コロイド嚢胞について

 コロイド嚢胞の多くは成人の第3脳室に発生しますが,小児の下垂体に発生したものもみたことがあります。10mm以下のものでは多くの場合には症状を出しませんので発見されても手術治療など受けずにほっておきましょう。大きくなると第3脳室という髄液の水道を詰めてしまうので,脳の中に水がたまって閉塞性水頭症という病気を併発します。症状は頭痛と吐き気が最も多いです。


ここからは専門的記述

1)疾患概念

 コロイド嚢胞 (colloid cyst)とは,第3脳室に発生するコロイド嚢胞のことを示す。第3脳室前半部上壁,特にモンロー孔の内側中心部に多く発生する。従って脳弓よりは下方で,脈絡組織(tela choroidea)にぶら下がるような位置である。第3脳室前半を満たすように増大し,中脳水道方向へと伸展する。発生起原については,内胚葉由来とされ,midline maldevelopmental inclusin defectによる胎生期遺残嚢胞として捉えられている。

 MRI診断により偶然発見される無症候性の10 mm以下の小さなものが最も多い。しかし,緩徐に増大してモンロー孔を閉塞して水頭症をきたすとき症候性となる。急激な症状を呈するものでは嚢胞内出血が見られ,きわめて稀ではあるが急性水頭症にて突然死したという報告ある。6

2)診断

 頻度としては30-40代の男性に多い。モンロー孔を閉塞して水頭症をきたし発症する。従って間欠的な激しい頭痛,あるいは持続痛,嘔気,嘔吐が臨床症状である。項部硬直などの他覚的な神経症候は認められない。稀に頭痛,嘔吐に続発して急激な意識障害を生じる。6緩徐進行性の閉塞性水頭症であるので、歩行障害、視力低下、認知機能低下などを呈することもある。

 第3脳室内にはさまざまな嚢胞性病変が発生するが,第3脳室内部の発生母地で鑑別ができる。例えば,前上方に類円形の腫瘤を認めたときにはcolloid cystをもっとも強く疑い,逆に後方であれば松果体に発生した嚢胞性病変である可能性が高い。一般的にCTでは等吸収から高吸収域を示し,MRIではT1, T2強調画像ともに高信号を呈することが多い。造影剤にて嚢胞壁の増強効果を認めることは稀である。

3)治療

 無症候性であっても画像上で閉塞性水頭症を生じているもの,あるいは症候性となったもののみが外科治療の適応となる。かつては前頭開頭による経脳梁的な直視下手術による摘出が行われたが,この手術においては脳梁切開とともに脳弓損傷の可能性があり,記憶障害などの合併症が懸念された。2 近年では,CTガイド定位脳手術や内視鏡を用いる嚢胞内容除去術が一般的であり,後者がより繁用される傾向にある。1,3,7 CTにて高吸収のもの,T2強調画像において低信号を呈するものは内容物の粘度が高く,内容物の吸引術が困難であるとされる。3  当然のことながら、内視鏡手術においても全摘出を目指した場合には脳弓損傷の可能性がある。第一選択枝として,硬性内視鏡を用いて嚢胞内容を吸引除去するが,たとえ完全摘出できなくとも術後経過を観察して,開頭による完全摘出はできうる限り避けた方が良い。

4)予後

 手術によって嚢胞内容が除去されれば再発することは少ない。無症候性コロイド嚢胞が症候性となる頻度は,Pollockによれば,2年,5年,10年の観察期間で,それぞれ0%, 0%, 8%であったという。4 水頭症を併発していないが10 mm程度の大きさがあり40代以前の年令であれば,将来的に症候性となる可能性もあり経過観察をする。5

5)文献

  1. Abdou MS, Cohen AR: Endoscopic treatment of colloid cysts of the third ventricle. Technical note and review of the literature. J Neurosurg 89:1062-1068, 1998
  2. Aggleton JP, McMackin D, Carpenter K, et al.: Differential cognitive effects of colloid cysts in the third ventricle that spare or compromise the fornix. Brain 123: 800-815, 2000
  3. El Khoury C, Brugieres P, Decq P, et al.: Colloid cysts of the third ventricle: are MR imaging patterns predictive of difficulty with percutaneous treatment?. AJNR Am J Neuroradiol 21:489-492, 2000
  4. Pollock BE, Huston J 3rd: Natural history of asymptomatic colloid cysts of the third ventricle. J Neurosurg 91: 364-369, 1999
  5. Pollock BE, Schreiner SA, Huston J 3rd: A theory on the natural history of colloid cysts of the third ventricle. Neurosurgery 46:1077-1781: 1081-1083, 2000
  6. Spears RC: Colloid cyst headache. Curr Pain Headache Rep 8: 297-300, 2004
  7. Horn EM,Peiz-Erfan I, Bristol RE, et al.: Treatment options for third ventricle colloid cysts: comparison of open microsurgical versus endoscopic resection. Neurosurgery 60: 613-618, 2007

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