第44回日本呼吸器学会九州地方会一般演題抄録
演題番号: C02
クロルピクリン中毒による肺水腫にBiPAPを用いた呼吸管理が有効であった一例国立長崎中央病院呼吸器科
○木下明敏、浦田淳吾、大角光彦
同救急救命センター
高山隼人
クロルピクリンは別名をトリクロロメタンといい、主に土壌の消毒・殺菌剤として使われている。今回我々はクロルピクリン吸入後に肺水腫を来たし、その治療としてBiPAPが有効であった一例を経験したので、若干の文献的考察を加え報告する。 症例は56歳の女性。自宅倉庫の火事の際クロルピクリンガスを吸入、数時間後に咽頭痛を主訴に来院した。入院時、胸部に湿性ラ音を聴取、胸部X線では両肺野に肺水腫様陰影を認めた。O2 3L/分吸入下での血液ガス分析ではPaO2 66.2 Torr、 PaCO2 41.2 Torrであった。クロルピクリンガス急性中毒による肺水腫の診断のもとに酸素吸入、ステロイドパルス療法、抗生剤の予防投与などの治療を開始した。しかし、胸部X線所見、血液ガス所見は次第に増悪し、多量の泡沫状痰を喀出するようになった。そこで第4病日よりBiPAPによる呼吸管理を開始した。以後、胸部X線上の陰影は急速に改善し、同時に呼吸状態にも改善を認めた。 クロルピクリンガス中毒による肺水腫に対する治療として気管内挿管、人工呼吸器よるPEEP付加がいわれている。しかし、本症例のようにBiPAPによる呼吸管理も試みるべき価値があると考えられた。 |
受付番号:S003