頭蓋咽頭腫(いわゆるクラニオ)について

クラニオとは

  1. 手術で取れてしまえば治るのですが,手術が難しいことが最大の特徴です
  2. 頭蓋咽頭腫はcraniopharyngiomaというので業界用語でクラニオと呼ばれます
  3. 病理学的には良性の腫瘍ですし、転移したりはしません子供たちにも成人にも発生する腫瘍です
  4. 脳の中心の視床下部と下垂体というところに発生してくっつきますし,視床下部に浸潤しているものもあり、それを摘出すれば当然、視床下部組織の損傷がおこります
  5. 小さなものでは1 cmくらいから大きなものでは数cmになるものまであります
  6. この腫瘍は大きくなるととても面倒です
  7. 大きくなると第3脳室、鞍上部、トルコ鞍から周囲に広がりますし,放っておいたらほとんどが大きくなってくるので、私は診断がついたら経過を見ないでなるべく手術治療を選んだ方が良いと考えています
  8. もちろん例外もあって,成人では経過観察してもほとんど大きくならないものもみたことがあります
  9. ラトケ嚢胞を頭蓋咽頭腫と間違えることがありますが,症状がないあるいは軽いラトケ嚢胞は治療しなくていいことも多いですから気をつけて
  10. 治療が成功しても視力視野障害やホルモンの不足などなんらかの後遺症を残すことが多い病気です
  11. 肥満は頭蓋咽頭腫にとても多い合併症です
  12. 治療の目標はいかに後遺症を少なく腫瘍を完全に取り除くかですが,症状の出かたはいろいろです
  13. 大きな頭蓋咽頭腫は水頭症があって緊急手術になることがありますが,ちょっとまって! 執刀医にこの腫瘍の手術経験がないとうまくいきません
  14. 私は最近,再発した頭蓋咽頭腫の手術を頼まれることが多いのですが,2回目,3回目の手術はさらに難しいものになっていて,ほとほと困ります
  15. 頭蓋咽頭腫の手術は患者さんにとっても脳外科医にとっても,こわいものです
  16. 最初の手術で下垂体の機能を温存するのは大切な目標ですが,同時になんとしても腫瘍を治す見込みがもてるような程度の手術結果を出さなければなりません
  17. そうしないと再手術を繰り返すドロヌマに入ることになるかもしれない腫瘍なのです
  18. 最終的な予後を決めるのは,初回手術の結果と脳神経外科医の執刀経験です

症状は

  1. おしっこがたくさんでる尿崩症という症状
  2. 身長が伸びなくなる成長ホルモン欠損症(子供)
  3. 元気がなくなったり疲れやすい下垂体前葉ホルモンの不足
  4. 成人では生理が止まったり,性欲が無くなることがあります
  5. ゆっくり眼が見づらくなる視野欠損
  6. こどもでは両親が気づかないうちに高度の視力障害になっていることがあります
  7. 大きな腫瘍の視力障害は急に進行して手術しても戻らないことがあります
  8. 頭の中に水がたまる水頭症による頭痛と吐き気
  9. 大きくて腫瘍の周りに強い脳浮腫をみるようなひどい例では意識障害や痴呆(認知症)や麻痺がでてから来た人もいます
  10. とくに注意しなければならないのは,乳幼児の視力障害です,対光反射がはっきりしないところまで行ってしまうと,手術で視神経の圧迫を除いても両側の視力を消失することがありますから,急いで手術しなければなりません

検査は

  1. MRI、眼科での視野検査,内分泌内科か小児科での下垂体ホルモン検査が必ず必要です
  2. 無症状のものは経過観察してもいいのですが,子供の頭蓋咽頭腫はほとんどの例で増大してきますから,かなり頻回にMRI検査をする必用があります
  3. 成人の頭蓋咽頭腫ではまれに数年みても大きくならないものがあります

大きな頭蓋咽頭腫

こんなに腫瘍が大きくなってもちゃんと学校へも行けるし,目立った症状がなかった子供もいます。大人でも同じくらいの大きさのクラニオを見たこともあります。ゆっくり大きくなるので変化に気づかれないのです。逆に,トルコ鞍の中にある2 cmくらいの小さなクラニオもあります。大きさによって手術の難しさは代わりますが,全部取らないと再発する可能性がとても高い腫瘍です。

治療は

  1. まず手術、でもむずかしい、子供は特にむずかしい
  2. 頭蓋咽頭腫の手術を受けるときには執刀者を選びますが,同様な腫瘍の手術に経験を積んでいないと頭蓋咽頭腫の手術はできません
  3. 執刀者が子供の腫瘍や頭蓋咽頭腫にどのくらいの経験を持っているかが重要です
  4. 開頭を必要とするもので10例くらいの類似の手術の経験がめどかもしれせんが、この数字を断定はできません
  5. 下垂体から発生してでトルコ鞍というところの中に入っているものは鼻の穴からとれます
  6. 鼻の穴から蝶形骨洞を通ってトルコ鞍という下垂体が入っているところに到達する方法です(経蝶形骨洞手術)
  7. トルコ鞍拡大がある頭蓋咽頭腫では,1歳でも経蝶形骨洞手術はできます(実際にしました)
  8. それ以外のものは開頭手術になります
  9. 開頭手術の方法には主に2つの到達法があります
  10. ひとつは、両側の前頭部を開頭して左右の前頭葉の間からあるいは持ち上げて入る方法です。
  11. これは主に鞍上部や第3脳室というところにある頭蓋咽頭腫をとるのに使います
  12. もう一つは、右か左かの前頭側頭開頭をして前頭葉と側頭葉の間からのぞく方法で、ちょっと頭蓋底手術に近いものになります。これは主に鞍上部にある腫瘍をとるのに用います
  13. 他にも脳梁を切って第3脳室に上から入る方法や,錐体骨を削ってみるという方法などいろいろありますがどれが正しいというのではなくて、手術の方法は腫瘍の大きさと伸びている場所で決まるのです
  14. 開頭手術でも鼻からの手術でも,下垂体を残せることもあるし残せないこともあります
  15. それは頭蓋咽頭腫がどこから発生したかで決まることが多いです
  16. 大切なことは,下垂体を残そうとして腫瘍も残ってしまって,またすぐに再発(残存腫瘍増大)が生じてしまうような事態を避けることです
  17. 場合によっては下垂体柄と下垂体を意図的にとってしまって,腫瘍を全摘出するという判断もしかたがありません
  18. 経験が少ないと正しい手術の方法を選ぶことが難しいです
  19. ちなみに私は小さい腫瘍も含めて120例くらいの手術経験があります
  20. 患者さんの側からはこの腫瘍を手術する外科医の責任が重くてとても苦労することを推察して下さい

意外に危ない手術直後の管理

  1. 手術の直後に視床下部と下垂体の機能が悪くなって、体の中の電解質(特にナトリウム)のバランスを崩すことがあります
  2. 脳性塩類喪失症候群 (CSWS) と言いますが,このような手術になれている脳外科病棟か内分泌専門の小児科医(内科医)の協力が必要となります
  3. 低ナトリウム血症や高ナトリウム血症では意識障害やてんかん発作(けいれん)が生じます
  4. 手術後に尿崩症も加わっていることが多いので,これらの管理がきちんとできないと死亡することもあり得ます
  5. 手術だけうまく行っても術後が危ないのです
  6. 水頭症の管理,場合によっては脳梗塞などの手術合併症の管理もたいへんです

術後の合併症は

  1. 簡単な手術ではありません,術後の合併症はさまざまです
  2. 最悪の場合,手術で失明したり,死亡することがあります
  3. 視床下部から下垂体の一部(特に下垂体柄)を傷つけると、おしっこがたくさん出てしまう尿崩症がでたり、またもともとあった尿崩症が悪化します
  4. 尿崩症はデスモプレッシンという液体を鼻の中に毎日入れることで治療できます
  5. 同じ場所の損傷で、下垂体前葉ホルモンの障害が出ます,その程度はいろいろです
  6. 前葉ホルモンには、成長ホルモン,性腺刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモン、副腎皮質ホルモンなどがありますが、足りない場合は薬を飲んだり定期的に注射して補っていかなければ普通の生活はできません
  7. 身長が伸びなくなる,生理が止まる,元気がなくなる,意欲がなくなるなど前葉機能障害の症状はさまざまです
  8. 完全な下垂体前葉機能の消失では肥満などが大きな問題になります
  9. 視床下部の大きな損傷では意識障害がでます
  10. 視神経、視神経交差、視索は頭蓋咽頭腫にくっついている場合が多いのですがこれらを損傷すると視力の低下や視野の欠損が出てみづらくなります
  11. 下垂体腺腫と比べて,頭蓋咽頭腫の視力障害は回復が悪く,逆に,手術で視力と視野が悪化することは稀ではありません
  12. 手術の手段にもよるのですが、前頭葉の損傷では高次脳機能障害(とくに知能の低下、性格の変化)などが残る可能性があります
  13. 最も危ないのは脳血管を傷つけることです動脈や大きな静脈の損傷では脳梗塞ができてしまうことがあります
  14. 特に小児の場合は,内頚動脈などの大きな動脈に乖離(動脈の壁が裂ける)が生じることがあります
  15. 小さな動脈でも穿通枝と呼ばれるものの損傷は可能性が高いです
  16. この損傷では手足の麻痺が残ることもあります
  17. 脳の損傷があると術後に症候性てんかんというけいれん発作が起こることがあります
  18. 他には感染症(特に前頭洞を開けた場合)や術後出血,髄液漏など一般的な手術で見られる合併症もありえます

放射線治療は

  1. 放射線治療の細かい成績ははっきりしませんが、ある程度有効であることは確かです
  2. 頭蓋咽頭腫は脳に深く浸潤する腫瘍ではないので腫瘍以外の脳には放射線がかからないような正確に計画された照射(定位放射線治療)が必要です,しかし技術的には難しいです
  3. 放射線治療の技術も施設によって大きな差があります
  4. 分割照射という方法で何回かに分けて照射するのが普通です
  5. 術後に残った腫瘍や再発腫瘍では場所によってガンマナイフ,ノバリス,サイバーナイフなどが使えるものもあります
  6. でも、ガンマナイフは腫瘍が視神経などにくっついている場合には使えません
  7. 小児の大きな腫瘍に放射線治療をすると知能の発達が遅れる(精神発達遅滞,認知機能障害)可能性があります
  8. 下垂体に放射線がかかると下垂体前葉ホルモンの障害が出ます
  9. 放射線治療をしてもまた再発(再燃)をすることは珍しくありません
  10. 再発・再燃が多い腫瘍ですがその場合は治療がさらにむずかしくなっていますから,最初から計画されたレベルの高い治療を受けることが後遺症を少なく生き残るためのコツです

クラニオパークという頭蓋咽頭腫の患者さんの会があります


ちょっと小さな頭蓋咽頭腫です

ちょっと小さな頭蓋咽頭腫 ちょっと小さな頭蓋咽頭腫

トルコ鞍の中から発生する頭蓋咽頭腫は,身長の伸びが悪い(低身長)とかおしっこの量が多くて水をたくさん飲む(尿崩症)とかで発症します。それから視力の障害。たいていの場合は小さい腫瘍が多くて,鼻から(経蝶形骨洞手術)で摘出できます。のう胞の部分(右のMRIの真っ白な部分)をつぶすだけの手術だと再発しますから,腫瘍を全部取る手術を目指します。そうしないと何度も手術を繰り返すか,放射線治療をすることになってしまいます。目標は下垂体の機能を少しでも残すことですが,下垂体組織との剥離が難しいことも多いです。幼児で副鼻腔の発達がなくても,ドリルで骨を削ればこの手術は可能です。でもそれができる外科医は少ないかも。


ちょっと大きな頭蓋咽頭腫です

ちょっと大きな頭蓋咽頭腫 ちょっと大きな頭蓋咽頭腫

嚢胞(液体が入っている袋)の部分と,腫瘍細胞が固まっている実質部分が入り交じっています。このくらいの大きさになってしまうと,下垂体機能を残すことはとても難しくなります。視神経が圧迫されて視力低下と視野障害を生じます。第3脳室が腫瘍で閉塞していて水頭症になっていますから知能の活動が低下します。

太い脳動脈 太い脳動脈

腫瘍を摘出するのに危ないのは,脳の血管の損傷です。左では白く,右では黒く線状に移っているのが太い脳動脈です。これら以外にもたくさんの細い重要な動脈が絡んでいます。

腫瘍は摘出 腫瘍は摘出

幸いこの患者さんの腫瘍は摘出できて,患者さんは元気になりました。でもこのくらいのサイズになると手術がいつもうまくいくとは限りませんし,重大な障害が残ることもあります。


もし再発したら

  1. 残念ながら頭蓋咽頭腫の再発・再燃はとても頻度が高いです
  2. とくに,小児の頭蓋咽頭腫は取り残せば必ずまた腫瘍は大きくなりますので,また手術になります
  3. 全摘出できたと考えていても数年後に腫瘍が現れることもあります
  4. 全部取れたと言われても,最初からこの覚悟をしておいたほうが受け入れやすいです
  5. またじっくり担当の先生からお話を聞いてよくよく考えます
  6. こどもの場合には,放射線治療といわれても安易に決断しないことです,もう一度手術すればとれることもありますから
  7. 再手術はさらに難しくなります,でもできるかもしれません
  8. 手術リスクが高すぎる時には放射線治療を選びます
  9. 制がん剤は効きませんので薬物治療はできません

小児の頭蓋咽頭腫を手術で全摘するかどうか?

  1. 良く聞かれるので私の最近(2005年から2009年)の手術を振り返ってみました
  2. 15歳未満で発症した頭蓋咽頭腫を28例手術していました
  3. 初発の子供が16人,再発してから私のところへ来たのが12人でした
  4. 手術の前には両親になにがなんでも全摘出するとは言っていませんでした
  5. でも結果的には,全例で全摘出を試みていました
  6. 術後に自分で全摘したと考えていても,この28人の内で2人が再発しました
  7. またその再発時にも手術で全摘出していました
  8. もっと長く観察するとさらにもう少しは再発の例は増えるだろうと考えています
  9. 結果的に私は自分の過去の経験から小児の頭蓋咽頭腫は全摘しなければならないと考えているようです
  10. でも,これが正しい考え方かどうかはわかりません

開頭手術か経蝶形骨洞手術(鼻から)かの議論

ちょっと専門的な記述です

  1. どちらがいいのかは,腫瘍の発生した場所で決まります
  2. 下垂体から発生した頭蓋咽頭腫は鼻から取れます
  3. 鼻の孔(幼児は口唇下)から入って摘出した方が患者さんの負担は少ないのは明らかです
  4. しかし,鞍上部というところへ伸びると,くも膜下腔から細い動脈が腫瘍に入ります
  5. この動脈の処理を誤ると致命的なくも膜下出血が生じることがありますから,この意味では開頭手術の方が安全性は高いです
  6. 第3脳室内,灰白隆起,下垂体柄から発生した頭蓋咽頭腫は開頭手術になります
  7. 開頭術の方法を選ぶのはとても複雑な要素が絡みます
  8. 基本的には両側前頭開頭,前頭側頭開頭 (pterional)あるいはその両者で行ないます
  9. 両側前頭開頭でも,大脳半球間裂経終板法 (translaminaterminalis)は鞍内から鞍上部さらに確実に第3脳室へ伸展しているものに用います
  10. 両側前頭開頭でも,大脳半球間裂経脳梁法 (transcallosal)は第3脳室に局在するものに用います
  11. 両側前頭開頭でも,両側前頭葉下到達法 (bilateral frontobasal)は鞍上部から鞍内伸展しているものに用います,側方展開に強いのでシルビウス裂に伸展したものにも有利です
  12. さらにいろいろ組み合せもあって開頭法の選択を書いていくときりがないのですが,腫瘍の局在と下垂体柄の位置を正確に把握して最も適切な方法を選択することです

 

9歳児の頭蓋咽頭腫です。この腫瘍は開頭手術でも取れるのですが,視力障害が高度なので鼻の孔(経蝶形骨洞手術)から全摘出しました。腫瘍の塊がトルコ鞍の底にありますが,この部分は開頭手術では多少見づらいです。術後に視力は少し良くなりました。1年後のMRI(右側)では下垂体組織は残っていて,前葉ホルモンは正常ですが軽い尿崩症があります。

 

成人の第3脳室内部に局在する頭蓋咽頭腫です。経脳梁法で両側のモンロー孔から全摘出しました。下垂体組織は残っています。


頭蓋咽頭腫にとってもよく似た腫瘍性病変
トルコ鞍部黄色肉芽腫 xanthogranuloma of the sellar resion

頭蓋咽頭腫とは異なったclinical entitiyとされる。Paulusらが1999年に提唱したもので,xanthogranuloma様の組織像を有するadamantimomatous craniopharyngiomaは通常の頭蓋咽頭腫とことなる予後を示すとした。思春期から若年成人に多く,トルコ鞍内に限局性の腫瘍で,頭蓋咽頭腫としては腫瘍サイズが小さく,その割には下垂体機能低下が著しく,病例が長く,石灰化と視力障害の程度が低く,摘出がしやすく,予後が良いと特徴づけられている。要点はトルコ鞍内に限局性に増大するが速度は遅く,術後再発が少ないという良性の経過をたどるもので,頭蓋咽頭腫とは区別されなければならない。病理像では,cholestelin cleftが優勢にみられ,肉芽腫組織に炎症細胞浸潤があり線維化と巨細胞がみられる。
Paulus W, et al.: Xanthogranuloma of the sellar region: a clinicopathological entity different from adamantimomatous craniopharyngioma. Acta Neuropathl (Berl) 97: 377-382, 1999


尿崩症で発症した9歳男児にみられたxanthogranuloma of the sellar resion。


積極的な摘出が視床下部障害を招く例

De Vile CJらとMuller HLらが別個に報告したものですが,発症時に体重増加が著しかった子供では,手術後の視床下部障害が重いものになったということです。 これは視床下部性肥満があったことを示していて,頭蓋咽頭腫が視床下部に浸潤して視床下部障害を生じていたものと捉えられます。ですから,このような頭蓋咽頭腫を完全摘出すると両側の視床下部損傷を生じる恐れがあります。

 


頭蓋咽頭腫で視力を守るために(ちょっと専門家向け)

頭蓋咽頭腫では視力障害が戻らないことが多いです

  1. 下垂体腺腫と同じような視力視野障害がでます,両耳側半盲といいます
  2. 下垂体腺腫は手術で腫瘍をとると視野欠損が治るのですが,頭蓋咽頭腫では治らないことがあります
  3. 鞍結節髄膜腫はこの両者の中間に位置します
  4. 鞍結節髄膜腫では,開頭手術よりも経蝶形骨洞手術の方が,視力の温存率は明らかに高いことがすでに広く知られています
  5. 頭蓋咽頭腫もそうです
  6. 視力視野障害を呈する頭蓋咽頭腫は経蝶形骨洞手術(経鼻手術)で摘出するべきです

頭蓋咽頭腫 craniopharyngioma

 頭蓋咽頭腫は先天性腫瘍の一つで,小児の鞍上部に好発する腫瘍であるが,成人にも少なくはない。原発性脳腫瘍の3.5%,14歳以下の小児の中では8.9%である。隆起部 pars tuberalisのRathke pouchと呼ばれる類上皮の憩室から発生するといわれている。石灰化を伴うことが多い。組織学的には,基底層が一列に配列し,それに続いて上皮細胞があり,一部に疎な結合職と小血管の部分,さらに嚢胞も存在する。発生部位が鞍上部であり,視神経,視床下部,下垂体を圧迫するため,視力障害の他に,尿崩症,性機能低下,肥満,思春期早発症などの内分泌異常をきたす。

 CTで嚢胞を示す低吸収値域,壁の石灰化像,そして造影剤で腫瘍実質や壁の増強効果がみられる。腫瘍の進展部位と正常組織の圧排変形はMRIで最もよく描出される。治療としては,完全摘出が理想的であるが,視床下部など重要な周辺組織に癒着しているときには完全摘出は困難であり,嚢胞壁の切除と内容物の排除に終わることもある。残存腫瘍に対しては2度目の手術を計画することもあり,放射線治療が有効なこともある。


文献

  1. De Vile CJ, et al: Management of childhood craniopharyngioma: can the morbidity of radical surgery be predicted? J Neurosurg 85:73–81, 1996

  2. Honegger J, Tatagiba M: Craniopharyngioma surgery. Pituitary 11: 361-373, 2008

  3. Muller HL, et al: Functional capacity, obesity and hypothalamic involvement: cross-sectional study on 212 patients with childhood craniopharyngioma. Klin Padiatr 215:310–314, 2003

このページのトップに戻る