神経線維腫症1型 (NF-1)と神経線維腫症2型 (NF-2) について
neurofibromatosis type 1, neurofibromatosis type 2

 

1. 要点

  1. 親から子に遺伝(常染色体優性遺伝疾患)することもありますが,半分以上の患者さんは遺伝ではありません
  2. 1型は全身の皮膚にたくさんの小さな腫瘍(末梢神経線維腫)と茶色のシミのようなもの(カフェオレ斑)ができる病気です
  3. 1型はかつてフォンレックリング・ハウゼン氏病として知られていました
  4. 第17番めの染色体17qにあるNF1という遺伝子の変異でneurofibrominという蛋白が正常に働かなくなって起こる病気です
  5. 2型は脳神経と脊髄神経に神経鞘腫や髄膜腫がたくさんできる病気です
  6. 第22番めの染色体22qにあるNF2という遺伝子の変異でmerlinという蛋白が正常に働かなくなって起こる病気です
  7. 両方ともにある程度病気が重いと医療費の補助がされます
  8. 1型の患者さん(数千人に一人)の方が2型(数万人に一人)よりかなり多いです
  9. 1型で治療しなければならない脳腫瘍はめずらしいですが2型の脳腫瘍は治療を必要とすることが多いです
  10. いずれも良性腫瘍ですから治療をあわてる必要はありません
  11. 現代では治療法が発達しているのでどのような脳脊髄腫瘍になっても治療法はあります
  12. たくさん腫瘍があるといっても治療をしなければならないかどうかかなり慎重に考えることが大切です
  13. だいたいが良性腫瘍なので何もしないでおいても症状が悪くならないこともあるのです
  14. 2型にできる両側の聴神経腫瘍の治療はとても難しいので普通の脳外科医の先生には治療できませんからそれに詳しい専門家に相談しましょう

神経線維腫症の診断基準と医療費の補助に関しては東京都難病医療費補助に詳しく書かれていますからここをクリックしてみて下さい


神経線維腫症2型 NF-2にできる脳と脊髄腫瘍

  1. 脳と脊髄のさまざまな神経や髄膜にどこにでも腫瘍ができます
  2. とても有名なのが両側の聴神経腫瘍で,診断基準に入ってます
  3. 一番多いのが神経鞘腫で,聴神経(前庭神経),三叉神経などなどの脳神経や,脊髄の神経にもできます
  4. 2番目は髄膜腫で脳や脊髄を被っている髄膜にできますが,頭の中でも脊柱管の中でもどこにでも発生します
  5. 髄膜腫症 meningiomatosis といって多数の髄膜腫がいたるところにできるというのもあります 
  6. 脊髄の中には上衣腫ができます
  7. これらの腫瘍は多発する(たくさんいっぺんに見つかる)のが特徴です
  8. 治療は,大きくなってくるあるいは症状を出してくるものだけにします
  9. 無症状の腫瘍に治療をすることは注意深くしなければなりません

合併する腫瘍の詳しい説明は別なページに書いてありますから下の病名をクリックして下さい

聴神経腫瘍について,その他の神経鞘腫について,髄膜腫について


NF-1と脳腫瘍

  1. さまざまな神経膠腫(グリオーマ)というのができます。
  2. NF-1の患児に見られる視神経膠腫はもっとも頻度の高いものです。下の図のように眼窩の中の視神経が腫瘍になることもありますし,視神経交叉といって両方の視神経が合わさった場所にできるものもあります。視神経膠腫はとても小さい子供にできて視力が下がりますが,手術で摘出することはできません。でも,とってもゆっくり大きくなり,ある程度の年齢になると大きくなるのが止まってしまいます。手術以外の治療法は毛様細胞性星細胞腫(クリック)のところに書いてありますから読んで下さい。
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  4. 毛様細胞性星細胞腫は,視床下部や小脳にもできます。
  5. 小脳にはびまん性星細胞腫もできますが,その中には悪性度の高いものもあります。
  6. 大脳にもさまざまな神経膠腫ができます。膠芽腫のように悪性度の高いものや乏突起膠腫のように治るものもあります。下の左図はNF-1の小児にできた右前頭葉の乏突起膠腫です。右は術後の写真です。
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NF-1とNF-2で脳腫瘍と間違っていはいけない脳の病変

  1. 過誤腫(hamartoma)とか異形成(dysplasia)とか髄鞘空洞化(myelin vacuolization)とか脳室上衣下結節(subependymal glial fibrillary nodue)とか過形成性グリオーシス(hyperplastic gliosis)いわれるものです。
  2. MRIで腫瘍のようにみえますがそうではありません。T2強調画像で白く見えてガドリニウム造影されないのが一般的な特徴です。
  3. 下の図はNF-1の小児の脳幹部の神経膠腫と間違いやすいグリオーシすです。腫瘍と間違って治療すると大変なことになりますから注意です。
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NF-1とNF-2の水頭症

多くの場合は過形成性グリオーシスで,中脳水道という髄液の流れ道がつまって水頭症になります。これは急に症状を出すことがなくて慢性の頭痛とかを生じる停止性水頭症になりやすいです。治療は,内視鏡を使って髄液の通り道をあける第3脳室開窓術というのをしたら治ります。


NF-1の末梢神経の病気

  1. 脊髄神経の根元(脊椎)に神経鞘腫ができて脊髄を圧迫することがあります
  2. 蔓状神経線維腫 plexiform neurofibroma というのはある範囲(例えば右の首あたりとか)に蔓状の線維腫がたくさんできてそれが大きな固まりを作ってくるものをいいますが,脳にはできません
  3. 蔓常線維腫は手術でとても広く広がるので全部取ることができません
  4. 中年から高齢者になると5%くらい,1000人に一人くらいの患者さんで神経線維腫が悪性腫瘍(線維肉腫)になることがあります

最近の情報(NF-1の子供の視神経膠腫への放射線治療は危険)

Sharif S, Ferner R, Jillian M. Birch, James E. Gillespie, H. Rao Gattamaneni, Michael E. Baser, D. Gareth R. Evans: Second primary tumors in neurofibromatosis 1 patients treated for optic glioma: substantial risks after radiotherapy. J Clin Oncol: 2570-2575, 2006

イギリスからの報告です。18人のNF-1の患者さんが視神経膠腫のために放射線治療を受けました。その内の9人 (50%) に2次腫瘍が発生し,子供の時に放射線治療を受けていたとのことです。放射線治療を受けなかった40人の患者さんでは8人 (20%)に2次腫瘍が発生しました。2次腫瘍とは,15例の神経膠腫と6例のMPNST(悪性末梢神経鞘腫)です。2次腫瘍の発生の危険率は放射線治療を受けると3倍になるということです。NF-1の子供には脳腫瘍に対する放射線治療はよほどの理由がないと行わない方がいいと結論されています。

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