脊索腫 chordoma について
脊索腫 chordoma
- なんといってもやっかいな悪性腫瘍です
- 病理組織は良性とされますが,良性などと言える腫瘍ではありません
- 成人にも子供にもできます
- 頭蓋底骨あるいは脊椎骨にできる腫瘍です
- 中でも斜台という頭の中心の骨から出ることが多いです
- 硬膜を破って中に入り脳の方へ伸びるように大きくなって症状をだします
- 脳神経を圧迫して目の動きが悪くなったりして発症することも多いです
- 海綿静脈洞へ入って大きくなることもしばしばです
- CTやMRIで見えるよりも実際は広くしみ込むように浸潤しています
- 骨を破壊しているように見えます
- 造影剤で白く増強されてみえます
- 髄液播種といって脳脊髄表面に広く転移することも知られています
- 軟骨肉腫に似た病理のものは多少ですが治りやすいとされます
- もっと悪性の線維肉腫や悪性線維性組織球腫などに変わることがあります
- 治療は手術で全部完全に取ることですが,なかなかできませんし,手術後の再発はとても多いです
- 手術を繰り返して取りきれなくなるのが普通です
- なんとしても完全に取るという目的で手術に望みますし,周囲の健康に見える骨も含めて積極的に摘出することが望まれます
- 通常の放射線(ガンマ線)は効きません
- 手術で残った腫瘍には陽子線あるいは重粒子線治療が良いかもしれません
- エルビタックス(セツキシマブ)とイレッサ(ゲフィチニブ)が効いたというような報告もありますが確立された薬物治療(化学療法)はありません
脊索腫の化学療法(薬物治療)
2004年にイマチニブ imatinibという抗がん剤で脊索腫の増殖抑制ができる可能性があることをCasaliらが報告しました。2006年には18人の患者さんで imatinib 800mg/dayの投与を行ったところ11人の患者さんで効果があったとのことです。でも効果というのはCTとかMRIで造影剤で移る部分の増強効果が低下したという程度です。腫瘍の大きさが小さくなたのは2人 (11%)でした。55例のかなり進行した脊索腫の患者さんでのイマチニブの効果が2007年に報告されました。84%の患者さんで病気の進行が抑制され (stable disease)、無増悪生存期間は32週間、38%の患者さんで1年間は進行が止まったとのことです。これを読み取ると3分の1くらいの患者さんで1年くらいは病気の悪化が食い止められそうであると思えます。この後には、 イマチニブとシスプラチンを組み合わせる併用化学療法が試みられていますが、結果はまだ明らかではありません。
Casali PG, et al.: Imatinib mesylate in Chordoma. Cancer 101: 2086–2097, 2004
Tamborini E, et al: Molecular and biochemical analyses of platelet-derived growth factor receptor (PDGFR)B, PDGFRA, and KIT Receptors in Chordomas. Clin Cancer Res 12: 6920–6928, 2006
Stacchiotti S, et al.: Imatinib mesylate in advanced chordoma: A multicenter phase II study. J Clin Oncol 545s:abstract 10003, 2007
泡状外脊索症 ecchordosis physaliphora
斜台の中央からでるecchordosis physaliphoraという小さなのう胞性病変があります。これは脊索腫と違って大きくなることはありません。 遺残脊索組織といって,多くは蝶形骨と後頭骨のsphenooccipital synchondrosisのところから後方へでます。 のう胞性病変でMRIでガドリニウム増強されないことが脊索腫との鑑別点です。頻度が高いなので脊索腫と間違えて治療しないように注意が必要です。
剖検例では何かの理由で亡くなった人の実に2%に見つかり,MRIをよく見ると1.7%の人にあるとされています。とすると正常な人の100人に一人はもっているものになり ます。偶然発見された小さなものはまったく治療の必要もないものですし,大きいのものでも症候性となることは非常に稀です。
脊索腫の専門知識
脊索腫はfetal notocohordから発生する低悪性度腫瘍 low-grade neoplsmである。しかしこれは病理学的な悪性度であり、緩除な増殖能を有するといえども臨床的には明らかに悪性腫瘍 malignant neoplasmといえる。仙椎と頭蓋底に好発するが、頸椎と胸腰椎にも発生する。肺、骨、肝臓などへの転移は稀なことではなく、髄液播種を生じることもある。組織学的にはhondroid chordomaとされる軟骨要素に富むものの予後が比較的良いとされる。一方稀ではあるが、sarcomatous/ dedifferentiated chordomaではきわめて進行の早いものもある。
治療の難点は、浸潤性の脊索腫を完全摘出することが現実的にはほどんどできないことである。手術摘出で治癒する例は少ない。放射線治療の有効性はある程度は実証されているが、粒子線でかなりの高線量を用いても照射後の再発は多い。
脊索腫が、PDGFRB, PDGFA, KITを発現しかつPDGFBを分泌するautocrine / pracrine loopを有して増殖するという報告があり、anti-BDGF agent (imatinib)の有効性が指摘されているが確実ではない。
文献
1. Casali PG, et al.: Imatinib mesylate in Chordoma. Cancer 101: 2086–2097, 2004
2. Tamborini E, et al: Molecular and biochemical analyses of platelet-derived growth factor receptor (PDGFR)B, PDGFRA, and KIT Receptors in Chordomas. Clin Cancer Res 12: 6920–6928, 2006
3. Stacchiotti S, et al.: Imatinib mesylate in advanced chordoma: A multicenter phase II study. J Clin Oncol 545s:abstract 10003, 2007
