ランゲルハンス細胞組織球症 (LCH) について
Langerhans cell histiocytosis (LCH)

要点

  1. おもに子供に生じる病気で,10歳以下に多いです
  2. ほんとの腫瘍とはいいがたいものですが,ランゲルハンス細胞の異常(腫瘍性)増殖による炎症と考えられています
  3. とても大切なことは何も治療をしなくても自然に治ってしまうことがあることです(自然寛解)
  4. 全身のどこでもできる病気ですが,頭蓋骨と脳にも生じます
  5. 頭蓋骨にできるものは,好酸性肉芽腫症とよばれました
  6. 頭蓋骨では,頭の骨が盛り上がったりへこんだりして気づくことが多いです
  7. 頭蓋骨の中でも頭蓋底という頭の底の骨にできるものはやっかいです
  8. 頭蓋底の骨のものはかなり広がらないと症状を出さないので気づかれないこともあります
  9. 側頭骨にできると聴力低下で発見されることもあります
  10. 脳では,視床下部の下の方の灰白隆起から下垂体という場所に多いです
  11. おしっこがたくさん出てのどが渇くという尿崩症や身長が伸びない成長ホルモン欠損症などで症状が出ます
  12. このようなものはジャーミノーマという脳腫瘍とまちがいやすいです
  13. 大脳や小脳に病変が現れることもあります
  14. 脳に病気が生じると,てんかん発作や認知症などいろいろな神経症状とかの後遺症を残すことがあります
  15. 小脳に生じると小脳失調というふらつきが出ます,また小脳萎縮で発症することもあります
  16. たくさんの臓器に発生するものとか,再発を繰り返すものとか,おもいタイプのLCHでは,症状がなくても脳のMRIを定期的に検査した方がいいかもしれません
  17. 命が危ない病気ではありません

診断と治療

  1. LCHはまず,単一臓器型(孤発あるいは多発)か多臓器型かを区別して診断します
  2. 例えば脳だけなら単一臓器,脳と肺にあれば多臓器型といいます
  3. 単一臓器でも病変が多発することがあります
  4. 脳の何カ所かあるいは頭蓋骨に多発するものは,多病変単一臓器型と捉えられます
  5. この診断のためには全身のCT, MRIやシンチが必要です
  6. 多臓器型では予後が悪いこともあるので,LCHにかなり詳しいお医者さんを選びましょう
  7. 小児の治療は,脳外科ではなくて小児科でします
  8. 成人を含めて,血液腫瘍疾患の専門の先生が詳しいでしょう
  9. 頭蓋骨穹隆部にできたものの摘出や脳にできた病変の生検術は脳外科でします
  10. 多発病変に対する化学療法(制がん剤)は脳外科医は詳しくありません
  11. 頭蓋骨底の単発浸潤性病変には低線量の局所放射線治療が用いられることがあります

古い病名ですがLCHと同じ疾患をさすもの

  1. 組織球症X (histiocytosis X)
  2. 好酸性肉芽腫症 (eosinophilic granuloma)
  3. ハンド・シューラー・クリスチャン病 (Hand-Schuller-Christian disease)
  4. レテラー・ジーベ病 (Abt-Letterer-Siwe disease)

頭蓋骨のLCH

  1. 上の写真は,子供の右の頭頂骨にできたLCHで,頭部病変では最も多く見られるタイプです
  2. 頭蓋骨が丸く抜けるように破壊されるのでpunched out lesionと表現されます

頭蓋骨のLCH

  1. 子供の頭頂骨にできたLCHです,順番に頭蓋骨単純写真,単純CT,bone-window CT,MRI T1強調像,MRI T2強調像,MRI T1ガドリニウム増強像,MRI CISS像です
  2. この病変は単発(孤発)病変ですが,ややいびつな形をしていて,頭皮の方に盛り上がっていますから,活動生の病変です
  3. 手術で完全摘出すると治りますから,手術したほうがいいです
  4. 理由は,手術が簡単なこと,病理診断がつくこと,これ以上の病変の広がりを抑えること,頭蓋骨をチタンプレートで形成することです

脳のLCH

  1. 左の写真は,両側の側頭葉内側(黄色の矢印)と視床下部(赤)に同時にできたLCHです
  2. このように脳のLCHは近寄った場所に多発するように散在性に発生することがあります
  3. これを単発病変とするのか1臓器の多発病変とするのかはわかりません
  4. 左の写真は3ヶ月後のものですが,なにも治療しないで自然に病巣は消失してしまいました(自然寛解)
  5. しかし,脳のLCHは脳組織を破壊して広がりますから,病像が消えても症状は後遺症として残ることが多いです
  6. ですから,脳病変が発見されたら正確に診断して治療を行った方がいいでしょう
  7. とてもよく似た尿崩症という症状で子供たちにできる病気にジャーミノーマというものがありますが,治療法が全く違うのでジャーミノーマに詳しい専門医に一度は診てもらうべきです

LCHの病理像

 

  1. 頭蓋骨のLCHの病理像です。左はHE染色,右はランゲルハンス細胞に特異性の高いCD1a(specific to dendric Langerhans cells) 染色です
  2. 多数のLangerhans cellとともに,組織球,リンパ球,好酸球,多核細胞など多彩な細胞浸潤があります
  3. これは活動性のLCHの病巣から摘出したものですが,自然緩解して収まった病巣を生検術で摘出しても,このような典型的な病理像がなくて慢性炎症像がみられるだけのことがあります。その場合は確定診断がつきません

ランゲルハンス細胞組織球症(LCH)患者会(ここをクリックしてみて下さい

日本ランゲルハンス細胞組織球症研究グループ(ここをクリックしてみて下さい)

このページのトップに戻る