどの所見である。2例において腫瘍は,両側の視神経,視交叉,視索,視放線,視床下部,視床腹部を広範に侵していた。これら2例では,T2強調画像での髄液より低い高信号,T1強調ガドリニウム増強像で不均一な部分的な高信号を示した。全ての例において,腫瘍の浸潤範囲をみるためにはFLAIR画像が最も有用であった。

 これらの画像所見のみでもほぼ確定診断とはなったが,4例において生検術を,1例において部分摘出をそれぞれ行った。4例では画像診断のみで組織診断することなく化学療法を開始したが,これは生検術においても患児の残存視力を侵す危険があると判断されたことが理由として大きかった。またこの内,初発時に高度の間脳症候群(全身状態不良)を伴う乳児2例においては全身麻酔のリスクも大きく,手術は患児の利益とならないと判断された。

 1コースの化学療法はシスプラチン 20mg/sq.m/day (days 1~5)とビンクリスチン 1.4mg/sq.m/day (days 1, 8, and 15)である。ただし,2歳未満の5例では体表面積の代わりに体重を用いて計算し,シスプラチンは0.7mg/kg/day,ビンクリスチンは0.05mg/kg/dayとして投与した。シスプラチンは5日間連続投与であるが,2歳以上では2時間かけて点滴静注し,2歳未満の乳幼児では24時間持続点滴静注した。すなわち,2歳未満では計5日間の持続投与となった。ビンクリスチンは15分間の点滴静注にて,第1,8,15日に分けて3回投与した。原則として4コース目までは4週間毎にくり返し,5コース以降は腫瘍の縮小状況に応じて投与期間を8週間に延ばし,計6~8コースを投与した。骨髄抑制が主たる副作用であったが,投与期間中に好中球減少が顕著な場合には,ビンクリスチンの投与を適宜中止して,シスプラチンの投与間隔を遵守した。

III. 結果

 投与した化学療法は6~8コースである。腫瘍縮小が順調であった症例では化学療法剤の加算総投与量を少なくする目的で6コースに止めた。化学療法6コース終了後1ヶ月にて評価した効果は,partial response (PR: MRI上で腫瘍最大径の30%以上の縮小)が5例,disease stabilized (DS: MRI上で30%以下の縮小かつ腫瘍増大なし) が4例であった。化学療法反応性を評価するために行ったMRI上での特徴的な所見は,化学療法を1コース終了する度にMRI上でごくわずかに腫瘍が縮小することであった。1コースでPRとなった症例はなく,PRの所見を得るには少なくとも4コースの投与を必要とした。DSと評価した4症例でも明らかな腫瘍縮小効果は認められた。結局全9例で腫瘍は縮小した。化学療法中に腫瘍が一時的に増大したり,副作用のため化学療法を中止した例はなかった。副作用としての好中球減少はgrade IIIが6例,grade IVが2例であり,これらの症例において顆粒球コロニー刺激因子 (G-CSF)の投与を行った。間脳症候群にて発症した4例では,化学療法中に成長ホルモン値が正常化し,体重増加が見られて間脳下垂体不全症状の改善を得ることができた。シスプラチンの副作用による会話域(2000 Hz以下)での聴力障害を呈した例はなかった。

 9症例の治療開始後の経過観察期間は 7, 10, 22, 36, 90, 110, 114, 134, 139ヶ月であり,最終観察時点では全例が生存している。9例中4例で経過観察のため撮像したMRIで腫瘍の再増大が生じた。治療開始から再増大が生じた時点までのTTP (time to progression)は,26,34,55,65ヶ月後であった。逆に,治療後PRと評価した1例では治療後5年を経過した時点で腫瘍はMRI上で完全消失した。

 MRI上で再増大を認めた4例のうちの3例に放射線治療を行った。照射時年齢はそれぞれ4歳,8歳,8歳であり,化学療法は放射線治療の時期を大幅に遅延させる効果があったものと判断された。再増大に対する手術摘出は,放射線治療前後にあるいは単独でsalvage therapyとして行った。それぞれの手術時年齢は4歳,7歳,8歳である。最終外来観察時点では全例が顕著な精神発達遅延なく生存しており,生下時より全盲であった症例1を除いては治療開始時の視機能を温存できた。

IV. 考案

 年長児あるいは若年成人で発見されるpilocytic astrocytomaの中には,必ずしも増大傾向を示さないので,治療を積極的に行う必要はなく,経過観察のみでよい症例もある。しかしながら,乳幼児期に発症する例では腫瘍の増大傾向が強い。症候的にも間脳下垂体不全と視力視野障害の進行性悪化をみることが多く,また稀ではあるが髄液播種を生じて死の転掃をとるものもあり,低年齢児には積極的な治療が必要となる。

 pilocytic astrocytomaは他のlow-grade astrocytomaに比べて放射線治療や化学療法に感受性が高い腫瘍として既に知られている。Brownらは,11症例に化学療法を用いて,8例において腫瘍縮小あるいは腫瘍の増大停止を認め,化学療法は放射線治療の困難な幼児に適応があると結論している。ここで重要なことは,pilocytic astrocytomaに対する化学療法は,5~10コースあるいはそれ以上の回数を重ねなければならないことであり,また,化学療法単独でpilocytic astrocytomaが消失して治癒する頻度は非常に低いことを認識して治療を行うことであろう。化学療法による完全寛解あるいは治癒に関してのはっきりした報告はないが,化学療法よりは放射線治療の法が治癒的治療となりうるのは衆知の事実である。

 Packerらは60例の小児low-grade gliomaに,カルボプラチンとビンクリスチンを用いる10週間の導入化学療法とその後の維持化学療法を行った。その中にはpilocytic astrocytomaが多く含まれ,有効例の大部分がdiencephalic tumors(視床下部を含む間脳腫瘍)であったと報告している。objective responseを示した35例では,25例が導入化学療法後に,10例で更に2~6サイクルの維持化学療法後に最大効果が認められている。

 このように,pilocytic astrocytomaの化学療法反応性は遅く,治療の初期の段階で画像上の治療効果が見えなくとも化学療法を重ねることで,腫瘍縮小が認められることに留意する必要がある。Silvaらも3歳以下のoptic pathway hypothalamic glioma 14例(組織診断された4例のpilocytic astrocytomaを含む)にカルボプラチンを基剤とした化学療法を行い,8例で長期間の腫瘍縮小を観察したと報告している。この観点から見れば,我々の9症例では全例でいわゆるobjective responseを示しており,症例選択に差はあるものの少なくともカルボプラチンとビンクリスチン併用治療に匹敵する効果を示したと言えよう。

 Ponsらは20例の小児low-grade gliomaにビンクリスチンとエトポシドを用いる化学療法を12コース行い,4例に腫瘍縮小効果を認めたが,これらはいずれも再増大を示している。この臨床研究は外来的な化学療法として行われてはいるが,エトポシドはシスプラチンやカルボプラチンに代わりうる効果を示してはいない。

 カルボプラチンとシスプラチンを比較検討した報告はないが,Packerはシスプラチンの有効性の方が高いであろうとコメントしている。pilocytic astrocytomaは緩徐に増殖するグリオーマであり,通常の未分化小児腫瘍あるいは癌治療における化学療法とは趣を変えた治療が必要なのかもしれない。この意味においては,シスプラチンの血中有効濃度持続時間はカルボプラチンより長く,遅い細胞回転周期を有するastrocytomaの治療には有効であろうとの推測もなされる。世界的にみれば,カルボプラチンはシスプラチンよりも多用されるが,これはカルボプラチンによる治療が外来的に可能であり,シスプラチンが長期の入院と厳密な副作用管理を要するのに反して,使用しやすい点が理由としてあげられる。しかし筆者は,もともと予後不良で治療困難な本疾患に対しては,初期治療に少なくとも半年の入院期間が必用となろうともシスプラチンを使用する意義は大きいと考えている。

 化学療法は上記のようにかなりの長期間継続して行われる。10コースを超える投与がなされている場合も多い。もちろん化学療法剤の種類によって様々ではあるが,化学療法は加算総投与量が多くなれば,二次癌の発生や原発性性腺機能低下症を招く可能性もある。特に,間脳下垂体機能障害を有する患児では,性腺刺激ホルモンの分泌不全を合併するため,妊孕力の温存を計りながら患児を治療して育てることがとても難しい。筆者らは現時点で,少なくとも6コースの化学療法をするできであると判断しているが,これ以上の維持療法の是非に関しては異論も多く定説がみあたらない。

 一方で,化学療法を先行して行うことで放射線治療の時期が遅れ,その有効性が減弱するとの危惧があるが,Fisherらは,術後照射を受けた58例の小児low-grade gliomaでは,照射時期(術直後あるいは再増大時)で生存期間に有意な差がなかったと報告している。いずれにしても,乳幼児あるいは低年齢小児の間脳下垂体と視交叉を含む領域への放射線治療は毒性が強く,化学療法を先行させて患児の中枢神経系の成長を待ち,腫瘍再増大が生じた時期に手術あるいは放射線治療を考慮すべきであろう。しかし,この部位のpilocytic astrocytomaを全摘出することは極めて困難であることを踏まえて,さらに放射線と手術治療は慎重に検討されるべきである。

V. まとめ

 シスプラチンとビンクリスチンを併用する化学療法は,乳幼児の視床下部/視神経交叉に発生した毛様細胞性星細胞腫( pilocytic astrocytoma)に対して有効であった。また化学療法は間脳下垂体部の放射線耐性が低い乳幼児例では第一選択とされるべき治療法と考えられる。


播種した毛様細胞性星細胞腫の治療

毛様細胞性星細胞腫の播種(転移)は幼い子どもの方が多く,視床下部原発,毛様粘液性星細胞腫の病理像で頻度が高い。初発時から髄液播種があることも,治療後に数ヶ月経ってから播種再発することもある。さまざまな化学療法が使われていますが,一時的な効果はあるものの治癒に結びつくことは少ない。治癒的な治療のためには放射線治療を脳脊髄にしなければなりないが,小さい子供やすでに放射線治療を受けている子どもでは適応とならないこともある。文献報告ではほとんどの例が死亡の転帰をとるので積極的な治療を行わなければ予後は極めて悪い。
通常の毛様細胞性星細胞腫と同様にCBDCAを基剤とした化学療法の報告が多い。McCowageはCPMの大量療法が有効であって,腫瘍が小さくなれば低用量で継続するべきだしたが,治療を受けた4人のうちの2人の生存者が長期生存したかどうかは報告されていない。Aryanは,CBDCAが無効であった例でtemozolomideと脳脊髄照射での2年生存例と,VCR/CCNU/6-TG/PCZの無効例でtemozolomideが有効であった2年生存例を報告しているがその後の経過の記述はない。


毛様細胞性星細胞腫の自然歴(特に視路/視床下部のものに関して)

in infant :
        pilomyxoid type
        rapid tumor growth, CSF dissemination
in very young children :
        continuous growth of tumor
        worsening of vision and hormonal function
in young children :
        growth arrest and/or regrowth
        cystic degeneration and expansion
in adolescent :
        spontaneous involution
in adult :
        quiet tumor residue

小児の毛様細胞性星細胞腫は不思議な腫瘍である。患児の脳の成長とともに増大し,やがて退縮する時期がくる。
乳幼児時期には,病理組織像が毛様粘液性星細胞腫で,MRI T2で均一な高信号になりガドリニウムで強く増強される。腫瘍の増大速度は速く,稀には髄液播種することもありそれが腫瘍死の原因となる。奏効率の高い化学療法を早く開始する必要がある。
少し経過して幼児期には,速度は落ちるがやはり腫瘍は増大傾向をたどり腫瘍内のう胞形成とのう胞の拡大をみることが多い。この時期にも症状の悪化が多く,化学療法は継続する必要があろう。pilomyxoid typeからjuvenile type pilocytic astrocytomaへ組織像が変わっていく。
学童期では,化学療法が奏効すれば腫瘍の増大が止まるか,あるいはまたゆっくりと再増大する。それとは別に,腫瘍実質が増大せずに,腫瘍のう胞のみが拡大するという現象が生じる。こののう胞拡大はoncolytic cystと呼ばれるような腫瘍変性に伴うものであり,化学療法を行なってものう胞拡大を止めることが難しいことが多い。手術によるのう胞壁部分摘出がとなる時期でもある。
思春期になると治療を加えなくても腫瘍は増大傾向を停止することが多い。この時期までの長年にわたっての治療が必要となると考えて初期治療に当たることが肝要であろう。さらに自然退縮という腫瘍の縮小傾向がみられることが多い。
成人では増大しないmassとして腫瘍が発見される。T2強調画像でわずかな高信号,ガドリニウムでほとんど増強されない。無治療で経過観察しても全く変化がないということがしばしばであるので,視野欠損などの症状があっても,このようなものを疑えば生検手術もせずに経過のみをみたほうがいい。


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Sawamura Y, Kamoshima Y, Kato T, Tajima T, Tsubaki J: Chemotherapy with cisplatin and vincristine for optic pathway/hypothalamic astrocytoma in young children. Jpn J Clin Oncol 2009 Feb 17. [Epub]
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