松果体のう胞(嚢胞)について
pineal cyst

  1. 松果体という脳の真ん中の深いところにできる袋(嚢胞)みたいなものです
  2. 中には水(液体)がたまっています
  3. 若い人に多いです
  4. 大きなものは若い女性によくみつかります
  5. 症状がでることはまずありません
  6. 頭痛などがあってMRI検査をすると偶然発見されるのです
  7. ですから,治療をする必要がないものです
  8. 少し大きくなってもあわてない,そのうち大きくならなくなります
  9. 手術を勧められたらセカンドオピニオンを聞きに他の施設に行きましょう
  10. 間違えやすい疾患に松果体腫瘍があります
  11. なかでも松果体細胞腫との区別が大切ですが,みなれていればMRIで区別できます
  12. 松果体腫瘍かもしれないからといわれて手術を受けるのは良くありません
  13. まれに中脳水道というところを押して水頭症を出すことがあります
  14. 症状はまず頭痛です
  15. とてもまれに,物が二重に見えること(複視)もあります
  16. どうしても手術しないといけない場合には,開頭術ではない方法があります
  17. 内視鏡手術か定位脳手術という方法でブツンと嚢胞を破るだけです
  18. 松果体嚢胞という正確な診断がつけば経過をみる必要もないことも多いです

松果体嚢胞 拡大図

若い女性にできた,症状の全くない松果体のう胞です。右側は拡大図で,8 mmくらいの大きさでしょうか。もちろん何もする必要はありません。たくさん発見されるものです。


これも成人女性に偶然見つかった松果体のう胞です。少し大きめですが,何も治療する必要はありません。中脳水道という所が狭くなっていますが,はっきり閉塞するまでは治療はしません。左がT1強調画像で黒っぽく見えます。右はT2強調画像で白く映っています。


1)疾患概念

 松果体嚢胞 (pineal cyst) は松果体内部に発生する良性の嚢胞であり,発生原因は不明である。剖検例によれば,松果体の嚢胞性変化は25~40%の高頻度に認められる。MRI画像で明瞭に捉えられる大きさである長径5 mm以上のものでも1.3 %の頻度であり,4 松果体の嚢胞性変化は病的変化とは言えない。

 図1に示すように5 mm以上となる松果体嚢胞は,思春期から若年成人に多く認められる。中でも20代の女性に最も多く,10才以下の小児では松果体嚢胞がまれであることも重要な事実である。4下垂体腫瘍例で松果体の嚢胞化を見ることがあり,また思春期早発症に松果体嚢胞が合併したという報告がある。

2)診断

 症候性となることは極めて珍しく,ほとんどすべての例が偶然見つかる無症候性嚢胞である。症候性となるほとんどの例では水頭症を併発する。

 嚢胞が増大して中脳被蓋を圧迫して軽度の複視を初発症状とすることがある。更には中脳水道を狭窄して閉塞性水頭症となり,頭痛,嘔吐などの頭蓋内圧亢進症状を呈する。水頭症がない症例においての単なる頭痛は松果体嚢胞の症候としては捉えない。

 鑑別すべき疾患としては,glial cyst, arachnoid cyst, ependymal cystなどが松果体に発生することが知られている。しかしこれらは良性嚢胞であり,松果体嚢胞と同様に治療の必要がない。時として鑑別が難しいものに松果体細胞腫がある。しかし,MRIで松果体嚢胞と比較するとこの腫瘍は,嚢胞壁が厚く壁の厚さが不均一でありまた壁が増強効果を受けるので,鑑別を誤ることは少ない。

3)治療

 症候性でなければ,何も治療をすることがないというのが原則である。症候性となり治療が必要であったという過去の報告にも若い女性が多い。3, 5

 松果体嚢胞が症候性であるという十分な証拠があり治療を行うとすれば,多くの場合は水頭症を併発している。開頭による摘出よりもCTガイド定位的手術もしくは神経内視鏡を用いる嚢胞穿刺の方が低侵襲な治療である。一度,嚢胞内容を穿刺吸引をすれば再発することは少ない。開頭手術を選択する場合は,増大する嚢胞であり嚢胞壁が厚く,松果体細胞腫との鑑別が必要な例に限られる。この場合は,後頭半球間裂経テント法により摘出するがこの手術の難易度は低くはない。

4)予後

 無症候性松果体嚢胞が増大することはまれであり,増大したとしても数年で1~2 mmほどのことが多い。初回診断のみ正確に行えば,原則的にはMRI画像による経過観察の必要性もない。1 20 mmを超える大きなものであっても,それが増大して症候性になることはほとんどないので積極的な治療をしてはならない。

5)文献

  1. Barboriak DP, Lee L, Provenzale JM: Serial MR imaging of pineal cysts: implications for natural history and follow-up. AJR Am J Roentgenol 176: 737-743, 2001
  2. Dickerman RD, Stevens QE, Steide JA, et al.: Precocious Puberty Associated with a Pineal Cyst: Is it Disinhibition of the Hypothalamic-Pituitary Axis? Neuro Endocrinol Lett 25:173-175, 2004
  3. Michielsen G, Benoit Y, Baert E, et al.: Symptomatic pineal cysts: clinical manifestations and management. Acta Neurochir (Wien). 144:233-242, 2002
  4. Sawamura Y, Ikeda J, Ozawa M, Minoshima Y, Saito H, Abe H: Magnetic Resonance Images reveal a high incidence of asymptomatic pineal cyst in young women. Neurosurgery 37: 11-16,1995
  5. Wisoff JH, Epstein F: Surgical management of symptomatic pineal cysts. J Neurosurg 77: 896-900, 1992

図1(Figure 1)

MRIで発見された5 mm以上の松果体嚢胞の年令分布と頻度。

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