線維形成性乳児星細胞腫/神経節膠腫について

desmoplastic infantile astrocytoma DIA/ ganglioglioma DIG

  1. 乳児にできるとてもめずらしい良性腫瘍です
  2. 短期間に頭囲が異常に大きくなる,大泉門(頭のてっぺんの骨のないところ)が膨らんでくるなどで気付かれます
  3. それから,ぐったりして元気がなくなったり,嘔吐したり,眼の動きが悪くなったり(眼が下の方に向く)などします
  4. 麻痺やてんかん発作(けいれん)を生じることもあります
  5. 大脳の表面にできて,とても大きな腫瘍で,大きなのう胞(液体がたまる)を伴います
  6. 画像からはPNETと間違うことがありますので気をつけて
  7. 腫瘍の特徴は,乳児の大脳の表面にある巨大な腫瘍です
  8. とても大きいので脳外科の先生もびっくりします
  9. 液体のたまっているのう胞が大部分です
  10. 不正形に造影剤で増強されて白く映る塊が見えますが,それが本体です
  11. 手術で全部取れれば治りますし,再発はしません
  12. たとえ少し取り残しても,化学療法(制がん剤)や放射線治療などをしないでようすをみます
  13. 残った腫瘍が大きくなってくる場合には,また開頭手術で摘出します
  14. 良性の腫瘍でWHO グレード1(もっとも経過の良い腫瘍)です
  15. この腫瘍で死亡することはありません
  16. でも,乳児の巨大な脳腫瘍なので手術は簡単ではないですし,手術合併症(死亡例や重い脳損傷)の可能性はあります
  17. 大脳の表面に傷が残りますので,症候性てんかん(けいれん発作)を起こすことがあります
  18. 症候性てんかんが生じたら,小児科の先生に抗てんかん薬を処方していただいて発作を止めます

病理の所見と専門的知識

急激な頭囲拡大など,乳児特有の頭蓋内圧亢進症状で発症する。多くは生後6ヶ月以内,おそくとも18ヶ月で発症する。
乳児の軟膜下神経上皮細胞(上衣下星細胞)から発生するが,大脳皮質と軟膜起源の腫瘍の性質を有するので,硬膜にしばしば癒着する。
頭頂葉と前頭葉表面に広がり数センチを越える巨大なのう胞性腫瘍となる。大脳深部方向へ食い込むのう胞があり固形腫瘍部分は結節様に表在することが多い。
膠細胞(glia)のみで腫瘍細胞が形成されるもの (DIA) と,神経細胞 (neuron, ganglion cell)を混じるもの (DIG) がある。臨床経過は同じであり予後は極めてよいので,両者を同様に治療してよい。
病理組織学的には 非常に顕著なdesmoplasia 線維形成(reticulin stain)が特有の所見である。細胞密度は中等度に高いが,MIB-1の染色率は低く緩徐な増大傾向を指示する。glia成分はGFAP陽性で突起の目立つ星細胞が主体となる。混在する神経細胞 (neuronal differentiation) の密度はさまざまである。gemistocyte様の星細胞がみられ,髄膜に近い部分では膠原線維の増生がある。
小型円形細胞が密に存在する部分像 (poorly undefferenciated cell nest) をみることが多いが,これをanaplastic astrocytoma, gliosarcoma, PNETなどの混在と誤ってはならない。この部分にMIB-1染色率が高いが3%程度である。しかし,稀に高度の分裂像をみることがある (Duffner 1994)。
glial cellはGFAP, vimentin陽性。neuronal cellはsynaptophysin, neurofilament protein, class III beta-tublin, MAP 2などが陽性。
desmoplasiaの程度が低いものではgangliogliomaと診断されるのであろうが,臨床像がDIGであれば予後はDIGとして治療を考えた方がよい。
巨大なのう胞を伴うので,頭蓋内圧亢進と意識障害が強い例では,まずのう胞穿刺で廃液ドレナージして,意識を改善して圧排された正常脳の変移を戻してから,2期的に腫瘍結節切除をするとよい。
のう胞は多房性のこともあり,内容液は黄色透明なことが多い。実質成分は脳表に存在して硬く,周囲の髄膜と癒着するが,正常脳とは境界が明瞭に見える。血管成分は腫瘍結節部に豊富であるが,ほとんど皮質動脈からの栄養枝であり,手術時に出血をコントロールすることは容易である。硬膜に強く癒着することがあるが,硬膜組織に浸潤しないので,必要であれば癒着部のみの硬膜切除をする。
巨大な乳児脳腫瘍にも関わらず死亡例の報告はほとんどない。しかし,乳児の開頭術なので手術合併症としての周術期死亡がありえる。完全摘出できない場合には経過を見るが,多くの場合は全摘出できる腫瘍である。放射線治療は適応とならず,化学療法の有用性は不明である。

文献

Duffner PK et al.: Desmoplastic infantile ganglioglioma: an approach to therapy. Neurosurg 34, 583-589

 

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